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子供の立場からの母の日と、母の立場からの母の日

 「お父さんあってのあなたたちなんだからね」ちゃんと感謝しなさい、それを形で表しなさい。
 結婚して間もなく、義母から言われた。
 そんなこと、押し付けられるの? 「感謝しなさい」「形で表しなさい」??
 しかもそれは、母の日の前。
 父親にだけ感謝っておかしいじゃないのよ。
 なんだかなあ!
 ……って気持ちで、先にある母の日にも何かを贈ることにした。

 私はどこか冷めたところもあって、一度、割り切っちゃうと情が薄く感じる人もいるだろう。感情をぶつけられた時に、それほど怒りを感じなければ割り切れちゃう。
 だけどこちら側が本気で怒りを感じてしまうと、すごく頑なになる。頑なになっても仕方ないのに。私の良くないところだとわかっている。手放した方がラクに決まってるもん。でもそれは頭でしかわかってないから、感情はそうはいかない。

 そんな風に言われたら、じゃあ絶対に毎年贈り続ける。

 そう。私はあんな風に言われて何だか腹を立ててしまったのだ。

 以来、母の日も父の日も、贈り物を欠かしたことはない。
 そして義理の両親に感謝の気持ちを物で表すくらいなら、自分の両親に対しての方がよほど感謝しているので、このおかしな状況につじつま合わせたくて、自分の両親にも贈り物をする。


 でも執念深く頑なに怒っているからと言って、やっぱり心から本当に感謝の気持ちが湧かないわけもなくて。

 まずは、夫の存在に感謝なのだ。義父母がいないと、夫は存在しない。
 確かに義父母の影響で、夫はしんどい思いをしたり、私とは違った面で頑なで面倒なところはある。でも照れたりためらったりせずに、思いを言葉にする部分は、義父母の接し方もあるだろう。義弟が、私たちの息子にすごく優しい表情で楽しそうに遊んでくれたりお喋りしたりも、義父母の作った家庭の雰囲気のためでもある。
 たくさんの物を送ってくれたり、結婚してからの経済面でも助けてくれた。

 過去を思えば色んな感情は交錯してしまうけれど、義父母に感謝の気持ちがあるのは、間違いない。

 もちろん、自分の両親に感謝の気持ちはある。生み育て、感情のひだだけでなく、経済的なことでもあらゆる場面で助けてくれた。

 最近では、私が落ち込んでいる時に話し相手になってくれることで、何度気分が晴れただろう。私の愚痴を聞いてもあれこれ言わず、楽しそうな話もしてくれる。笑顔を見せてくれるだけで私には充分力になる。これからもまだまだ背中を見せていてほしい。いや正面から、その表情も。


 さて。ここまでは自分が子供の立場での考え。


 息子に母の日を祝ってもらった記憶は、息子が小学生いっぱいまで。
 夫が毎年、「そろそろ母の日だから何かしようよ」と焚き付けてくれていた。
 小学校低学年までは、夫と一緒に料理を作ってくれた。
 高学年になると、息子が一人で作ってくれた。
 焼きそばめいたものや、座布団みたいな豪快な蒸しケーキや。
 大竹まことさんの「こんな料理で男はまいる」という料理本から選んでいたりして、おじさんの料理本なのかとか、「母さんは自分を一応女だと思っている…」他、ツッコミどころ満載だったけど、可愛かったのでヨシとした。

 中学生になると、そろそろ親に対する意識も変わってくるだろうから、夫に「母の日だからとか言わないで良いから」と焚き付けないように話した。

 するとそれっきり。
 気が付いたらもうすぐ19歳になるじゃないか。
 でも強がりとかじゃなく、別に構わない。
 ショッピングセンターには「母の日」商戦で、華やかな赤やピンクで彩られた売り場コーナーが設けられる。良いもんだなあと思うけれど、私が母や義母に贈ればそれで良い。

 子供に対しては。

 正直、私は花をもらうのは好きなので、スタンバイOKよ! 花を贈る気になったらいつでもちょうだいね! と思っている。

 でも感謝の気持ちと共に、手紙を読み上げる様子を、番組なんかで観ても、それほど感動しない。

 子供はようやく親のしてきたことに感謝し、思いを馳せ、思い出の幾つかを挙げてくれてはいる。
 成長したもんだね。ほほうなるほどねえ。そんな場面が印象に残ってるんだねぇ。そういう部分をありがたく思うんだ。その中のそれを思い出して感謝してくれてるのね。とは思う。

 だけど親は、当たり前のことしかしてきていないじゃないか。美談じゃなくて、愛情を真っ当に向けている親なら、多分みんなやってきていることだ。

 だからそんなに特別なことでもなければ、改めて言われてもさ……。
 言わせてもらえば……子供のアナタより、親にとっての私の方が、アナタと過ごした思い出たくさんありますから! アナタが覚えていないような可愛いエピソードも山のように持ってますから! 産み落とした瞬間から、いやお腹の中にいる時から、アナタとの思い出は始まってますからー!

 息子は、「お母さんはそうやって、感謝されなくても当たり前のことやってきただけって言うけどさ、それでも感謝の気持ちは伝えたいんだから言わせてね」と言ったことがある。

 そうだよね。もちろん息子のその気持ちが嬉しい。

 その思いを受け止めたいし、拒否なんかするわけない。

 だからしっかり言っておくよ。
 花は好きだからいつだって嬉しいよ。

※人によっては花を贈られるのがそれほど好きではない場合もあるから、皆さんは、自分のお母さんの好みを知っておいてくださいね。

 

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読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。