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【書評】清少納言が鮮やかによみがえる〜『はなとゆめ』(冲方丁)

これは素晴らしい小説でした。

『天地明察』『十二人の死にたい子どもたち』冲方丁(うぶかたとう)さんによる、『はなとゆめ』

清少納言の生涯を描いた小説です……と聞いて「つまんなそう」と思ってしまった古典嫌いの人にこそ、ぜひ読んでほしい名作です!

※書評の目次一覧はこちらです

1、あらすじ・ストーリー

主人公である清少納言が語り手となり、物語が進みます。彼女は、28歳のときに一条天皇の后である中宮定子(ちゅうぐうていし)に仕えることになりました。

しかし、自分に自信がなかった清少納言は、宮中の華やかな雰囲気になじめず、おどおどしてろくに務めも果たせませんでした。

そんな清少納言を救ったのが、若き中宮・藤原定子。

人の才能を見抜いて開花させるという、優れた君主の器量を備えた中宮定子によって清少納言も変わっていき、喜んで宮仕えをするようになります。

しかし華やかで幸せな時間は、長くは続きませんでした。藤原道長との権力闘争に定子は巻き込まれ、執拗な妨害や嫌がらせを受けることに……。

清少納言も定子のもとを去りますが、そんな中で書かれたのがあの『枕草子』

それが次第に宮中でも評判になり、清少納言は再び定子に呼ばれます。

「わたしは、あの方を守る番人になる。」

強い決意で定子のもとに戻った清少納言は、最後の最後まで定子に仕え、最愛の主を見守るのでした。

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2、私の感想

あらすじを読んでもまだ「つまんなそう」と思った方は、せめてこの動画だけでも見てほしいです。たった2分です。

たぶんこれだけでも清少納言のイメージが変わるはず。

この小説の面白さを一言で表現すると、「清少納言はもちろん、中宮定子や一条帝が生き生きとした生身の存在としてよみがえる」という点です。

古文の活字の中から、登場人物たちが3Dのカラー映像でブワーっと立体的に浮き出てくるような、そんな感じがしました。

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国語教師としては感謝したいです。よくぞこれだけ史実の中から掘り起こしてドラマにしてくれました。

「道長腹立つ!」とか、その道長に毅然として対抗する中宮定子すごい!なんていうふうに完全に感情移入して読んでいました。

私が不勉強なだけですが、枕草子がこんなに大変な情勢の中で書かれたとは知りませんでした。これを読むと、枕草子が180度違って見えます。

あの有名な「春はあけぼの」がまさかあんな場面で出てくるとは!

「春はあけぼの、うんたらかんたら……」と暗記させられる退屈な古典、というイメージが一変することは間違いありません。

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3、こんな人にオススメ

・学生の時に古典嫌いだった人
もしかしたら、この本で一気に古典好きに転じるかもしれません。

・中学生&高校生
『枕草子』は絶対に学習することになるので、この本を読んでおくと授業が一気に面白くなると思います。

・同業者(国語担当)
授業のバリエーションが増えます。私は今後、授業で中宮定子の生涯にもふれようと思います。

ちなみに、私はこの本を授業の中でやったビブリオバトルで知りました。教えてくれた生徒に感謝です。

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