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お人好しの真髄―「自覚なし」

 満席の電車で座っている人が降りた時、せっかく近くにいるのに席を取らずに様子を見る。そして後ろから、別の誰かに座られてしまう。あまつさえ、それを止めるでもなく譲ってしまう。
 あるいは誰よりも仕事ができるのに、できるからこそ遅くまで残って、何をしているのかといえば他人に押し付けられた仕事を一生懸命やっている。

 お人好しというのは、まさにそれであると思われている。損な役回りとか、誰にも評価されない苦労とか、罪を着せられるとか。そういった状況に陥る人のことを指す。
 だがそれでは足りない。そんなもの、真のお人好しとは言えない。何よりお人好しとは、自分がお人好しだと思っていない人こそ呼ばれるに相応しい。損な役回りを自らやったり、わかっていてあえて引き受けたりという打算ではなく、そんなこと夢にも思わない人が、本当にお人好しな人なのだ。

 自覚のないお人好しこそ、お人好しと呼ぶに相応しい。そうではなく、自らがお人好しだと思う場合には、単なる良い人である。お人好しには及ばない。

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