川谷医院

福岡市中央区にある精神科クリニック川谷医院の医師と心理士によるリレーエッセイです。 …

川谷医院

福岡市中央区にある精神科クリニック川谷医院の医師と心理士によるリレーエッセイです。 https://kawatani.jp/

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第1走者 川谷大治「川谷医院HPのリレーエッセイ」

令和6年2月、川谷医院のホームページ(HP)ではスタッフによるリレーエッセイを始めました。エッセイの内容は私たちが日頃臨床の合間に思い巡らせていることなどです。リレーを担当する人は川谷医院で臨床に当たっているスタッフです。第1走者は発起人の川谷が務めます。 「思い込み」について 私たちの悩みの大半は思い込みと言われます。大辞林によると、「思い込み」とは 1.そうだとばかり信じ切っていること、 2.それ以外にはないと固く心に決めていること、 とあります。 「思い込み」はある考

    • 第26走者 杉本 流:スポーツにおける心理学的要素

      今年のプロ野球も佳境を迎えています。ペナントレースは終了しクライマックスシリーズが始まりました。海の向こうでは大谷と千賀とダルビッシュがポストシーズンを日本人対決で争っていて、凄いことになっています。野球文化も、前走で川谷先生が書かれたように「日本の良いとこ取り」が如実に出ています。オリジナルの真似をしつつオリジナルに勝ってしまうこともある、日本らしさが出ているのかな。 川谷先生イチオシのジャイアンツも勝ち残っています。こないだリーグ優勝していたので「おめでとうございます」

      • 第25走者 川谷大治:引きこもりと良寛さん

        リレーエッセイ23「継続と変化」で、昭和の農業から工業への構造変化は統合失調症を、遅れて境界性パーソナリティ症を、平成の工業からIT産業への構造変化はうつ病を生み、さらには不登校~引きこもり青年(回避性パーソナリティ症)の問題は未解決のまま「8050問題」へと拡大し、そして令和は発達障害の時代になった、と指摘しました。今回は、社会に出ることが困難な人たちの灯りと支えになる良寛さんの生き方を紹介したいと思います。    Ⅰ.はじめに これまで良寛を「良寛さん」と呼んできました。

        • 第24走者 川谷大治:継続と変化

           岩永先生と稲員先生のバトンを受けて。  岩永先生は「期待」と「愛情」のバランスのいい親子関係を少年ジャンプ掲載の『ジョジョの奇妙な冒険』と『ドラゴンボール』を題材に、前者ではシンクロする血統と社会の「期待」を軸に、後者では孫悟空の子どもの孫悟飯のアイデンティティ確立を述べられ、稲員先生はお釈迦様の悟った仏法を今日まで継続しているかのような摩訶不思議な「日本仏教」について少し触れられました。  子どもは親の思い通りには育ちません。結果的に、親の期待に逆らって育つこともあるし、

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        第1走者 川谷大治「川谷医院HPのリレーエッセイ」

          第23走者 稲員修平:人の身体の機能と観念

          川谷医院の心理師の稲員です。前回のエッセイからだいぶ時間があいてしまいましたが、いくつか最近考えたことを書きたいと思います。 まず、前回のエッセイで少しだけふれていたグレゴリー・ベイトソンのダブルバインドセオリーについては、詳しい内容は前回の私のエッセイの次の川谷先生のエッセイの中で説明してもらいましたので、詳細はそちらをご覧ください。1つだけお伝えしたいのは、統合失調症の病因論としてダブルバインド理論は現在では否定されていますが、ベイトソンの著作である『精神の生態学』の中

          第23走者 稲員修平:人の身体の機能と観念

          第22走者 岩永洋一:空条承太郎とグレートサイヤマン

           オッス、オラ悟空。ではなくて、皆さんこんにちは、川谷医院の三番手、岩永です。今日はタイトルにあるように、あとでドラゴンボールに触れるので孫悟空風のスタートにしてみました(笑)。  前回私は「期待」についてお話しし、以下のような文章で終わっています。 今日お話したことは「期待」が「呪い」になることがあり、でも「期待」という愛情がなくても子供は育たない、というお話でした。今度は(いつになるかわかりませんが)、「期待」と愛情のバランスのいい親子関係について書いてみたいと思います。

          第22走者 岩永洋一:空条承太郎とグレートサイヤマン

          第21走者 杉本 流:ソラニンの精神分析

          リレーのバトンは…期待とイマギナチオと野球の話が続いていますね。その関連で。先日、リレー第7走でも紹介した映画「インサイドヘッド2」を見てきました。現在も公開中の映画なので内容は伏せますが、ヘーゲル(第2走、ヒトは矛盾を抱えて生きている)やスピノザ(良かれと思ってやったこと「イマギナチオ」の問題点)、フロイト(快不快原則から現実原則へ)など、今回も哲学要素満載でした。映画館は低年齢の子も多かったのですが、みんな食い入って見てましたね。小さい子でも哲学要素が入りやすい…のでしょ

          第21走者 杉本 流:ソラニンの精神分析

          第20走者川谷大治:希望と恐怖

           岩永先生のバトンを受けて。  岩永先生の「期待」について渡辺先生と共にリレーします。岩永先生は「親は世代間連鎖で当たり前に子供に期待もするし、愛情故にこうあってほしいと期待して祈るのです。ここでの大きすぎる期待や愛情は『呪い』になるのかもしれませんが・・・」と述べて、期待をかけられた者にとっては時に呪い(=重圧)になるからくりについて説明しました。 期待によく似た言葉に「希望」があります。期待も希望も「未来はこうあって欲しい」と願う心理は共通しています。違いは、前者は未来の

