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連載 「山懐の巫女たち」

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詩人・正津勉による連載エッセイ。山を歩き、山を描く女性の文筆家たち。自然災害の時代につづる、山野に抱かれる者たちの文学史。
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第1回 「鳶(とんび)山崩(やまくず)れ 幸田文」 正津勉

※連載「山懐の巫女たち」の第1回を全文無料で公開します(編集部)  幸田文(こうだあや)(一九〇四~九〇)。昭和五一(一九七六)年、文、七〇歳を越えての山登りの途に、静岡市の大谷(おおや)崩れを見て、つよい衝撃を受ける。以来、老躯をおして全国の大きな崩壊現場を訪ね歩く。日本三大崩れ。そんな有難くない番付がある。これは前記の大谷崩れ、長野県小谷(おたり)村の稗田山(ひえだやま)崩れ、富山県立山町の鳶山(とんびやま)崩れをいう。文、この三大崩れに、日光男体山の崩れ、北海道有珠山