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人間関係ってシンプル化できる? アラフィフ女子の断捨離対談/前編

『アラフィフゆるフリー女子部』、今回のテーマは断捨離あれこれ。年を重ねるにつれ何かと複雑化しがちで散らかりがちな身辺の環境、仕事や人間関係……。中でも「人間関係」を中心に、広告プランナーのはんぺん丸と、ライターの坂口香野がゆるっと語り合いました。

はんぺん丸:H CMプランナー、コピーライター。夫と都内在住。 

坂口香野 :S ライター。東京都調布市で一人暮らし。

理性じゃなくて「ときめき」でつながる

H 人間関係の「断捨離」って、言葉にするとちょっとキツく聞こえるかな。でも、最近、人間関係を広げすぎずに、できるだけシンプルにしたい気持ちが強くなってきたの。

S 名刺や年賀状の整理なんかも、広い意味でいえば「人間関係」の環境を整えることかもしれないね。私は断捨離全般、あんまり得意じゃなくて。仕事先でもらう名刺も、フリーになりたての30歳代の頃はファイルに整理してたんだけどすぐ適当になっちゃった。つきあいの長い方の分だけファイルにしまって、あとは積んでるだけ。

H 地層で判断?

S そう。山を倒すともうわけがわからないから、結局まとめて処分してしまったりするな。はんぺん丸さんはちゃんと整理してるほうでしょう? アプリとかもあるし。

H うん、してたね。でも、一度メールをやり取りすれば連絡先はわかるから、顔が浮かぶ方以外の名刺はごっそり整理しちゃった。メールも、だいぶ前に終わったやり取りはせっせと削除してる。最近、何かが見つからないっていうのがすごく怖いの。スマホとか、大事なものをなくす夢をよく見るのよ。「必要なものが出てこない」ことへの恐怖が、自分を整理整頓、断捨離に向かわせてる気がするんだよね。

S そっかあ。

H 悲しくならない? あるはずのものが出てこないって。

S 私は若いころからつねに探し物ばっかりしてるから、慣れてる(笑)。あーあ、またか! って思うけど、結局あまり反省してないんだろうね。ただ、自分の管理能力が低いのはわかってるから、何事も極力範囲を広げない。交友関係ももともと狭いのに、それでもたくさん不義理をしてしまっているから……。でも、広告業界の場合は「広げてなんぼ」ってところがあるんじゃない?

H 人脈は広いほうが絶対有利だけど、一人でやれる仕事の量は限られているから。広げすぎると受けられない仕事が増えそうで……。

S SNSも駆使して無限に人脈を広げられる人もいるよね。

H それができる人って、一言でいえばエネルギーの多い人なんじゃないかな。

S そうかも。人間関係が広がるとチャンスは増えるはずだけど、その中から「これはいいぞ」って見抜ける眼力が必要な気がする。

H 今思い出したんだけど、ダルビッシュ選手は自分に興味のある話を聞きつけるのが上手だって聞いたことがあるよ。周囲にどんなにたくさんの人がいても、遠くで誰かが自分のアンテナにひっかかる話をしてると「なになに?」ってすっ飛んでくるんだって。

S すごい。聖徳太子みたい。

H 耳があらゆる方向の音を拾っているけど、興味ある内容だけが意味として入ってくる感じかな。

S その感覚は運動神経に近そう。周囲の人の話は全部真面目に聞いて、隅から隅まで気を遣って……ってやってると、そういう勘は働かないんじゃない?

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H 理性の範囲内でできることはたかがしれてるよね。だからこんまり(近藤麻理恵)さんの片づけ本(『人生がときめく片づけの魔法』)は「ときめき」がキーワードなんだと思う。

S そっか、こんまり本は未読なんだけど、断捨離は理性だけでやっちゃだめなんだね。

H そう。心がときめくもの、一緒に未来に行くと良い予感がするものは、誰も欲しがらないださいTシャツでも何でも取っておく。ときめかないものは、どんなに高価でも手放していいっていう考え方なの。

