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人間関係ってシンプル化できる? アラフィフ女子の断捨離対談/後編

前回に続き、アラフィフ女子の人間関係について、広告プランナーのはんぺん丸と、ライターの坂口香野がゆるっと語り合っております。「断捨離」がテーマでしたが、結果的に「つながること」についての話も盛り上がりました。

はんぺん丸:H CMプランナー、コピーライター。夫と都内在住。 

坂口香野 :S ライター。東京都調布市で一人暮らし。

「うつりたい人」と仕事したい

S 前回、はんぺん丸さんは脳内に苦手な人の対処法を集めた「妖怪図鑑」をもってるって話をしたけど……苦手でも「図鑑」を駆使しておつきあいを続けていく人と、続けない人の違いって?

H この人は仕事を良いものにしようとしているな、と感じられれば、ちょっと苦手な人でも頑張ってやっていく。仕事への向き合いが、ちょっとリスペクトできないかなって方向に行っていると思ったら難しいかな。

S ふーん。でも、仕事を良くしようとしない人ってそんなにいないのでは?

H わがままな話なんだけど、仕事をくれる代理店の方やプロデューサー的な立場の方には、できれば私を上回るビジョンや情熱を持っていてほしいなと。チームでつくりあげた広告作品をクライアントにプレゼンするのはその人だから。仕事に対する態度がふんわりしてると、そのぬるさが先方にも伝わってしまいそうで。

S なるほど。人の上に立つのは厳しいね。

H 美輪明宏が、人間もカメレオンのように保護色の生き物で、住んでいる部屋の雰囲気がその人にうつるから、部屋は美しくしましょうと言ってるんだけど、それと同じ。私も自分を燃やしたいので、熱量や雰囲気をどんどんこっちにうつしてくれる人と一緒に仕事したい

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S そうか。はんぺん丸さん本当に仕事人だね。私はそこまでストイックにやってないなあ。私も記事の目的や読者を考えて一生懸命文章を書いてはいるけど、クライアントさんや編集長と毎回志を共有してるかといったら、そこまでとはいえない。

H それは、信頼関係の上で仕事を受けてるからじゃない? 広告の仕事は競合のチームと競ってることも多いし、チーム内でも多かれ少なかれ競争はあって、お互いにいつ切られるかわからない雰囲気があるのよ。だからこそ、志や情熱を共有していないと難しいんだと思う。

「人を使える人」は「人を待ってあげられる人」

S ところで、この年になると自分で会社をつくったり、リーダー的な立場で仕事をする人も増えてくるけど、はんぺん丸さんは?

H ちょっと無理かなあ。だんなが独立することになったら協力しようと思うけど、自分の仕事に関してはミニマムに、全部自分の判断で決められるほうがうまくいく気がする。

S はんぺん丸さんは気遣いが細やかだから、人を使ったりするとストレスになるかもしれないね。

H そう見えるのは、気遣いがうまくないってことだと思う(笑)。いつもゆったりと自然体なのに、よく考えると気を遣ってくれてたんだなって思われる人のほうが、リーダーには向いてるかも。人を使える人って、人を待ってあげられる人なんじゃないかな。私はせっかちだから、どうなったのどうなったのってしつこく言って嫌われそう。こっちが断捨離される(笑)。

S 組織をつくれる人は明確なビジョンがないといけないし、それをこうパースで見られるというか……。

H 未来を透視して設計図をつくって、それを時間軸で捉えられることも必要だよね。本当のデッドラインはここですよ、でもこの日までにできているといいなあ、みたいに、上手に余裕をみて人の仕事を待ってあげられたら。

S 私も絶対無理。「この締め切りいつまでのばせますか」ばっかり言ってるし、視野が狭くなりがちな頭だからなあ。

H 坂口さんはむしろ広すぎるんじゃない? 最近は考え方が近い人とだけしか会わなくなりがちで、世の中がどんどんタイトになってきているから、世界観を広く取れるのは強みだと思うよ。

