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同じ趣味、好みがあれば、歳の差を超えられるんじゃないだろうか! と思わせてくれる「メタモルフォーゼの縁側」

 60歳の年齢差の友人、てすごい。私の場合、年上だと108歳になっちゃうし、年下だとまだ生まれていない。
 
 ネットを利用するようになって、年齢を超えた会話がどんどん交わされる不思議をふと噛みしめる瞬間がある。私にとって30代はもうだいぶ年下でエネルギッシュだし、50代より年上は感じる世界が広そうで楽しみ。noteでもツイッターでも、言葉を交わしながら、特に年下には、度々年齢差をこっそり感じている。あっそうか、立場が違うんだと我に返る。
 
 それが、すっかりそんなものを忘れて楽しむ瞬間がある。

 好きな物事について話す時。
 例えばMCU(マーベル映画作品)、お笑い、漫画、ゲームについて話す時、私は年齢を忘れる。いや、本当は時々思い出している。人の名前が覚えられない時だ。さらには「覚えられなくてもまあいいや」と思っちゃうところが、歳を感じるところ。
 でもそれ以外で、興奮して話している時。公開日や発売日を待ち受ける時。ストーリーについて妄想する時。演者の話をする時。私はすっかり年齢を忘れてしまう。ワクワクしてときめき、泣いたり笑ったり感情的になり、時にはホワンとした心地良さに浸る。

 そんな話を、家族でも話すのに、その辺りの欲が深くて、まだまだもっと他の人とも話したいと思ってしまう。

 だからネットで、相手が何歳だろうが関係なくなり、そんな話をする時、楽しくて仕方ない。趣味ってそういうことなんじゃないだろうか。と思ってみたりする。


 鶴谷香央理さんの「メタモルフォーゼの縁側」で描かれている、人を思うお互いの様子に泣けてきた。60歳差の友情が生まれようとしている。私にもこんな風に接したい人たちがいる。ただ日常の中にふと思い出す関係が、なんて温かいのだろう。

 二人の出会いについても少し書いておこう。書店で、絵の美しさから何となく手に取ったBL漫画にハマった市野井雪さん。その書店のバイトをしているBL漫画が好きな、佐山うららちゃんと、少しずつ話すようになっていく。 

 それぞれの生活が当然あって、佐山うららちゃんは高校生活を過ごしながら気になる幼馴染がいて、うまく振舞えないクラスメイトとの関係がある。そして市野井さんはダンナさんを3年前に亡くしている。
 その様子が少しずつ描かれていて、市野井さんの、ダンナさんを思い出す細かなエピソードはどれも日常で、当たり前で、いちいち泣けてくる。私ももし一人生き残っちゃったら、こんな風に思い出して静かに暮らすのだろうか。悲しいからイヤだな。あまり考えたくないのに、度々ダンナさんとの思い出は日常に入り込んでくる。身体の衰えや日々の体力的なしんどさ、寂しさがさりげなさ過ぎて涙が出る。
 逆に夫がのこされたら、こんな風な日常が待っているのだろうか。私のことをこんな風に思い出すのだろうか。


 今のところ、15歳の女子高生の、75歳のおばあちゃんに対してのメールが、気を遣い過ぎて、「書かなきゃ良かったかな」「失礼かな」「迷惑かな」と遠慮が多い。ちょっとした葛藤が大変そうなのだけど、私は妹分気質だからなのか、年下に対しても、そんな気持ちに度々なってしまう。そんな彼女の気持ちがとてもわかり、私もまだまだ若い……と思いきや、75歳のおばあちゃんの、ウッカリした感じ、若い人たちに圧倒される感じ、それでもまあ良いや、と思う感じもまたわかるのだ。ちょうど二人の中間で、75歳おばあちゃん、市野井雪さんの娘と同じ年頃。

 誰に共感するのかといえば、全然世代が違う三人とも。
 高校生の佐山うららちゃんを見ていて、過去の自分が抱えていたものや、人に対する思いに、「わかるなあ」と思う。市野井雪さんを見ていると、「ああこの入り口にいるなあ」「将来こうなっていくのかなあ」「こんな風だと良いなあ」が混ざって、思い入れが強くなる。市野井雪さんの娘さんは、母親に甘えつつ母親を心配する中年。

 どれも私だ、という気がしてくる。
 これがこの漫画の魅力なのかな。

 そして二人がお互いを頭の片隅に置きながら、少しずつ距離を縮めていく様子は、温かくもきゅんとさえする。好きな漫画家さんのイベントにも二人で行ってみたりする。初めての世界に圧倒される二人。佐山うららちゃんは気持ちで。市野井雪さんは体力的に。圧倒されながら、お互いを補い合っていく。そこもまた心温まる。

 共通の趣味があったら友情って、きっと年齢を超えるんだよなあ。いや、超えてほしいなあ。

 温かい友情の関わりに胸がほんのりしながら、時々涙が浮かぶ。そんな漫画の続きをこれからも楽しみにしている。


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