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楽しかった! 元気をもらった!~「ラヴィット!ロック2024」~

 お笑いが好きだけど、好きなお笑い芸人たちについてあまり書かないようにしている。リスペクトし過ぎているからなのかもしれない。この仕事の奥深さとか、どれくらい真剣に取り組んでいるかとか、こちらを笑わせてくれるだけに底知れないし、わかりようもない。それに面白いなーと思う人も、そんな場面も多すぎて。

 観に行くライブはM-1ツアーや、何組かで地方に回って来てくれるツアーくらい。東京03の単独ライブはできるだけ毎年観に行くし、他の芸人さんも含めてXでフォローするなど応援はしているけど、誰かのコアなファンてほどではない。
 テレビで追うのも、M-1とかキングオブコントに代表されるコンテスト物くらい(もちろん両方とも第一回から全部を観ている)で、あとはネタ番組をちょこちょこ。バラエティ番組も限られたものを。夫がいろいろ録画して観るからよく一緒に観る。

 アメトーークの「中学の時イケてないグループに属していた芸人」で、麒麟 川島のちょこっとしたトークが面白い! と思った記憶がある。そこでのエピソードで、元々センスがあったのだなあと初めて知り、優しく内省的な部分も感じた。「ゴッドタン」では「上品芸人」で頑張っているなあと笑い、でもこれがこの人たちの良さなのよなあとも思った。IPPONグランプリの大喜利の回答がいつも好きで、決勝では一度、「あっ。正解出しちゃった」と大笑いした。
 そして「ラヴィット」の司会になった。

 私は気質がら、ニュースには疲弊してしまう。10年ほど前だったか心療内科で「先生、ちょっと恥ずかしいんですけど、あのニュースのあの映像が怖すぎて動悸がしてしまったり眠れなくなったりしてしまうんです。みんなはきっとそこまでではないんですよね」と相談したことがある。

 新聞を読んだり、ニュースを見たりしているだけで、怖くなったり悲しくなったりと忙しい。なのに、朝や昼にそういった情報番組でさらに心が沈んだり腹が立ったり。考えるだけで何もできない自分への無力感で、さらに悲しくなることに疲れてしまう。

 そこに「ラヴィット」がやってきた。

 「朝からバラエティでお笑い見せられても」と最初は思っていたけど、夫が録画してまで毎日観る。
 一緒になって観ていると「朝こそこういう番組が良い」と思うようになった。
 夫は第一回目からずっと追っていたし、「本物のラヴィットファンの皆さん!」の時も録画だけどやっぱり観ていた。仕事があるからなかなかリアルタイムで観られない日も多いのでね。
 私は朝だと家事をしながらのことが多い。でもやっぱり週に何回かは出なければいけなかったり、家にいても流し見だったりするから、けっきょく夜や週末に一緒に録画を観る。

 そのうち、NHKの「ファミリーヒストリー」で川島さんのご両親についても知る。お笑いの仕事を応援していたお母さまが、息子が「ラヴィット」の司会になったことを喜ばれていたこと。最期を「ラヴィット」での息子の声を聞きながら迎えていたこと。そのことを生放送中に、ご兄弟からの連絡で知った川島さんが、そんなことを一つもにおわせずにその日も番組をやりきったこと。
 そしてそういったエピソードをVTRで紹介されて大粒の涙を流す川島さんを見て、胸がつぶれそうな思いになった。きっとその日も私は観ていたし、観ながら大笑いしていた。
 他の芸人でもそんなエピソードを聞いたことはあって、お笑い芸人のすごみを改めて感じる。だけど、そんな人たちの番組で、みじんもそんなムードを感じさせないし、今も笑わせ続けてくれる。

 「ラヴィット」での川島さんの、ツッコミに表れる知識や教養は、その反射神経や瞬発力に伴って発揮され大笑いさせられる。「運動神経悪い芸人」なのにね! 一人ひとりを気にかけ、皆をまとめる力にも感心する。もちろんどうにかまとめるのには田村アナウンサーと助け合っていると思う。(田村アナの衣装や表情の可愛さも私には眼福)

