【読書感想&考察】『出版禁止 いやしの村滞在記』/長江俊和
今回読んだ本は、2021年8月刊行という比較的新しめのミステリー小説。youtubeチャンネル「ほんタメ」で、ミステリー小説を1000冊読んだ男、こと、ヨビノリたくみさんが「このタイプのどんでん返しは見たことがない」と紹介していた小説です。アンパンマン天才物理博士の脳を混乱に陥れたミステリー小説、読むしかないでしょう!
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以下、激しくネタバレを含みます。ご注意ください。
さらに本書内には、グロテスクなシーンも含まれています。ご注意ください。
初見で感じた違和感
ある程度「叙述トリック」が含まれている前提で読んだので、いくつかの違和感があることには気づいていました。もちろん全体像を把握できていたわけでは全然なくて、所々に散りばめられた細かい「ん?」と思ったポイントです。
・奈良の郷土史家を訪ねたルポライターは2人
最初に奈良の郷土史家を訪れるシーンで、半年前にも別のルポライターが訪れていたという描写があります。つまり、本書全体では少なくとも2人以上のルポルタージュが組み合わされている、と推測出来ますね。
・キノミヤは2人
メチャクチャ細かい所なんですが、物語の一番はじめに一度だけ「キノミヤマサル」という記述、一番最後に一度だけ「キノミヤマモル」の記述。最後の最後で「ん?」ってなりますよね。
・秋摘み茶、ハーブティー
「春に取れる新茶とはまた違った味わいのある」秋摘み茶と、アップルパイとハーブティーの組み合わせ。盛られてますね、トリカブト。
読み返し方について
初見は当然「1→2→3→4→5」という順番で読み進めていく訳ですが、全て読み終わった後に「5→4→3→2→1」でもう一回読んでみなさいという前代未聞の「読み返し方誘導」があります。こう読み返すことによって、「逃れられない運命」のレールに乗って人生を送り、「逃れられない運命」である最期を遂げる人物のストーリーが完成します。何故このような構成になっているのか?については次項で考察してみます。
本書にかけられた「呪い」とは
複数のルポルタージュから構成されている本書。敢えて時系列とは逆の順番、いわゆる「逆打ち」で配置した佐竹綾子の「呪い」の事を指していると考えるのが一番しっくりときます。また、冒頭にある「詩」についても「逆打ち」が施されていますね。こちらのほうは佐竹綾子がしたためたものかどうかは不明(とある村人が書いた、とある)ですが、最後の一文の方から読むと、本書の最大のテーマである「呪いは存在するのかどうか」という問いに対する肯定的な解になっています。
ルポライターが「いやしの村」を訪れた理由
最初に「いやしの村」を訪れた都築亨については、巧妙に仕組まれ、周到に準備された「運命」によって村に導かれてきた事が分かります。しかし佐竹綾子については、詳細は語られていません。佐竹綾子に「積年の恨み」を植え付けた「知人」が不慮の事故で命を落とし、「慟哭するほど歓喜に打ち震えた」・・・とだけ。
今回のストーリーの主要人物で命を落としたのは、
①キノミヤマモル(病死)
②都築亨(崇高な死)
③都築亨によって川に突き落とされた男(事故死扱い)
青木(藤村)朔は実際には亡くなっていなかったため、以上の3人です。もし「知人」が今回のストーリーに登場していた人物であるならば、③ということになると推測できます。そうすると自ずと「積年の恨み」の理由も判明します。
勿論、「交換殺人」の対象に「知人」が含まれていた可能性もありますが。
冒頭で産まれた赤ん坊は
母親は青木(藤村)朔でしょう。100年後に繋がる歓喜。
丸い貝は幸せをよぶらしいよ
最後に、逃れられない運命の例として挙げられているワンシーン。女子高生がクラスメイトに渡した丸い貝。なぜそのワンシーンが?と思ったわけですが、何故だと思います?「丸」+「貝」+「幸」=「贄」・・・?うわあああ!ちょっと踏み込み過ぎた伏線じゃありません?もしかしたら初見で気づいた人もいるかもしれませんね。日頃から合体漢字を考えているQuizKnockメンバーとかなら気付きそうで怖い・・・。
ここまで読んで頂きありがとうございました!本書とは全然関係ありませんが、「呪い」と聞いて思い出した曲が2曲。YUKIちゃんと山崎ハコさん(←昭和っ!)。山崎ハコさんの方はガチ過ぎて怖いので、YUKIちゃんの方を置いておきますね!
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