やまかわうみweb

民俗学と郷土史のWEBマガジン。震災直後の2011年から自然民俗学誌「やまかわうみ」を…

やまかわうみweb

民俗学と郷土史のWEBマガジン。震災直後の2011年から自然民俗学誌「やまかわうみ」を12冊、別冊14冊を刊行。2024年春、WEB版をオープン。東京・神田神保町にある出版社、アーツアンドクラフツが編集部です

マガジン

  • 連載 「山懐の巫女たち」

    詩人・正津勉による連載エッセイ。山を歩き、山を描く女性の文筆家たち。自然災害の時代につづる、山野に抱かれる者たちの文学史。

  • 連載「ゾミア紀行」

    ヒマラヤ、雲南省、タイ、カンボジア、ヴェトナム中部高原など、ゾミアと呼ばれる山岳地帯をめぐる旅。山地民の民俗を探求するノンフィクション!

  • オンライン読書会

    文筆家の正津勉さんが主宰する読書会。毎月後半の金曜夜に、オンラインで行っています。国内の近代文学が中心

  • 連載 「はじめての古文書学習」

    北海道在住の著者・吉成秀夫がひもとく、古文書解読の世界。

  • 連載「異人伝ーはぐれ者の系譜」

    民俗研究者・前田速夫による連載。無難に世間を渡る庶民とは異なる、はぐれ者、愚か者、不器用な人間たち。偉人ならざる「異人」の系譜を掘り起こす。

最近の記事

「山懐の女たち」 第3回「山窩との交歓 吉野せい」 正津勉

 吉野せい(明治三二・一八八九年~昭和五二・一九七七年)。福島県石城郡小名浜町(以下、現・いわき市)生まれ。少女時代から文学に親しみ、雑誌や新聞に短歌や短編を投稿する。尋常高等小学校高等科を卒業後、独学で小学校准教員検定に合格し、小学校に勤務。当時、平で牧師をしていた山村暮鳥に出会う。また鹿島村の考古学者、八代義定の書斎「静観室」に通い多くの書を読む。  一九二一(大正一〇)年、二二歳、三月、暮鳥に兄事する詩人の三野混沌(本名・吉野義也)と結婚、好間村北好間の菊竹山で一町六反

¥300
    • ゾミア紀行(3) 「 アルナチャルの人類博覧会」

      インド最後の秘境  明け方、あまりの寒さに目が覚めてしまった。宿の部屋に設置されたベッドのなかで、毛布の上に厚手の布団をかけて眠ったのだった。ところが、窓ガラスから伝わってくる冷気が顔をなで、日本列島の秋めいた気候やアッサム州の真夏の暑気を表面に保っていた肌の感覚が驚いたのだろう。東ヒマラヤの零下まで下がってきた寒気を体内のサーモメーターが感知して、意識が睡眠の底から覚醒面のほうへと浮きあがってきたようだ。布団にくるまってまんじりともせず、ここ数日のインド北東部のアルナチ

      ¥300
      • 読書会2024年7月のお知らせ

        7月(第44回)のオンライン講座(無料)のご案内です。 課題図書を読んで、講座のなかで各自が感想をシェアします。 ZOOM(ズーム:一番広く使われているテレビ会議システム)を使います。 必要なシステムは、パソコンはカメラ(ウエブ・カメラ)とマイク付き、スマートフォン、タブレットです。 第44回目は、2024年7月26日金曜日18時半から、2時間ほど。 テキストは河野多恵子著「骨の肉」(講談社文芸文庫) お知り合いにも声を掛けられ、ご参加ください。 参加のお申込やお問合せ

        • はじめての古文書学習(3) 番外編「神輿を担ぐ ~北海道神宮例祭神輿渡御のご奉仕体験記~」

          毎年6月14日から16日は北海道神宮例祭、いわゆる「札幌まつり」だ。 北海道神宮と中島公園では金魚すくい、わたあめ、ホットドッグ、くじ引きなどの露店がならび、華やかな浴衣を着た人、カップル、友人同士、家族連れなどが水風船をぶらさげるなどして賑わいを見せる。札幌まつりがはじまると、いよいよ北海道にも夏がくるという気分がしぜんと高まる。 まつりの最終日は御神輿だ。 笛や太鼓を鳴らしながら御神輿が山車と共に札幌市内をぐるりと巡り、北海道神宮から頓宮神社までの間を往復する。「神輿渡御

