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今回のおすすめ本 宮沢賢治『風の又三郎』

みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、宮沢賢治『風の又三郎』という本です!以下では収録されている作品(9個)を紹介します。

「風の又三郎」

 主人公は小学校に転校してきた高田三郎。本作では方言が多用されているため、読みにくい印象を受けるかも知れませんが、音読してみると雰囲気から推測できることがあります。作中では、転校生の三郎と小学校の児童たちによる交流が描かれています。章は日付になっており、九月一日から九月十二日までの短い期間のお話です。子どもたちは遊びの中で交流を深めていきますが、現在でも見られる現象だと思います。ただ、現在では遊びが多様化してしまい、大勢で遊ぶことはなかなかないかもしれませんね(学校では体育など大勢で学習することが基本なため、こうした機会に社交性を身につけていくことがより重要だと思います)。

「とっこべとら子」

 とっこべとら子はおとら狐という、人を欺く狐の別称(各地で名前が異なる?)です。作中の中では、よく耳にするような狐が人間を欺くシーンが描かれます。しかし、当たり前なことですが、実際に狐が人間を欺くことは現実的には考えにくいことです。宮沢賢治は本作で「人間の行動の結果起きた責任を狐に転嫁するのはいけない」と伝えたかった、と分析する人がいるみたいですが、これには一理あると思います。

「祭の晩」

 とあるお祭りの晩のお話です。主人公の亮二はお祭りに向かい、そこで大繁盛している「空気獣」という見世物小屋に強引に観覧させられます。大して興味をそそられない亮二は外に出ますが、そこで大きな男に出くわします。亮二はこの大男をどこか奇怪な人物と思うのでした…。

「なめとこ山の熊」

 生活費を稼ぐために熊を狩る小十郎。小十郎は熊が憎いわけではなく、他の仕事が見つからず仕方なく飼っていました。しかし、毛皮などを売りに行っても足元を見られ、非常に安い額で買い取られています。熊の言葉がわかるように思えるほどなめとこ山の熊を熟知している小十郎に、明るい未来は訪れるのでしょうか…。

「土神ときつね」

 女性の樺の木と谷地に住む土神、きつねの三者によるお話。土神ときつねは両者とも樺の木を好いていますが、樺の木はきつねの方を好いています。ほれは土神が激情的で不潔なのに対して、きつねは温厚で上品だったからです。しかし、土神は正直できつねは嘘吐きな面がありました。この三者のたどる行方が気になるところです。

「気のいい火山弾」

 主人公は火山弾のベゴ。ベゴは角のない丸い大きな石で、他の角のある石はベゴをからかっていました。それだけでなく、野原にいた者はベゴをからかいました。しかし、ベゴは怒ったりはしません。挙げ句の果てにある蚊がベゴを役立たずと罵り去っていきますが、ベゴは怒りません。この話を読むと、「特別に何かしなくても存在しているだけで他者に利益を与えている」と感じます。どんな利益かはぜひお手に取って読んでみてください。

「化け物丁場」

 鉄道の乗客同士の会話で進行するお話。最新の技術でもって自然災害に対抗しようとする人間ですが、自然災害の方が一枚上手で畏怖を感じさせられました。日本では度々自然災害による被害を受けていることから、令和となった今でも自然に畏怖を感じることが多いですね。

「ガドルフの百合」

 主人公は旅人のガドルフ。雷雨の中雨宿りできる場所を探していたガドルフはとある大きな真っ黒い家を見つけ、そこに入ります。中には誰もいないように感じていましたが、2階に誰かの気配を感じ確かめに行き、そこで白い影を見つけるのでした…。作中では色の対比が鮮やかに描かれています。

「マグノリアの木」

 主人公の諒安は、霧の立ち込める険しい山谷を渡っています。どこからともなく誰かの声が聞こえ、平らな枯れ草の頂上に達すると霧が晴れ、一面にはマグノリアの花が咲いているのでした。そして、そこには二人の子供が立っていました。終盤では「覚者」について語られています。本作は仏教における真理を描いていると言われますが、そこに到達するには一定の苦難を経て悟りに近づく必要があるのかもしれません。

ぜひお手に取って読んでみてください☕️

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