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【書評】人生の探し物を本が見つけてくれる〜『お探し物は図書室まで』(青山美智子)

2021年の本屋大賞ノミネート作品です。青山美智子さん『お探し物は図書室まで』。これは本好きの方、つまりはこの記事を読んでくださっているような方は必読です。

※書評一覧の目次はこちら

1、内容・あらすじ

仕事や人生に行き詰まりを感じていた、5人の登場人物。

23歳の婦人服販売員、朋香。35歳の家具メーカー経理部勤務、諒。40歳の元雑誌編集者、夏美。30歳のニート、浩弥。65歳、定年退職した正雄。

仕事、転職、結婚、子育て………。5人はそれぞれの悩みを抱え、それぞれのきっかけで、区のコミュニティセンターの中にある小さな図書室を訪れます。

レファレンスカウンターにいるのは「小町さん」という、ちょっと無愛想な司書さん。

小町さんは話を聞いた後、彼らの悩みとは全く関係がなさそうな、思いもよらない本を紹介してくれます。さらに「付録」も一緒に渡してくれます。

彼らは面食らいながら本と付録を受け取るのですが──。

2、私の感想

「いいいい話だなあ!」というのが初読後の感想でした。

小町さんに渡された本から必要なメッセージを読み取り、光を見出していく様子は心温まる以外の何ものでもありません。

小町さんはこう語ります。

本も、そうなの。作り手の狙いとは関係のないところで、そこに書かれた幾ばくかの言葉を、読んだ人が自分自身に紐づけてその人だけの何かを得るんです。

これは「本を読む」という行為の本質を突いていると思います。

また、小町さんのみならず、登場人物たちがまたいいことをたくさん言います。本が線だらけになりました。例えばこれ。

俺に必要なのは、目の前のことにひたむきに取り組んでいくことなんだと思った。そうやってるうち、過去のがんばりが思いがけず役に立ったり、いい縁ができたりね。

でもこれも、私が今抱えている課題にマッチしたから、心に響いたのでしょう。

それにしても、小町さんの選書の腕はすごい。見習いたいものです。こういうすご腕の司書を集めて、「レファレンスコンテスト」をやったら面白いだろうなあ、などということを考えてしまいました。

作中で小町さんがオススメしていた本は全て職場の図書室に入れようと思います。

3、こんな人にオススメ

・司書の方
これはもう絶対です。仕事にも生かせること間違いなし。

・司書以外で本に携わる仕事をしている人
「本っていいものだな」と改めて思えることでしょう。

・今、悩んでいる人
5人の悩みは普遍的なものなので、必ず誰かに共感できると思います。


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