S でもそれは「散漫」ってことでは。 

H 散と漫、大事な気がする。みんなを遊ばせられる広場みたいな人は必要だよ。それこそワ―ケーションの場を提供するとか、ぴったりだと思う。

S ありがとう。私はなかなかものを決められないほうなんだけど、時間軸のパースも持ちつつ、しっかりものを構築できる人と組めばいいのかもしれないね。
ちょっと脱線するけど、最近とある演出家のかたに取材したとき、「人は人です、認め合おうよ」という考え方は、下手をすると分断につながるという話になって。「お互い違うんだから干渉しないようにしよう」ってなるから。

H わかるわかる。

S その方、アジア各国の国宝クラスのダンサーや俳優、ラッパーやミュージシャンを呼んで作品づくりをしてるんだけど、国によって間合いの取り方やリズム感が全然違うんだって。でも、「このリズムに合わせよう」と最初から決めない。だから最初はズレてるんだけど、それぞれが名手だから、一緒にやっていくうちに呼吸が合っていくんだそうです。

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H ズレを恐れすぎないことが大事なんだろうね。

S 私はこのリズムが気持ちいいですってはっきり出さないといけないし。呼吸を合わせることって理屈じゃないから。

H 言葉にはそもそも分断するはたらきがあるものね。人とつながるには、言葉より音楽やダンスのほうが向いてるのかもしれない。

縁がつながるかどうか

H 大幅に話が戻るけど、実はそもそも坂口さんが「断捨離」に興味があると聞いてちょっと驚いたの。あんまりきりきりとものを捨てるタイプじゃないでしょ?

S うん。ひとつには残り時間がそんなにないなと思っていて。これから体力も知力も減っていくのに、無駄に何かを検索したりして空回りしてる時間が多すぎるなと思ったの。何かを「止める」とき、皆さんはどうやっているのかなと。

H 「止める」って決断だよね。

S 「止める」って「あきらめる」に近いのかな。この間ちょっと腰を痛めて、動けません、無理はできませんと思ったら自然と脳内の空回りがおさまったの。若い頃はもっと何でもできなくちゃいけない、誰にでもよく思われたいとか思いがちだった。「何もかもあきらめない」のが若さのいいところだね。でも、今はあきらめるってそんなに後ろ向きなことじゃなくて、注力ポイントを決めることだなと気づいた。

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H たしかに。断捨離って結局、注力ポイントや時間配分を決めることだね。私はものを探す時間を減らしたいから持ち物を減らしてるわけだし。最近、雨傘、日傘は1本ずつ、ヒールのある靴もちょっとおめかしな服も各シーズン1つずつにしちゃった。今はコロナで人に会う機会が減ってるから全然困らない。

S 徹底してるなあ。たしかに、服や靴は管理の時間がいるものね。1回だけ着た服をクリーニングに出すのかどうしようかとか……。

H そうなのよ。選択肢が多すぎることが負担になってきちゃって、視界をできるかぎりクリアにしておきたいの。人間関係も、自分にとって大切な人との時間を大事にしたいなと。

S 視界をクリアにするって大事だね。「人間関係の断捨離」なんていうと上から目線で失礼な印象があるかもって前回話したけど、実は上からでもなんでもなく、損得や好き嫌いを越えて、今の自分にとって大切かどうかってことで……。

H 縁だよね、縁。

S あ、同感! 

H 縁がつながるかどうか、互いに学び合えるかどうかは人智を越えてるとこもあるんで。苦手な人なのに、なぜか仕事を介して偶然つながってくる人もいるし……。

S こんなに何度も出会うってことはご縁がある、何か大事なことを教えようとしてくれているのかもしれないと。「楽だから」一緒にいるのとはちょっと違うね。妖怪に見えてた人が神様に見えることもあるかもしれない

H 人間関係も身辺も、シンプル化したくなるのが50代、60代だとしたら、その先でもっととっちらかる時期がくるのかな。

S その頃までには、そんなちらかりも楽しめるおばあさんになっていたいねえ。

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