 生放送だから時には失敗もあるし、レギュラー陣など出演者たちの素も出る。笑わせようとして悪ふざけが過ぎる時もある。

 でもほとんどずっと楽しくて、時に大笑いして、時には涙が出るほど笑い転げる。

 ゲストでは時々ミュージシャンが出て歌うし、お笑い芸人たちが本気で歌う。アイドルも歌って踊る。笑いが起きたり、感動したりもする。

 みんな少しでも笑わせたい、この場を楽しもうとするのが伝わってくる。皆のチームワークで笑いを生み出す。
 そこにはスタッフたちの協力もあってこそだとばかりに、番組に関わるスタッフたちをも笑いに巻き込んでくる。
 スタジオにいる各曜日のレギュラー、ゲスト、そしてスタッフの皆をお互いに大事に思っていることが川島さんを通じて伝わってくる。
 それらがこの番組の良さだと思う。


 そんな「ラヴィット」の、ロックフェスを昨年からしてくれるようになった。今年も。
 昨年は、田舎に住む自分たちには関係がないと思っていた。でもその話題が番組でも取り上げられる度に「良いなあ」と私がしつこく言っていたためか、今年は夫が「形だけでも」と応募してみた。

 1万人の枠に、15万人を超える応募があったという。

 約15倍。

 夫と笑いながら「まあ応募してみるのもいいよね」と言っていた。

 

 それが当選してしまった。


 おおいに困惑した。
 だって遠いから。


 でも15倍という数字以上に、14万人ほどが残念がっていたかと思うと、そこに驚く。1万人の中に自分たちがいるものだから。

 万が一当たった場合には息子も帰省している頃だろうと見越していたので、3人分取っていた。

 息子は一人暮らしだし熱心に観ているわけでもない。帰省の時に私たちが面白そうに話すから、横から見て笑う程度。

 そうは言っても息子はすっかり、私たち夫婦より熱心なお笑いファンで、ネット配信でたくさんのネタを観て知っている。M-1も予選から追いかけているし、若手にも詳しい。令和ロマンについても優勝するずっと前から教えてくれていた。

 だから、「仕方ないな。親に付き合うか」くらいに思っているみたいだった。

 
 住んでいる場所が会場から遠いので、近くで一泊することになる。
 と言っても、都心はホテル代が高いので隣県で一泊。それでも遠くに住む私たちにとっては、会場に近いと感じる。チケット代は決して安くはなく交通費だってかけていられないので、そこまでも車で何時間もかけて行く。

 代々木体育館に着くと気分が高揚した。私たちくらいの年齢の人も多くいたけど、普段行くようなミュージシャンのライブやお笑いライブの年齢層より若い人たちも多かったなあ。小さな子供連れの家族もいた。
 様々な年齢層がいながら大盛り上がりするのは楽しかった。ほとんどが「ラヴィット」好きで来ているから、番組内でのノリもわかって何度も大笑いした。

 全部良かった。青木マッチョの缶立てから始まって、最初から最後まで。どのグループも。

 たくさん笑ったシーンはあったけど、一番笑ったのは、ロングコートダディ兎「FuToshi」によるテイラー・スウィフト。
 衣装もなんか変だったし、とにかく声が可笑しかったけど表情は大まじめだし。いつか歌声持ち直すのではと思っていたけど「Ohhhhh~」で、そのうっすらとした希望は打ち砕かれて、その後も全然持ち直さないし! それでもリズムも発音も頑張っていて。でもやっぱりなんか帽子とか変だし。キラキラまたたいているし。笑いが止まらなくなってどうしようかと思った。

