【書評】支え合う月経前症候群とパニック障害〜『夜明けのすべて』(瀬尾まいこ)
『そしてバトンは渡された』で本屋大賞を受賞した、瀬尾まいこさんの新作です。さすがの瀬尾まいこワールド、といった作品でした。
1、内容・あらすじ
主人公は二人の若い男女。
藤沢美沙、28歳。生理前になるとイライラをコントロールできず、誰かれかまわず攻撃的に当たり散らしてしまうという、PMS(月経前症候群)の持ち主。
これが原因で前の職場を辞めざるを得ず、現在は社員6名の小さな会社「栗田金属」に勤めています。
その栗田金属に途中入社してきたのが山添君、25歳。前は大手コンサル会社でバリバリ働き、充実していた生活を送っていましたが、ある日突然パニック障害を発症。
仕事も日常生活もまともにできなくなり、生きる気力を失っていました。
PMSの美沙と、パニック障害の山添君。二人はひょんなことからそれぞれの抱えている病気に気づき、自分のことを差し置いて相手を助けようとし始めます──。
2、私の感想
ものすごく読みやすく、ほっこりして前向きになれる小説でした。
『そしてバトンは渡された』もそうでしたが、嫌な人が一人も出てきません。安心して読めます。
PMSもパニック障害も、本人にとっては深刻なだけに重い話になりそうですが、ちっとも重くならない技量はさすがです。
「希望は必ずどこかにある」という著者のメッセージが伝わってくる作品です。
二人の関係が恋人ではないところもいいな、と思います。これが恋人だとまた全然違う話になってしまうので。
本筋からは外れますが、『ボヘミアンラプソディ』を観たくなりました。
3、こんな人にオススメ
・瀬尾まいこファンの人
これはぜひ押さえておくべき、瀬尾まいこさんらしい作品だと思います。
・病気で苦しんでいる人
PMSやパニック障害に限らず、です。「回復させる力が人間にはある」というメッセージも感じます。
・ふだんあまり本を読まない人
本当に読みやすくて読後感も最高なので、読書ビギナーにおススメです。
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