やまかわうみweb

民俗学と郷土史のWEBマガジン。震災直後の2011年から自然民俗学誌「やまかわうみ」を…

やまかわうみweb

民俗学と郷土史のWEBマガジン。震災直後の2011年から自然民俗学誌「やまかわうみ」を12冊、別冊14冊を刊行。2024年春、WEB版をプレオープン。東京・神田神保町にある出版社、アーツアンドクラフツが編集部です

マガジン

  • エッセイ・批評

    この1冊、この1本。おすすめの書評や映画評。山、川、海など、自然に関するエッセイ、研究報告、写真集など

  • 連載「異人伝ーはぐれ者の系譜」

    民俗研究者・前田速夫による連載。無難に世間を渡る庶民とは異なる、はぐれ者、愚か者、不器用な人間たち。偉人ならざる「異人」の系譜を掘り起こす。

  • 連載 「山懐の巫女たち」

    詩人・正津勉による連載エッセイ。山を歩き、山を描く女性の文筆家たち。自然災害の時代につづる、山野に抱かれる者たちの文学史。

  • オンライン読書会

    文筆家の正津勉さんが主宰する読書会。毎月後半の金曜夜に、オンライン(Zoom使用)で行っています。国内の近代文学が中心

  • やまかわうみバックナンバー

    雑誌「やまかわうみ」のバックナンバーをご紹介。本誌12冊、別冊14冊。これまで、渋沢敬三、柳田國男、鳥居龍蔵、折口信夫、宮田登、谷川健一、今西錦司ら民俗学や人類学の巨人を特集してきました。

最近の記事

エッセイ 「サワガニは寒すぎる」  木津直人

 京都の東の際、比叡山と大文字山との間に、ささやかな花崗岩地帯がある。京都盆地への白砂の供給源の一つであり、風化のすすんだ低い山地である。二つの谷川が流れており、音羽川は暴れ谷で、白川は穏やかに流下する。いっぽう稜線の東側の河谷は、琵琶湖の白い岸辺を作るのに役立っている。  一九七三年、白川沿いの小さな山襞に分け入っていく数人の少年たちがいた。  皆綿のズボンを履き、手に手になにかを持っている。ある者は虫籠(冬なので、虫なんかいない)。ある者はビニール袋と割り箸(獣の糞を採取

    • 「異人伝―はぐれ者の系譜」その一 鳴海要吉 前田速夫

      *『異人伝―はぐれ者の系譜』の第1回を全文無料で掲載します(編集部) はじめに  他人の気持ちを忖度して取り入ったり、その場の空気に合わせて器用に立ち回る人間が嫌いだ。敷かれたレールの上から一歩もはみ出さないエリートや、ごく人並みの人間も、つまらない。反対に、はぐれ者、はみ出し者、愚か者、不器用な人間が好きだ。親近感をおぼえる。  本篇に登場してもらうのは、いわばその親玉たちである。なにしろ、スケールが大きい。万事、無難に無難にと世間を渡らざるを得ないわれら庶民のなかに、

      • 第1回 「鳶(とんび)山崩(やまくず)れ 幸田文」 正津勉

        ※連載「山懐の巫女たち」の第1回を全文無料で公開します(編集部)  幸田文(こうだあや)(一九〇四~九〇)。昭和五一(一九七六)年、文、七〇歳を越えての山登りの途に、静岡市の大谷(おおや)崩れを見て、つよい衝撃を受ける。以来、老躯をおして全国の大きな崩壊現場を訪ね歩く。日本三大崩れ。そんな有難くない番付がある。これは前記の大谷崩れ、長野県小谷(おたり)村の稗田山(ひえだやま)崩れ、富山県立山町の鳶山(とんびやま)崩れをいう。文、この三大崩れに、日光男体山の崩れ、北海道有珠山

        • 読書会2024年4月のお知らせ

          4月(第41回)のオンライン読書会(無料)のご案内です。 課題図書を読んで、講座のなかで各自が感想をシェアします。 ZOOM(ズーム:一番広く使われているテレビ会議システム)を使います。 必要なシステムは、パソコンはカメラ(ウエブ・カメラ)とマイク付き、スマートフォンまたはタブレットです。 第41回目は、 2024年4月26日金曜日18時半から、2時間ほど。 テキストは佐藤春夫著『田園の憂鬱』(新潮文庫、青空文庫) 参加のお申込やお問合せは、下記のどちらかのフォームから