        「山懐の女たち」 第3回「山窩との交歓 吉野せい」 正津勉

        ¥300

        マガジン

        • 連載 「山懐の巫女たち」
          3本
        • 連載「ゾミア紀行」
          3本
        • オンライン読書会
          8本
        • 連載 「はじめての古文書学習」
          3本
        • 連載「異人伝ーはぐれ者の系譜」
          3本
        • 民俗・郷土ニュース
          1本

        記事

          「異人伝ーはぐれ者の系譜」第3回 前田速夫

          その三 平秩東作 天明の狂歌師。密命を帯びて江戸人として初めて蝦夷地に入り、アイヌの動向を偵察する 此人山師也  筆者は以前、『古典遊歴 見失われた異空間を尋ねて』(平凡社)という本の中で、江戸天明年間の文人として、平賀源内や大田南畝(蜀山人)を取り上げたことがあった。すなわち、「狂――増殖する狂言綺語」「連――江戸文人のサロン」という二章がそれで、源内が南畝の出世作『寐惚先生文集』に序文を寄せたのは、狂歌師としては先輩にあたる平秩東作の紹介によるとし、加えて天明二年(一七

          ¥300

          「異人伝ーはぐれ者の系譜」第3回 前田速夫

          ¥300

          映画『長岡大花火』の劇場公開

          ドキュメンタリー映画『長岡大花火 打ち上げ、開始でございます』が、2024年6月28日より全国の映画館で公開されます。 はじめに 「一生に一度は行きたい花火大会」と呼び声が高い⻑岡花火は⻑岡空襲や中越地震に見舞われてきた⻑岡の人々にとって、慰霊の念と復興への決意、そして恒久平和への祈りが込められた花火大会でもありま す。自然災害や世界での争い事が多発している昨今、「慰霊」、「復興」、「平和」という 3 つのメッセージ を伝え続け、人々の心を励まし元気にする、⻑

          映画『長岡大花火』の劇場公開

          読書会2024年6月のお知らせ

          6月(第43回)のオンライン講座(無料)のご案内です。 課題図書を読んで、講座のなかで各自が感想をシェアします。 ZOOM(ズーム:一番広く使われているテレビ会議システム)を使います。 必要なシステムは、パソコンはカメラ(ウエブ・カメラ)とマイク付き、スマートフォン、タブレットです。 第43回目は、2024年6月28日金曜日18時半から、2時間ほど。 テキストは宇野浩二著『苦の世界』(岩波文庫) お知り合いにも声を掛けられ、ご参加ください。 参加のお申込やお問合せは、下

          読書会2024年6月のお知らせ

          読書会『山月記・李陵』レポート

          半実録Bゼミ読書会リポート:栗原良子 Bゼミは、詩人正津勉主宰で、およそ30年間、月1度継続している自由参加の読書会です。 当初は高田馬場界隈で会場を借りて実施されていましたが、2020年コロナ期より、毎月最終金曜日の夜に、リモートで実施。正津勉の博識体験と自由な指導により様々な作品から、時代や民俗の読解、参加者の率直な感想が聴ける貴重な機会になっています。 半実録第3回 課題 中島敦『山月記・李陵』 2024年5月31日(金)6:30~8:30 *源氏名・性別・年齢

          読書会『山月記・李陵』レポート

          ゾミア紀行(2) 「タワン僧院とモンパ」

          モンパの人びと  翌朝、タワンの街外れにある崖上の宿で眠っているとき、空を切り裂くような轟音で目がさめた。それは聞きおぼえのあるブンブンブンという断続的な騒音で、カーテンを開けると、ミリタリーカラーのヘリコプターが谷間を下りていくところだった。天空の町に滞在しているわけだが、そこは昔の作家が書いたようなシャングリラではなく、大国同士が国境線を争う山岳地帯なのであった。  北にチベット自治区、西にブータン、東にはミャンマーと国境を接するアルナーチャル・プラデーシュ州には、民

          ¥300

          ゾミア紀行(2) 「タワン僧院とモンパ」

          ¥300

          ゾミア紀行(1) 「東ヒマラヤのモンパ」

          インドの北東部へ  肌ざむくなり、秋というよりは、夜になると初冬の冷えこみが足もとから忍び寄ってくる山形から東京へもどると、それとは対照的に、南方から台風26号が迫っているという10月半ばごろのことであった。熱帯性の高気圧が、逆巻くような雨雲と太平洋上の熱い大気を巻きこみながら、少しずつ首都へと迫ってきている不穏な気配を感じながら、デリー行きの旅客機に飛び乗ったのは、翌日の夕方のことであった。  空港からニューデリー駅までメトロで移動できたのはよかったものの、駅から一歩外