 ニューヨーク嶋佐のオアシスは、より上手になっていた気がしてカッコ良かった。
 横田真悠ちゃんもめちゃくちゃ可愛くて、言い間違いにも笑った。

 「美少年」の岩崎大昇くんは、やっと「怪獣の鼻唄」を歌えた。クイーンの「ボヘミアンラプソディ」を聴いた時に驚いたけど、声が良くて上手なんだなあ。

 上手と言えば、南波アナも、あんなに走り回りながらよく声が出るものだなあと感心した。
 終盤、すぐ近くで手を振れた。

 そして「ヒヤシンス」で、初老おじさんと言われていたお笑い芸人たち。私より全然年下だけどね。
 でもなすなかにし那須さんの病気の時に、確かに私たちの年齢でいつ起きてもおかしくないと思っていたから、自分たち夫婦のことのように心配した。私はなすなかにしのロケが好きだけど、あの時をきっかけに中西さんのXも追って応援する気持ちになった。だからこうやって仲良く舞台に立てていることに胸がいっぱい。皆の歌いっぷりと那須さんの圧倒的な歌声に涙が止まらない。

 そしておいでやす小田の、おだみょんの一生懸命さにも、わけのわからない涙があふれてきた。小田さんの真面目さや、そこからくる緊張感が伝わってきたし、ギターの練習も歌もよくがんばってきたことが伝わってきた。朴訥とした歌いっぷりがたまらないし、でもちゃんと上手に唄えていた。以前のことを考えると発声もとても良かった。こちらがグッとくるのは、この曲が大好きって気持ちも伝わってくるからなのかもしれない。

 そして川島さんの「つらいニュース、不安なニュースがある時にも、ラヴィットがある時には‘ラヴィットやってるから大丈夫’と思って。怖いニュースを伝えている横で自分たちも控えている」と伝えてくれた言葉。
 すぐ情報に影響されて疲れすぎてしまう私に、ラヴィットは必要だと思う。ここに来ているみんなも、そんな風に思っているのかもしれないな。何より川島さんがラヴィットを誇りに思っているのだな。
 お母さまのことも思い出され、胸がいっぱいに。

 最後にはサンボマスターに、「笑えてるかい?」「後悔のないように!」「みんな優勝なんだから!」と励まされ、いやがおうにも会場全体、大盛り上がり。

 今年に入って間もなくから息子の精神状態があまり良くなくて、でも大好きなことはできて。周りにはなかなか理解されないかもしれないけれど、当分お休みすることになっている。

 夫も私も正直に言えば不安がないわけがない。親としてどう振る舞えば良いのかよくわかっていない。でも息子の不安は、きっともっと大きくて深くて強いものだろうから、夫と私とでできる限りサポートしたい。
 日常を送り、自然な笑顔をたくさん思い出させて、息子の元気が日常的に回復できたらと思っている。

 少し無理矢理連れて行ってしまうことになったけれど(だって本当に抽選が当たると思わなかったから)、歌って良いタイミングでは、隣りで私よりめっちゃ大声で歌ったり、ノリノリで手を挙げて振ったり、一緒に大笑いしたりの息子を見ていると、私が励まされているようで元気が出た。

 最後にサンボマスターの曲の、大好きな部分も聴けた。

誰にも言えない孤独だとか
君の不安を終わらせに来た
君が生きるなら僕も生きるよ
ロックンロールイズ
ノット ノットデッド!

サンボマスター「ロックンロール イズ ノットデッド」の歌詞より

 息子に響けと願いながら。

 お笑い芸人についてなんかやっぱり語れない。好きじゃない人やどうしても苦手な芸人、苦手なお笑いだってそれなりにある。お笑いをわかっていないと言われても笑えない時がある。
 でも明るい番組に気持ちが救われることだってたくさんある。全然それだけじゃない日々だから。
 身の回りのことから世間や世界のこと、みんなだってちゃんと考えているから。苦しい気持ちを笑い飛ばしたい時間がある。
 そんな風に明るくなれない、うまく笑えない自分を朝から、時には疲れてしまった夜でも録画で、楽しく笑わせてくれるのが「ラヴィット」であることはまちがいない。

 ラヴィットのスタッフの皆も、それをたたえる川島さんも、全力で楽しんだお笑い芸人やアイドルや女優やタレントたちも、盛り上がった楽しくてあったかい観客も、みんなみんなありがとう!
 「こんなに盛り上がるつもりじゃなかったんだけど」と帰りに笑う息子を見て、行って良かったと今も余韻にひたっている。



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