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今回のおすすめ本 中島敦『文字禍・牛人』

みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、中島敦『文字禍・牛人』という本です!以下では収録されている作品(6個)を紹介します。

「狐憑」

 舞台はウクライナや南ロシア。この地をかつて支配していたスキタイ人の一種族・ネウリ部落に纏わるお話。主人公のシャクは平凡な青年でした。しかし一年前、戦争によって弟を失ってしまいます。その頃からシャクは何かに取り憑かれたように物語を話し始めます。人々はシャクの話に聞き入るようになりますが、この部落では仕事をすることは義務となっており、シャクはその義務を果たしていません。これがシャクに対して不満を持つ人によって責める火種となってしまうのでした…。

「木乃伊」

 時はアケメネス朝ペルシア二代目王カンビュセス二世の治世。主人公のパリスカスはペルシア人の武将で、エジプトへ進軍していました。エジプトに侵入した頃からパリスカスはどこかうわの空になっています。そこにカンビュセスニ世から、エジプト王アメシスの墓を探し出すことが指示されます。パリスカスもその捜索隊に入ります。仲間とはぐれて一人になったパリスカスは、とある木乃伊(ミイラ)と出会います。この木乃伊との出会いがパリスカスの運命を握ってしまうのでした…。

「文字禍」

 時はアッシリア王アッシュルバニパル大王の治世。主人公のナブ・アヘ・エリバ博士は博識で知られる人物。大王は彼に「文字の霊」というものについて研究を命じます。研究の過程で文字を知る前と知った後で起こる心身上の変化を確認した博士は、特に禍に着目します。文字を知ることで起こる弊害として、あらゆるものに名前をつけることで感覚的に享楽にふけることが難しくなることや、覚えることをメモすることで記憶力が低下することなど、人間の頭が働かなくなることが提示されています。こうしたことが、現代では電子媒体によりさらに加速しているのではないでしょうか。

「牛人」

 舞台は魯。主人公の叔孫豹は若かりし頃、戦乱を避けて斉に遁走し、そこで一人の美しい女性と出会い一夜の契りを交わします。ある夜、叔孫豹は金縛りにあい天井が下がり押しつぶされそうになる夢を見ます。そこで目にしたのは真っ黒い牛のような男性。叔孫豹その男に助けを求めことなきを得ました。数年後のある朝、一人の女性が訪ねてきますが、それはかつて契りを交わした女性でした。共に連れていた青年はその時に懐妊した子どもだといい、名前は「牛」で見た目は夢で見た黒い牛人そっくりでした。この子どもを執事として雇いますが、ここから叔孫豹の運命が大きく変わっていくのでした…。

「斗南先生」

 斗南先生とは中島敦の伯父・中島端のこと。この伯父は漢学者ですが、気難しい性格で周囲の人間は扱いに困っていました。若き頃の中島敦も、苦手としていたようです。そんな伯父が亡くなる前の思い出を回想した作品です。当時はわからずとも、年齢を重ねてから振り返ると気づくことがありますよね。

「虎狩」

 中島敦が父親の仕事の都合で中国へ転校した期間に体験したものを元にしたお話。そこで出会った趙大煥との思い出が中心に語られています。不思議なことに、青春時代の思い出に残っているのは大きい出来事よりも、小さい出来事だったりします。そんな中島敦の記憶の一片を垣間見ることができます。

ぜひお手に取って読んでみてください☕️


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