          ゾミア紀行(1) 「東ヒマラヤのモンパ」

          はじめての古文書学習(2) 「はじめての古文書講座」 吉成秀夫

           札幌歴史懇話会が解散する。どうしよう。古文書の勉強を今後どうやって進めればよいのか。途方に暮れていた私に声をかけてくれる人が数人いた。  ある人は「だれかが古文書の解読会をはじめたら、そのときはあなたにも連絡します」と名刺を交換してくれた。  べつの人は「いままで読んでいた文書の残りをこれからも解読したいので、一緒に学習を希望する人は名前と連絡先を教えてください」とメモ用紙を配りはじめた。小さな紙片に一縷の望みを賭けて、私は自分の連絡先を記して手渡した。  またべつの人は北

          はじめての古文書学習(2) 「はじめての古文書講座」 吉成秀夫

          「異人伝ーはぐれ者の系譜」第2回 前田速夫

          その二 山中共古 柳田國男が教えを乞うた、日本民俗学の草分け的存在 皇女和宮のお庭番だった少年時代  山中共古。本名笑(えむ)。幼時の名は平蔵。一般には、二百冊もの洒落本からの抜き書き注釈書『砂払い』(岩波文庫)や、柳田國男との往復書簡集『石神問答』で名前を知られるが、その前歴が変わっている。七十九歳(数え、以下同)で永眠する数日前まで勤務した青山学院大学図書館に残る自筆の履歴書は、読みやすいように読点を補うと以下の通り。 東京府豊多摩郡大久保大字東大久保一九四番地寄留

          ¥300

          「異人伝ーはぐれ者の系譜」第2回 前田速夫

          ¥300

          ミニ写真集 「波照間島」

          日本国内で最南端にある島、透明度の高いビーチ、南十字星が見える島など、石垣島から船で40分という便利さもあいまって、波照間島は有数の観光地になっている。 その一方で、いったん集落に踏み入れば、いたるところに御嶽の聖地があり、島の南部には深い深い聖地の森がある。その原生林の深さは、屋久島にも比肩できるほど。というわけで、波照間島の史跡と民俗スポットをまわりましたが、ここには掲載できない写真もいっぱいあります。(写真=上運天ニコ/写真家、全17枚)

          ¥100

          ミニ写真集 「波照間島」

          ¥100

          「山懐の女たち」 第2回 「草鞋縦走 村井米子」 正津勉

           前回、「鳶山崩れ 幸田文」を書いた。「正味五十二キロ」の瘦躯を、案内者に負われて崩壊地を登る老婆。文、明治三七(一九〇四)年生まれ。その姿を偲ぶにつけ、胸を奮わされた。明治生まれの女は、いやほんと、並大抵でなく凄い。  このとき拙稿に向かいながら思い出される女人の詩があった。当方偏愛、指折りの詩人・永瀬清子。明治三九年生まれ。じつはその代表作とされる「だまして下さい言葉やさしく」という一篇がそれだ。これがつぎのようにも男衆殿にたいしてやんわりと、「だまして下さい……」そうし

          ¥300

          「山懐の女たち」 第2回 「草鞋縦走 村井米子」 正津勉

          ¥300

          読書会2024年5月のお知らせ

          5月(第42回)のオンライン講座(無料)のご案内です。 課題図書を読んで、講座のなかで各自が感想をシェアします。 ZOOM(ズーム:一番広く使われているテレビ会議システム)を使います。 必要なシステムは、パソコンはカメラ(ウエブ・カメラ)とマイク付き、スマートフォン、タブレットです。 第42回目は、2024年5月31日金曜日18時半から、2時間ほど。 テキストは中島敦著『李陵・山月記』(新潮文庫、岩波文庫、ハルキ文庫、青空文庫) お知り合いにも声を掛けられ、ご参加ください

          読書会2024年5月のお知らせ

          はじめての古文書学習(1) 「初心者のくずし字解読奮闘記」 吉成秀夫

          はじめに  古文書の学習をはじめて2年半になる。しばしば学習をさぼってしまうせいか、初心者の域を出ない。  それでも良き先輩たちのご指導に恵まれたおかげで解読できる文字が少しずつ増えてきた。  ここでは、私がどのように古文書の勉強をはじめたのか、そしてどのように勉強を進めているのかを書き留めていきたい。折々、北海道の歴史・地理・習俗などに触れることにもなるだろう。私の体験談が、これから古文書を学びたいと思っている誰かの参考にわずかでもなればこの上ない歓びである。  私が古

          はじめての古文書学習(1) 「初心者のくずし字解読奮闘記」 吉成秀夫