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設定制作の時間がないと困る

 物語には設定というものが必要です。設定とはその物語で語られる登場人物、出来事、世界、組織、常識、文化、風習、物体、現象などについて、特色や歴史や行く末といった説明のことになります。
 大切なのはそれらの「語られるもの」に対して、様々な「設定項目」があるということです。たとえば、登場人物には生い立ちや現在の状況、目的などが設定できますが、その人物が持つ武器などは、材質とか攻撃力とかいわくとか、全く異なる設定項目が必要です。
 即ち、設定とは単に設定の中身を考えれば足りるのではなく、「どのような設定項目が必要なのか」ということも考えなければなりません。これは、一度考えついてしまえばテンプレートのように使い回せることもありますが、物語によっては特殊な項目が必要なケースがあります。

 よくあるのは、ある物語において物理法則が特殊な場合です。ものが下から上に落ちるとか、空に川が流れているとか、魔法の存在とか。
 そうするとかならず、その物理法則に言及した設定項目がそれぞれいります。登場人物は、その物理法則を当たり前に生きていますし、武器はそれに合う形や使い方をしています。物語が、この地球という現実世界の人間を観客としている以上、すんなりと理解できないことについてはきちんと設定しなければなりません。
 観客は不思議なものを「不思議だなあ」と思いたくて物語を見ているのではなく、納得したいのです。だから、登場人物が当たり前をただ当たり前だと思うのでは不十分で、もし、現実世界とのギャップがあるのなら、その部分に対する特別なエピソードとか、異なることで何が起こっているのかという紐付けが大切なのです。

 こうした例は一部ですが、このように設定とは、中身だけではなく項目そのものもきちんと「設定」されなければ、物語が不完全になってしまいます。しかも、制作者自身も全てに気づけないことだって往々にしてあり、物語が進んでいくにつれて「そういえば…」と見えてくることだって少なくありません。
 物語はただ語れば良いのではなく、設定について考える時間が漏れなくあるべきです。そしてそれを含み込んでの、物語が作られる時間と言えます。いわば、ストーリーと設定はどちらも、同じくらい熱量や時間をかけて作られるものです。
 しかし、設定とは細かなところまで考え始めると大変ですし、神経も使います。それに粗があればストーリーに影響がでてしまう。時間は有限です。物語を構成する要素として、その限られた時間の中で、物語るばかりではなく設定を、中身だけでなく項目をも、きちんと考えることができれば、その物語は何よりも納得でき、そして良いものとなることでしょう。

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