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【書評】つらいつらーい三角関係の名作〜『友情』武者小路実篤

「三角関係の名作」と私が呼んでいる『友情』を紹介します。

作者は武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)。

描かれたのは大正時代ですが、内容は現代でも完全に通用する、恋と友情のお話です。後半の展開が衝撃的すぎてびっくりします。

※書評の目次一覧はこちらです

1、あらすじ・ストーリー

脚本家の野島は、作家である親友の大宮と励まし合い、競い合いながら仕事に励んでいました。

大宮は、いつも野島のいいところを褒め、勇気づけてくれる有難い友でした。

ある日、野島は友人の仲田の妹・杉子を一目見て恋に落ちてしまいます。彼は無二の親友、大宮にこのことを打ち明けます。大宮は親身になって相談に乗り、野島を励ますのでした。

やがて野島は大宮に一緒に付いて来てもらい、杉子のところへ遊びに行くようになります。杉子の美しさや快活さに魅せられ、どんどん恋にのめり込んでいく野島。

一方、大宮は杉子にどんなに親しく話しかけられても冷淡さを貫き、あくまでも野島の恋を実らせようとします。そんな親友の姿に、野島はますます尊敬の念を抱き、感謝するのでした。

やがて、大宮は勉強のためにヨーロッパへ行くことを決意。

そして、大宮がヨーロッパに出発する直前、杉子が大宮のことを愛しているらしいことが、野島にはわかってしまいます。

大宮がヨーロッパへ行ってから、野島は杉子に結婚を申し込みますが、あっさりと断られます。

失意の日々を送る野島に、ヨーロッパの大宮から変な手紙が届きます。

尊敬すべき、大いなる友よ。自分は君に謝罪しなければならない。

こう始まる手紙には驚くべきことが書いてあり、野島はそれを読んでめまいを起こすのでした……。

2、私の感想

まず、杉子に対する野島の恋心が一途過ぎて、すごいです。

杉子の言動で、いちいち喜び、落ち込み、嫉妬し、妄想し……。

「恋をするとこういう心理になります」
という、見本のような感じ。
この辺は大正だろうと令和だろうと全く同じだなあ、と思います。

それだけに、後半の打撃がかわいそうすぎて、大いに野島に同情します。
そりゃあ大宮からのプレゼントも庭に叩きつけるよな。

そして、本当の友情とは何なのか、ということについて考えさせられます。
友の望みを最優先して叶えさせてあげるのが友情なのか、友の成長を期待してあえてつらい目に合わせるのが友情なのか。

また、美しいけど無邪気に残酷なことを言う杉子の姿にも、「いるいる、こういう人」と思ってしまいました。

共感できるポイントがたくさんある小説です。

3、こんな人におすすめ

・似たような状況に置かれている人
もしかしたら何らかのヒントになるかもしれません。

・真の友情について考えたい人
色々と考えさせられます。きっとこれは永遠のテーマでしょう。

・文学小説を敬遠している人
私がこれを読んだのは、小6か中1か、それくらいでしたが、ちゃんと理解できました。長さもちょうどよく、すぐ読み終わります。

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