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今回のおすすめ本 喜多川泰『きみが来た場所』


みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、喜多川泰『きみが来た場所』という本です!


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 本作は主人公の秀平が大手の自動車メーカーを辞職し、塾を開いてから四ヶ月経ったところから始まります。「教育を変える必要がある」という決意のもと塾を開校した秀平ですが、集客が思うようにいかないでいます。妻の涼子は新たな命をその身に宿し、娘の寛奈とともに秀平の実家の近くに移ることになり、塾を開校したばかりの秀平とは離れて暮らすこととなります。そんなある日、秀平の塾に興味を持った親から説明を受けたいと申し込みがあり、気合を入れる秀平でした。そこへ向かう途中に立ち寄ったコンビニで「ルーツキャンディ」を買った秀平は、これを契機に不思議な体験をすることになるのでした。


読後感想

 当然のことですが、一人の人間の親にも親がおり、たどっていけばかなりの人数になります。現在では核家族も少なくなってきており、単独世帯が増えている現状があるため、こうした先祖を想起する機会が日常的に減少していることと思います。さらに言えば、現代社会では生きていくだけでもかなりの重労働で「生まれてきてよかった」と思う人も少ないのではないでしょうか(もちろん他者に対しては思うことはあるでしょう)。自分が生まれる確率は数億分の1と言われていますが、その奇跡が起きた先がこれほど生きにくい世界だと感じることはどこか悲しい気持ちになります。さらに言えば紛争地域ではなく、治安の良い日本に生まれていても年間自殺者は毎年数万人超えています。「生きているだけで偉い」とはいうものの、生きているだけでは生きてはいけないのが現状です。本作は視点を切り替えるきっかけになると思います。三島由紀夫が「人間は自分のために生きて自分のために死ぬほど強くはない」と述べたように、人間は繋がりを持たなければ生きてはいけないのではないでしょうか。

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