S とある俳優さんは、自分の転機になりそうな良い仕事の話は「いい匂いがする」って言い方をしてたな。

H そういう直感が働くようになれば、エネルギーが少なくてもうまくいきそうだね。でもさ、相手の話にあんまり興味ないなと思ってしまっても、表には出せないよね。 私はつい話の最中にぼけっとしたり、スルーしてしまったりすることはあるけど。

S うーん……。話題を変えれば接点が見つかって、面白い話ができることもある。それと、最初は興味がなかった話も、ディープに語られると引き込まれてしまったりするよね。ただ、今後この人と深いつきあいになるかならないか、出会った瞬間に何となく勘がはたらくようにはなってきたかなあ。

「好き」じゃないけどときどき会いたい人

S 正直、あんまり好きじゃない人や苦手な人とのおつきあいってどうしてる?

H 私は、「実際の仲の良さに対して、要求が多いな」と感じてしまったら、嫌われてもいいから距離を置いてしまうかも、S N Sでもリアルでも。たとえば、こちらが関心あるとも言ってないのに、イベントをシェアしてほしいと圧をかけてくる人とか。仕事関係の人でも、こちらの事情もお構いなしで、一方的に無茶なスケジュールでどんどん要求を投げてきたりすると「この人とは今後気持ちよく仕事するのは難しいかな」と思ってしまう。
坂口さんはつきあいを自分から切らないように見えるけど、実際はどうしてるの? 東京生まれでずっと地元にいるんだから、小学校時代からの友達の絶対数は多いでしょ。

S そうね。50歳の節目に、小・中や高校の同窓会があって、LINEのグループができたりしたんだけど、その中で個人的に会いたい友達は限られてるから、積極的に参加はしてなかった。それに、みんなの発言の中にちょっと差別的でいやだなと思うことがあって。コロナで最初の緊急事態宣言が出た時、「中国人が悪いから」みたいな言い方してたり。

H それは線を引きたくなるね。

S でも、そのLINEに何か書き込んだわけでも、抜けたわけでもなく。別のSNSに、海外在住の日本人が「コロナ」とか「チャイニーズ」とかってののしられた、というニュースをシェアして、私には中国人の友達もいるから胸が痛みますとか書いてみたけど。LINEは苦手だしまめじゃないからといって、放置してるだけ。卑怯かもしれないけど……。

H うーん。リテラシーが低いフリをして距離を置く、というのもひとつの方法だね。

話はそれるけど、渡辺淳一センセイが女性と別れる時は、わざわざ別れ話をするんじゃなくて、いつの間にか遠くにいるのがベストっていってたよ。別れようと思った瞬間、畳の目ひと目分ずつ離れていくんだって(笑)。

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S なるほど、参考になります(笑)。ただ、合わない人とぶつかることもなくひたすら距離を置いてると、考え方の近い人としかつきあわないことになっちゃうかな。

H そうなのよ。たいていの人は年齢とともにちょっとずつ気難しくなるじゃない。ストレスを避けて、気の合う優しい人たちに囲まれて自分もいい人でいようとすると、かえって相手と自分のわずかな違いにイライラして、気難しさが先鋭化するんじゃないかと。

S それは怖いね。じゃあ、考え方も趣味も違って、どちらかといえば苦手だけど、なんか会っちゃう人っている?

H そうやねえ。しょっちゅう会いたくはないけど、タイプが違うゆえに「こういうときはどうする?」って意見を聞きたい人はいるなあ。話しててときどきカチンときたりはするんだけど、生き方は違ってもどこかにリスペクトがあるからつきあいが成立している気がする。向こうはこっちをどう思ってるかわからんけど。

S 同じ考え方の仲間うちで「そうよねそうよね」ってやってると、頭が固まっちゃうものね。

H 気が合うわけでも、役立つ情報をくれるわけでもないのにときどき会いたい人、っていうのは、さっきの話でいうとものすごい「ときめきバリュー」のある人なのかもしれない。

人の「武装度」を体感してみる

S また話が大幅にずれるけど。いくつか書きかけの小説があって友達に見せたら、「お前の書くものはいい人しか出てこなくて話がふわっとしててつまらん」といわれたの。それで、いろんな人を書く練習のために、去年の都知事選挙の候補者5人をモデルに学園もののあらすじを考えてみたんだ。視点人物が、ふだんだと絶対共感できそうにないY子さん(笑)。Y子になったつもりで半日過ごしたり。

H 使える人、使えない人がシビアに見えてくるんじゃない(笑)?