        エッセイ 「サワガニは寒すぎる」  木津直人

        マガジン

        • エッセイ・批評
          3本
        • 連載「異人伝ーはぐれ者の系譜」
          1本
        • 連載 「山懐の巫女たち」
          1本
        • オンライン読書会
          3本
        • やまかわうみバックナンバー
          9本
        • 連載「ゾミア紀行」
          0本

        記事

          読書会『風琴と魚の町』 リポート

          半実録Bゼミ読書会  リポート:栗原良子 Bゼミは、詩人正津勉主宰で、およそ30年間、月一度継続している自由参加の読書会です 当初は高田馬場界隈で会場を借りて実施されていましたが、2020年コロナ期より、毎月最終金曜日の夜に、リモートで実施。 様々な文学作品から、時代や民俗の読解、参加者の率直な感想が聴ける貴重な機会になっています 半実録第1回 課題 林芙美子『風琴と魚の町』 (2024年3月29日(金)6:30~8:30) ※源氏名・性別・年齢はリポート筆者による適

          読書会『風琴と魚の町』 リポート

          書評 『ハイン 地の果ての祭典』

           ブルース・チャトウィンの2冊の書物『パタゴニア』『パタゴニアふたたび』によって、南米の最南端にある雄大な自然の残るパタゴニアという土地には興味をもっていた。また、チリの映画監督であるパトリシオ・グスマンが撮った『真珠のボタン』という映画のなかで紹介される、ビーグル号でイギリスへ連れて行かれたフエゴ諸島の先住民ジェミー・バトンらの挿話にも関心があった。その映画であつかわれる19世紀後半に起きたセルクナムの大虐殺も、非常に心が痛む歴史である。それで手にとったのが『ハイン 地の果

          書評 『ハイン 地の果ての祭典』

          やまかわうみ 2013秋 vol.8 特集:反・富士山 追悼谷川健一

          目次 特集  反・富士山 【巻頭インタビュー】 池内 紀 「富士山は5合目まで」――池内流登山の楽しみ方 [ドキュメント] 実録・富士山過密登山ガイド 亀田 博 ――今夏、富士登山の実態をツアーガイドがレポート 世直しと、生まれ清まりと 富士信仰コントラ白山信仰 前田速夫 反富士山小詞華抄 正津勉 [反・富士山エッセイ] 西江雅之 (文化人類学者・言語学者) 田中 綾 (歌人・書評家) 窪島誠一郎 (「信濃デッサン館」「無言館」館主・作家) 中村好至惠 (画家) 服部文

          やまかわうみ 2013秋 vol.8 特集:反・富士山 追悼谷川健一

          やま かわ うみ 2013.春 vol.7 総特集 昔話・伝説を知る事典

          目次 総特集  昔話・伝説を知る事典  野村純一・大島廣志・常光徹・佐藤涼子 編 [附]昔話・伝説を知るための40冊の本 連載 河童淵 芝山悠平 わがこころのふるさと 森崎和江 棄民と先住 前田速夫 白秋とボニン・クレオール 金子遊 今西錦司をめぐって 富岡幸一郎 この書籍の注文ページ(出版社) http://webarts.cart.fc2.com/ca6/77/p-r-s/

          やま かわ うみ 2013.春 vol.7 総特集 昔話・伝説を知る事典

          やま かわ うみ 2012.秋 vol.6

          目次 特集  新・列島風景論――古代から3・11以後の変化をめぐって 【巻頭インタビュー】 金子兜太「生きもの感覚」俳句渡世 森の神の始原 ダイジョコと二ソの杜の奇妙な関係  金田久璋 海から見た風景 漁師たちの海上認識 川島秀一 安政の大地震の記録を読む 呉 光生 海底から見る日本列島 プレートテクトニクスと地震 上田誠也 記憶・風景・表現 神戸から東北へ 超越者としての震災 季村敏夫 震災と『ショアー』 細見和之 吉本隆明を検証する 淺野卓夫 たれも聴か

          やま かわ うみ 2012.秋 vol.6

          ミニ写真集 「与那国島」

          中国による海洋進出、台湾侵攻の脅威、有事における全島民の避難計画など、何かとニュースで取りざたされることの多い国境の島、与那国島。Dr.コト―の撮影地だけではない、豊富な民俗や伝承が残るスポットを歩いてみました。(撮影=上運天ニコ/写真家、全20枚) ※上の写真は、アヤミハビル館の入口にある壁画。原画は地元の中学2年生が描いた絵とのこと。

