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「逆行」 キャラクターのしたくないことをさせる

ストーリーを前にすすめる着火剤のひとつとして、「対立」を作るというものがある。
これは非常に効果が大きく、古今東西の様々なストーリーにみることができる。

関連note︰
「対立→起伏=飽きない物語」
https://note.com/kawausowright/n/nb54c41c37e3a

しかし、着火剤というものは、もちろんこれだけではない。
他の有力な候補としては「逆行」というものがある。

「逆行」は、文字通り、キャラクターがその進む道を反対にすることだ。

キャラクターとは設定としてさまざまな好みとか、信念とか、性格とか、目標とか、好んでそちらへ向かおうとする方向性がある。
これは、言動の偏りと言っても良い。
つまるところ、そのキャラクターが普通ならこうする、という性質のようなものである。

しかし逆行を用いたストーリー展開は、キャラクターに好みなどとは反対の行動を選択させる。
具体的には、

父親がギャンブル狂いで借金を背負う少女が、忌み嫌う賭け事によって闇世界を生きていく物語
娘の事故死という心の傷を抱えた刑事が、その事故現場で起きた新たな事件を捜査することを通して、娘の死の真相を暴いていく物語
睡眠すら惜しんで働くことに情熱を燃やすコンサルタントが、とある寝具メーカーの経営立て直しを任され、人生で初めて「眠ること」について向き合っていく物語

……このようなストーリーである。
どれも、主人公に設定された真っ直ぐな方向性とは、逆を行っていることがわかる。
主人公がしたくないことをさせている、とも言いかえられるだろう。
だが、それによってむしろ、主人公が成長することや、より良い選択肢に気づけるようなストーリーを展開できているはずだ。

気の進まない旅をキャラクターに課すことによって、その気持ちと、進む運命の反発力を、着火剤として使っている。
そのような仕組みが、この逆行を用いたストーリー展開というわけである。

ストーリーをより面白く、豊かに、そして滞りなく進めていくためには、「対立」ではなく「逆行」も有用である。
それはキャラクターの行く先を、キャラクターの全く望まない茨の道にすることからはじまる。

そのようにして、キャラクターのお尻に火をつけ、波乱に満ちた冒険へと追い立てるのである。


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