【書評】多様すぎる英国社会を学ぶ〜『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ)
これはずいぶんと話題になった本です。今年が終わる前に、話題になった本を読んでおこうと思い立ち、手に取った次第です。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。著者はイギリス在住のライター、ブレイディみかこさん。
1、内容・あらすじ
著者・ブレイディみかこさんとアイルランド人の配偶者との間に生まれた一人息子。
小学校はカトリックの名門校に通い、平和な毎日を過ごしていました。
ところが中学生になると環境が激変。いじめもレイシズムも喧嘩も何でもある、殺伐とした英国社会を反映するような「元底辺中学校」に通い始めます。
そこでは毎日のように色んな事件が起こります。人種差別を受けたり、格差社会を目の当たりにしたり……。
そして息子さん自身も自らのアイデンティティに悩みます。
様々な問題を共に考えながら乗り越えていくブレイディ一家の姿とイギリスの現実を描いたノンフィクションです。
2、私の感想
タイトルは、息子さんがノートに書いていた走り書きをブレイディみかこさんが発見し、タイトルに使ったとのこと。「上手い!」と思います。この本の内容を見事に一言で表しています。
ざっくばらんな親しみやすい文体で、非常に読みやすいです。配偶者の方の乱暴な口調もなんだか微笑ましいです。
扱っているテーマは決して軽くはないのですが、読んでいて非常に楽しい本でした。一話完結のように、英国での色んなエピソードが描かれています。
話の舞台となっているイギリスの事情がとてもよくわかります。
まずは人種差別。日本にいるとあまり意識しないこの問題ですが、イギリスだと日常茶飯事。そうかと思うと日本で息子さんが受けた差別についても書かれています。レンタルビデオ店での話は腹が立ちました。日本料理店での話はもっと腹が立ちました。
そして格差社会です。日本も最近かなりのものですが、英国はさらにその上をいく、ということがよくわかります。日本もいずれこうなりゃしないか、と心配になります。
他にも、いじめ問題やLGBTのことなど、多様性について考えさせられます。とにかく自分の視野が広がる本です。こりゃあ売れるわけだ、と思いました。
3、こんな人にオススメ
・教育関係者
英国の学校事情を通して「教育とは何か」ということについて考えるきっかけになります。
・LGBTについて知りたい人
私はこれが一番勉強になりました。英国は進んでいます。
・子育て中の方
特に思春期を迎えるお子さんをお持ちの方。子どもってすごい、と思わされます。
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