          有料
          100

          ミニ写真集 「与那国島」

          やま かわ うみ 2012.夏 vol.5

          目次 特集  地ベタリアン宣言――地べたに立つこと 【巻頭インタビュー】  西江雅之 自然児(地ベタリアン)的世界観のすすめ 身体で考える達人への道  内山 節 座談会「地ベタリアン」を考える 野生と知性とサバイバル 服部文祥×山内明美×松尾寿裕 [体験リポート]一ヵ月間、電気を使わないで暮らす!? 編集部 助田憲亮 山菜歳時記 特別篇 河原の恵み、山の幸 吉本隆明へのオマージュ 大日方公男 吉本隆明さんの「自然」思想ノート 増子信一 吉本さんのだんまり 新連載

          やま かわ うみ 2012.夏 vol.5

          やま かわ うみ 2012.春 vol.4

          目次 特集  災禍の地の諸声――3・11後、1年 【巻頭インタビュー】 森崎和江 いのちの声を掬う旅 [語り継ぐ・証言] 小さな町を呑みこんだ巨大津波  やまもと民話の会 逝きし日の風景 一九六〇年代の東北農村 写真・清野照夫 野村敬子(民俗学者)東北昔語り「昔語りを語り継ぐ」という文化 川島秀一(民俗学者)生活文化を伝えるために 瓦礫の中から拾い上げるモノ 澤口たまみ(エッセイスト・絵本作家)海の命 宮古の漁師が子どもらに語り継ぐもの 矢口清志(唄人)「銀河の

          やま かわ うみ 2012.春 vol.4

          読書会2024年3月のお知らせ

          3月(第40回)のオンライン読書会(無料)のご案内です。 いわゆる読書会です。課題図書を読んで、講座のなかで各自が感想をシェアします。 ZOOM(ズーム:一番広く使われているテレビ会議システム)を使います。 必要なシステムは、パソコンはカメラ(ウエブ・カメラ)とマイク付き、スマートフォンまたはタブレットです。 第40回目は、2024年3月29日金曜日18時半から、2時間ほど。テキストは林芙美子著『風琴と魚の町』(新潮文庫、青空文庫)です。 参加のお申込やお問合せは、下記

          読書会2024年3月のお知らせ

          やま かわ うみ 2011.冬 vol.3

          目次 特集  東北・民とこころ 【巻頭ギャラリー】ある歳月 野見山暁治 【巻頭インタビュー】 谷川健一 自然への畏敬、民俗への愛 川島秀一(民俗学者)津波と漁撈 海に生きる人々の心 色川大吉(歴史家)よみがえれ"東北" わが第二のふるさと 澤口たまみ(エッセイスト・絵本作家)宮沢賢治と東日本大震災  自然観察者のまなざし 中村敦夫(俳優・作家)無念の同級会  3.11以後の福島で 若狭からの発信  シンポジウム「若狭の風土と文化」抄録 連載 西口徹/服部文祥/

          やま かわ うみ 2011.冬 vol.3

          WEBマガジンの創刊にあたって

           東日本大震災の直後の2011年春に創刊し、本誌12冊を刊行してきた自然民俗学誌「やまかわうみ」。別冊では、渋沢敬三、鳥居龍蔵、折口信夫、宮田登、大林太良、森崎和江、谷川健一ら民俗学や人類学の巨人たちの特集号を14冊出してきました。  13年の歴史をもつ「やまかわうみ」ですが、2024年春から若手や全国の書き手に門戸を開き、新しい読者と出会うべく、「民俗学と郷土史のWEBマガジン」と銘を打ち「やまかわうみweb」をスタートします。  神田神保町にあるアーツアンドクラフツが編集

          WEBマガジンの創刊にあたって

          やま かわ うみ 2011.秋 vol.2

          目次 特集  自然を壊す 自然を生かす 【巻頭インタビュー】 赤坂憲雄 東北再生の向こうへ 邊見清二(川の案内人・石巻千石船の会会長)無堤防の北上川に慟哭した石巻 中嶌哲演(僧侶・原発設置反対小浜市民の会)若狭から福島へ 黒古一夫(文芸評論家)ささやかな抵抗ーー我が家の太陽光発電 菅豊(民俗学者)「不完全のすゝめーー「めぐるめぐみ」を享受するための自然とのかかわり方 枚田繁(建築作業員)続・「国境なき技能団」震災ボランティアの記録 編集部「めぐるめぐみ」を活か

          やま かわ うみ 2011.秋 vol.2