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今回のおすすめ本 芥川龍之介『藪の中・将軍』


みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、芥川龍之介『藪の中・将軍』という本です!以下では収録されている作品(17個)を紹介します。

「秋山図」

 王国石が主人の惲南田に黄公望の秋山図に纏わる話をするところから始まります。みなさんは絵に何か霊気のようなものを感じたことはあるでしょうか?僕の祖母は画家をしていた頃があり、風景画が家に飾ってありました。いつ観てもその絵からは何か霊気を感じていたのです。そうした絵に纏わるお話です。

「山鴨」

 トゥルゲーネフとトルストイ一家が山鴫を打ちに出かけた際のお話。瑣末なことで血みどろの戦いをすることもあれば、些細なことで仲良くなったりするのが人間の不思議なところですね。

「奇怪な再会」

 主人公は東京都墨田区にある家に住むお蓮。お蓮を妾としている牧野は、陸軍一等主計です。手狭な家ではあるものの、傭い婆さんと二人暮らしをするには十分な環境でした。そんなお蓮ですが、とある男性を忘れることができずにいるのでした。始終不気味な雰囲気の漂う作品です。

「アグニの神」

 ある占い師のお婆さんのお話です。物語には関係ありませんが、日米戦争がいつ起こるかを占ってもらいに来る人がいました。この作品は1921年に発表されていますが、その頃には不穏な空気が充満していたのでしょう。

「妙な話」

 本作は最後の独白が全てだと思います。それを踏まえて読み返すと違った印象を受けます。

「奇遇」

 瞿祐の「渭塘奇遇記」を素材とした作品。前後に付け加えられた芥川の文によって、幻想と現実が織り交ぜられた印象を受けました。

「往生絵巻」

 往生伝は古文でよく読むことが多いですが、一千年前は盛んだったのでしょう。その背景には藤原一族の台頭が関係してくると思いますが…。

「母」

 自分の不幸と他人の幸福を同種で比較する(離婚と結婚など)と平静ではいられないものです。そのために、無意識にでも他人の幸福が壊れることを望み、壊れた時に同情と愉悦が混在してしまうのでしょう。これは多くの人に共通するものであるため、煩悩の中に数えられているのだと思います。

「好色」

 『平中物語』を基にした作品。主人公の平貞文は女性を口説くことに関して百戦錬磨です(光源氏のような人物で、歌物語ではこうした人物が主人公もなりやすい)。ところがある侍従は一向に靡きません。最後は「うっ」となる人もいると思うので、あらかじめ覚悟が必要です…!

「藪の中」

 とある藪の中で起こった殺人事件。作中では七人の人物がこの事件について尋問を受けています。しかし、その内容は同じものもあれば異なるものもあります。真実は何だったのか、それは誰にもわからないのでした。「真相は藪の中」という慣用句の語源となった作品でもあります。

「俊寛」

 「鹿ヶ谷の陰謀」に関わったとされ、鬼界ヶ島へ流された俊寛を題材にした作品。『平家物語』では悲しみ嘆く俊寛が描かれていますが、本作では不幸に遭ってもめげない俊寛となっています。

「将軍」

 作中ではN将軍とはされていますが、乃木希典のことです。本作では芥川の戦争に対する想いを感じられます。また、発表した際に不都合がある文は官憲によって消されており、当時の閉塞感を感じさせられました。

「神々の微笑」

 主人公のオルガンティーノはイエズス会の宣教師です。日本にカトリックを広めるために来日し、信長に信任されて日本初のセミナリオを作ったことで知られています。本作では日本の山川に潜む力(霊的なもの)と戦おうとしているオルガンティーノが描かれています。

「雑筆」

 芥川によるエッセイ。様々な物事について日々考えていたことがわかる作品です。

「世の中と女」

 芥川は女性が社会進出する際には、「男性と生理的および心理的に違っている点を強調することによってのみ」男性と同様に仕事に加わる資格ができる、と述べています。これは性役割を強調しているように見えますが、当時女性の社会進出自体を忌み嫌う人が多い中では、むしろ女性の社会進出を肯定しているものだと思います。現在では女性の社会進出は十分には達成できておらず、さらに性役割を見直す必要がある(男女ともに)のは言うまでもないことですね。

「売文問答」

 編集者と芥川との問答をおさめたもの。「売れること」を追い求めるマスコミは今も昔も変わらないのでしょう。思えば悪質なものが多いですよね…。

「仏蘭西文学と僕」

 芥川が当時の文壇(特に自然主義?)を自身の経験を基に分析しています。

ぜひお手に取って読んでみてください☕️

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