          第20走者川谷大治:希望と恐怖

          第19走者 渡邉恵里:雲を眺めながら「期待」について考える

          岩永先生の「期待する」というお話に触発され、バトンを受け取りました。 この「バトンを受け取ったこと」について考えてみました。 このバトンを受け取ったのは、エッセイを書いてほしいという川谷先生からの期待があるからではなく、純粋に自分が書きたくなったから、だと思います。 川谷先生も、私が今、時間に余裕のない状態であることは知っていて、期待していないはずだから。 ですが、優先順位的にもっとやらなければならないことが沢山あるのに、衝動に駆られて書いてしまったがために、これが続くと

          第19走者 渡邉恵里:雲を眺めながら「期待」について考える

          第18走者 岩永洋一:期待について

           皆さんこんにちは。引き続き三番打者の岩永です(というか、もはや順番はなくなってきておりますが)。前回もそうですが、「三番打者」とか野球ネタをエッセイに入れ込んでいますが、私は全く野球できません。キャッチボールでも、グローブをつけてない右手が反射的にボールを取りに行こうとしてしまいます(笑)。 そんなことはともあれ、今年のソフトバンクホークスは強いですね。常勝軍団と言われながらも、ここ数年は優勝から遠ざかっていました。前藤本監督やメンバーへの期待はさぞ重たいもので、のびのびと

          第18走者 岩永洋一:期待について

          第17走者 杉本 流:文豪ストレイドックスの精神分析

          川谷先生のバトンが「もののあはれ」だったのでそれに関連した作品です。前走(12走)で書いた「ギャップ」について触れたかった作品でもあります。   私がエッセイ用の作品を選ぶきっかけは、来院している人達から紹介されたり勧められたりするものがほとんどです。今回は古本屋に寄った際に1巻2巻を見つけ「この間の子が好きだって言ってたな」と思い出し、購入して読んで書きました。なので、2巻まで読んだだけの知識で作成しています。     ・文豪ストレイドックス(以下、文スト)(漫画/アニメ;

          第17走者 杉本 流:文豪ストレイドックスの精神分析

          第16走者 川谷大治:『注意と非注意のあいだに』

           恒吉先生のバトンを受けて。  恒吉先生は面接を終え、「面接室から階段を降りて医院のドアを開けると、ほんの一瞬、別世界に入り込んだような妙な感覚にとらわれることがあります」と述べて、その感覚を離人感と呼んでいます。そして、「映画館の内と外、面接室の内と外にはこころを整えるためのスキマが必要なのかもしれません」と結んでいます。 確かに、そうです。映画も面接(セラピー)も終わりがあります。私の子どもの頃の思い出ですが、楽しかった遊びも夕方には終わりが来て、子どもたちは各々家に帰り

          第16走者 川谷大治:『注意と非注意のあいだに』

          第15走者 恒吉徹三:面接と映画と離人感

           初めまして。3をキーワードに、産後の養育者への「3つの寄り添い」のことや子どもたちのみている世界についても語ってくださったドクター渡邉から、三男坊でもないのに名前に三がつくわたしがバトンを受け取りました。 ところで川谷医院は福岡市天神からすると南の方角にあります。近くにはナッツバターの量り売りの店や、すぐそばの路地を入っていくと入り口を見落としてしまいそうなベーグルサンドが人気の店などもあって、観光客の姿を見かけることもあります。そんな街中にある医院でのカウンセリング(面

          第15走者 恒吉徹三:面接と映画と離人感

          第14走者 渡邉恵里:3の寄り添いと3から始まる世界

          今、8月からの放課後等デイサービス立ち上げ準備で慌ただしいので、 「しばらくリレーエッセイはお休みします」と言っていたのですが、 岩永先生のエッセイを読むと、どうしても書きたくなってしまい、 バトンを受け取りました。 「3」という数字で私の頭にまず浮かんだことは、「3の法則」です。 小児科で勤務していた時、 「このお母さん、産後うつじゃないかな」「虐待にならないかな」 という予感がした場合に外来で母子をみていくタイミングとして、 まずは3日後(最大5日以内)のフォローを入

          第14走者 渡邉恵里:3の寄り添いと3から始まる世界

          第13走者 岩永洋一「1/3の純情な感情」

           「壊れるほど愛しても1/3も伝わらない   純情な感情は空回り   I Love Youさえ言えないでいる My Heart」   皆さんこんにちは、打順3番の岩永です。リレーエッセイも3周目に入りました。そのことを考えながらぼーっとしていたらこの曲が頭の中に流れてきました。多分「3」周目と「3」分の1が繋がったのでしょう。この曲は1990年代から2000年代に活動していたロックバンドSIAM SHADEの「1/3の純情な感情」の歌詞の一部です。この曲、その後も多くのアーテ

          第13走者 岩永洋一「1/3の純情な感情」

          第12走者 杉本流「薬屋のひとりごとと葬送のフリーレンの精神分析」

          リレーエッセイは12月頃に「来年1月から始めよう」と川谷先生から提案されたと記憶しています。動機は川谷先生の前回テーマ「やりたいことがわからない」と同じでした。両者忘れていたので開始は2月にずれ込みましたが。私はサブカルチャー系の話しか能動的に書けないですよ、と伝えていましたので今回も同様の手法でさせていただきます。   さて、「退屈」についてバトンを頂いたので、関連した内容で。川谷先生はコナトゥス(意思・衝動・欲望)の枯渇が退屈を引き起こすと書かれていました。コナトゥスの回

          第12走者 杉本流「薬屋のひとりごとと葬送のフリーレンの精神分析」