【書評】枕草子が3倍おもしろくなる!『100分de名著 清少納言 枕草子』
この本を読むと、大げさではなく『枕草子』が3倍くらいおもしろくなると思います。
清少納言についても興味がわきます。
1、内容
『枕草子』が書かれた背景や、清少納言の特徴について、筆者の山口仲美さん(大学の先生)がきわめてわかりやすく説明をしてくれます。
語り口調で書かれていることもあって、内容が抵抗なくスーッと頭に入ってきます。
清少納言だけではなく、紫式部・和泉式部についても、三者を比較しながらこれまたわかりやすく説明されています。
2、私の感想
驚いたのが、とにかく読みやすくてわかりやすい!
ということです。
わかりやすい大学の先生の授業のよう(そんな先生はあまりいませんでしたが……)
ちょうど枕草子を授業でやっていたので、教材研究の一環として読んだのですが、「読んでよかった」と素直に思いました。
私が「へぇー」と思ったポイントは、
・自然の美しさといった、風景描写を文章で書いたのは、清少納言が最初である。(それまでは自然の美しさは歌で詠むものだった)
・枕草子は、「マナー集」として読むことができ、その内容は現代でも完全に通用する。
・当時、大変な貴重品だった紙(手漉き和紙だから)を主人の中宮定子からもらったことが、枕草子執筆の大きな動機だった。
・清少納言は「文章タイプ」の人であり、「和歌タイプ」ではなかった。(むしろ和歌は苦手だった)
・清少納言は紫式部にかなり批判されたが、それに対して一切反応していない。
・紫式部も、清少納言のマネをして、自分の日記に風景描写を入れている。
といったところです。
これらを知っているだけでも、枕草子に対するイメージがかなり変わってきます。
多くの人は、枕草子と聞くと「春はあけぼの、うんたらかんたら……」と暗記させられたイメージしかないと思います。
そのイメージを、この本は変えてくれます。
3、こんな人にオススメ
・文学部の学生さん
これを一冊読んだだけで、枕草子の理解度がまるで違ってきます。私も大学時代に出会いたかった。
・国語が好きな中高生
きっと興味を持って授業に臨めると思います。作品や作者の周辺情報を知っておくと、とっつきやすくなります。成績も自然と上がることでしょう。
・枕草子を授業でやる同業者
私だけかもしれませんが、枕草子の授業はどうも単調になりがちです。
この本の内容を知っていれば、生徒へのおろし方など、授業の厚みが変わってくるのではないかと。
「マナー集」という切り口でやれば、授業のバリエーションが増えるでしょう。
私の授業のやり方も少し変わりそうです。
この『100分de名著』シリーズは、基本的な知識を得るにはもってこいです。わかりやすいですし。
おススメです。
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