S そう。ちょっと資料を読んだくらいで実際のY子さんのことはわかりっこないんだけど、私なりの「Y子脳」で電車乗ってたら、動作まで違ってきたの。車内ニュースを見たら、その裏にある因果関係や自分がどう動くべきかについて頭がばーっと働くし、だらしなくドアによりかかったりしたら汚れてもいい安い服だと思われる、って考えて姿勢を正したり。全体的にエネルギー消費量がすごくて疲れちゃった。そのY子脳で素の自分について考えたら、ものすごくムカついたの

H 無防備に見えるから? 

S うん。恵まれた環境で無防備にへらへら生きてる、そういう感じに何とも言えず腹が立った。

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H 武装具合が近い人のほうが、理解しやすいよね。サイコパスの人は外面を完ぺきに仕上げて生活せざるをえないから、無防備な人は裸で外歩いてるみたいに見えるかも。

S 本当は、無防備も半分は戦略でやってる意識があって。相手が身構える前に、「私は丸腰です」「あなたの敵じゃないです」って言いたいんだと思う。嫉妬や羨望みたいな負の感情もうまく使って大きな仕事をする人は、たしかにエネルギーの総量が大きいんだよね。そういう人には到底勝てる気がしないから、先に「人畜無害」をアピールしちゃう。正面から反論するのは本気で怒ったときだけかな。

「妖怪図鑑」という名の抗体カタログ

H えーと、「嫌い」というほどではないんだけど、話してて「何なんだこの人?」って違和感を感じることってある?

S うん、あるなあ。

H 断捨離とは逆方向だけど、最近はそういう違和感も楽しめるようになってきた気がするのよ。若い頃は、本当にそれができなかった。違和感をキャッチした時点でぞわぞわして、一緒にいるのがしんどくて。

S 余裕がない感じ?

H そう。自分の輪郭までびりびりしてくるくらい過剰に反応してたけど、年を取って免疫ができたのかな。ほら、コロナのワクチンも若者のほうが副反応が激しいっていうじゃない? 心の中に合わない人用の抗体カタログみたいなのができてて。あー、こっち系の合わない人か、じゃあスルーでいいか、みたいな。

S すごい。抗体なんだ。

H そう、脳内抗体カタログ。「妖怪図鑑」みたいなのが。

S 面白い! 水木センセイみたい。

H 妖怪にも種類があるじゃないですか。つくも神系とか動物の変化系とか。自分にとって苦手な人のタイプ分けができてくると、対処法を考えながらおつきあいを続けられそうな人と、これはちょっと闇が深いぞ、そっと遠ざかろうと思う人の判断がついてきて、少し余裕ができたかも。判断が早すぎるのも危ないかもしれないけどね。

S 「妖怪図鑑」って、アラフィフならではの気がする。

H そうやねん。むちゃくちゃぶ厚い図鑑になっちゃって。今日まで出会った妖怪、全部入ってるからね(笑)。

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S 吸血鬼だったら十字架を用意しておくとか。

H ごめんそれ興味ない、という十字架ね。「吸血鬼」は人から利益を取ろうとする、なんとか商法とかの、ちょっとあかん奴やね。あとは「そうなんだ」しか返事しないとか。

S こちらへの興味をなくしていただく戦法だね。

H そう。パワハラ系とか、最優先で避けなきゃいけない人もいるから。

S 私も若い頃よりは人づきあいに無理がなくなったかな。みんなに好かれなくていいって開き直ったせいかもしれないけど。

H 私は、自分の中に損得じゃない軸を持ってて、それを真摯に追求してる人が好き。そこがわかっていれば、たとえ少し苦手な部分があっても、自分にとって本当に「必要な人」「大切な人」は見えてくるはずだと思うんだ。

後編に続きます!!

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