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【書評】ランナー必読の書!『走ることについて語るときに僕の語ること』(村上春樹)

この本は名著です。世の市民ランナー全員必読です。村上春樹ファンも必読です。『走ることについて語るときに僕の語ること』

※書評の目次一覧はこちらです

1、内容

作家活動のかたわら、ランナーとして世界各地でフルマラソンや、100キロマラソンや、トライアスロンで走り続けてきた村上春樹さん。

「なぜ走るのか」ということについて語りつつ、小説家としてのありようや創作の秘密などを語り明かした貴重なエッセイです。

2、私の感想

実は、私も市民ランナーとしての顔を持ちます。一応、サブフォーです(これはランナーにしかわからない)。

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私もよく聞かれますが、「なぜランナーは走るのか」という質問に対する答えがこの本に書いてあります。

ランナーが何のために走るか、何を考えて走っているのか、漠然と胸の中で思っていることを見事に代弁して文章化してくれている感じです。

マラソンは万人に向いたスポーツではない。小説家が万人に向いた職業ではないのと同じように。僕は誰かに勧められたり、求められたりして小説家になったわけではない(止められこそすれ)。思うところあって勝手に小説家になった。それと同じように、人は誰かに勧められてランナーにはならない。人は基本的には、なるべくしてランナーになるのだ。

私は学生時代に陸上部で、400Mと800Mをやっていました。しかし社会人になってからは、運動とは10年以上無縁でした。

それがある日、突然「走ろう」と思い立ち、昔のウインドブレーカーを引っ張り出して(真冬だったのです)走り始めました。

以後、一年に3回ほど、フルマラソンのレースに出場する生活を続けています。まさに「なるべくしてランナーに」なりました。

マラソンをやっていて、なおかつ村上春樹さんのファンであれば、もう文句なく面白いと思います。共感の嵐です。

大げさでなく、走ることは生きることと通じるものがあります。とりわけ村上春樹さんにとっては創作ともリンクするものがあるということが、よくわかります。

村上春樹さんが他の作家さんと何が違うのかというと、「言霊が宿っている」という点だと思います。スピリチュアルな表現になってしまいますが、そうとしか言いようがないのです。

文学論的にいうともっと他の言い方があるのでしょうが、私は読んでいて明らかに「言霊が宿っている」と感じます。

それはエッセイでも例外ではありません。この本もビリビリするほどの言霊を感じました。

この本から他の村上春樹作品に入るのもありだと思います。

3、こんな人にオススメ

・市民ランナー
言うまでもありません。ぜひ読んで、自尊心をくすぐられてください。

・村上春樹ファン
村上春樹さんの作家としてのアイデンティティというか、そういうこともよくわかります。

・市民ランナーの知り合いがいる人
「あいつはなんだってあんなに走ってるんだ?」という疑問が解けると思います。

村上春樹さんという、全く別の異世界にいると思っていた人が、同じランナーとしてものすごく身近に感じられた本でした。

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