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早く、じっくり、面白く。娯楽のあるべき姿

 レンチンでおいしいご飯が食べられるのは嬉しいけれど、見始めた映画が5分で終わったら嫌だ。長い動画をついつい倍速にして見てしまうけれど、読んでいる漫画の結末をいきなり言われたら、多くの人が怒るに違いない。

 人は早く早くと急かす生き物でありながら、娯楽にまったりと浸っていたいわがままを持っている。それはいわば、「情報」をいち早く手に入れたいけど、それを味わいたいという2つの気持ちが1つになったものだ。本当はできるだけ早く楽しみたい。完食したい。けれど、急いでしまえば醍醐味を失ってしまう。味わいが浅くなってしまう。
 だから人間は、特に娯楽を、生き死にに直結しない物事を、じっくり楽しもうとする。焦りは禁物だ。でも
いち早く知りたいし、わかりたい。その2つの欲求がない混ぜになったのが人間であり、娯楽というものをわざわざ生み出して、衣食住の快楽と切り分けたのは自らの2つの欲望によって壊れてしまわないためである。

 早くとじっくり。それら2つを抱えて、私たちは今日も趣味を、娯楽を、エンタメを楽しむ。だからときに早くてときにじっくり、私たちを夢中にさせる娯楽とは大抵の場合、そういうふうにできている。

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