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【KAWAII探訪】vol.3 兵庫県・淡路島*お線香編(前編)

日本に古くからある「カワイイ」を探し求めて

知っているようで知らない、日本各地に古くからあるものやこと。

実際に足を運んで訪ねてみれば、まだ見ぬ「カワイイ!」にたくさん出あえるかもしれない。そんな期待を胸にあっちへこっちへ旅する、その名も『KAWAII探訪』

第三弾となる今回、向かった先は……。

「香」の歴史発祥の地!
兵庫県・淡路島へ


こんにちは。「KAWAII COMPANY」取材部記者のザックです。

わたしたちの暮らしに、気づけば身近な存在である「香」。たとえば法事やお墓参りには必ずお線香が登場します。また、おうちで過ごす時間が増えた最近では、リフレッシュのためにお香をたく方も多いのではないでしょうか。

しかし、そんなお線香やお香の生産量日本一を占めるのが、兵庫県の淡路島だということを知っている方は、逆に少ないかもしれません。

同じ兵庫県に拠点を構えるカワイイカンパニー探訪メンバーは、この「香」に興味を抱き、お線香やお香が作られる現場を訪れてみることにしました。

神戸市から淡路島へは車で40分ほど。世界最大の吊り橋である「明石海峡大橋」によって本土と結ばれています。この日はあいにくの雨模様……。

橋を渡っているとだんだん淡路島が見えて来ました。海岸に沿って建物が集まり、山や森があり自然豊かな様子も分かります。遠くに見える観覧車は、高速道路のサービスエリアに。

その、淡路サービスエリアから望む明石海峡大橋。晴れていたら壮大なスケールの景色に感動をおぼえることでしょう。淡路島は観光地としても人気が高く、特にアクセスが便利な関西圏の人々には身近なお出かけスポットになっています。

道中、立ち寄ったお店では名物の「鰆(さわら)丼」を。塩を振り表面を軽くあぶった鰆を、すし飯、同じく名産の玉ねぎとともにいただきます。鰆は足が早いため、生食に近いかたちで食べられるのは漁が盛んに行われている淡路島だからこそ。はじめて食べる新鮮な鰆の味わいにメンバー一同は感激。夢中でたいらげました笑。


淡路島に伝わる
不思議な「香木」が漂着したおはなし

なぜ淡路島では香づくりが地場産業として発展しているのか――その答えは、淡路島に伝わる、ある伝説が関係していました。

『日本書紀』には、こんな内容の記述があります。

西暦595年、長さ8尺(2m以上)の流木が淡路島の西岸に漂着しました。
島民たちはそれをただの流木だと思い、ほかの薪と一緒に竃の薪としてくべたところ、煙とともに素晴らしい香りが遠くまで広がり、島民たちはその流木を朝廷に献上しました。

(出典:薫寿堂ウェブサイト

この香木は不思議なことに、島民たちが何度も沖から流して海に帰しても、翌日には浜に戻ってきてしまったのだそう。

「枯木神社」(写真提供:薫寿堂)

海岸沿いにひっそりとたたずむ「枯木神社」には、朝廷に献上された香木の一部が今もまつられているそうです。

探訪をするといつも出あう、いにしえより伝わる伝説ばなし。いろいろなことを想像しながら遠い昔に思いをはせることは、カワイイ探訪の楽しみのひとつになってきました。

さて、その伝説から時は経ち、江戸時代の末期ごろ。漁業に出られない冬の時季の産業として淡路島で始まったのが、お線香づくりだといわれています。

明治創業の老舗「薫寿堂」の工場へ

今回、快く取材にご協力いただいたのは、明治26年創業の薫寿堂(くんじゅどう)。130年近い歴史があることに驚く探訪メンバーに、社長を務める魚住さんが「うちはまだまだ新しいほうですよ」と。そう聞くと、淡路島における香づくりの層の厚さを感じずにはいられません。

工場があるのは島の中央西側に位置する兵庫県洲本市五色町。薫寿堂はこの五色工場以外に、もう少し北に上がったところにも工場と、そして本社を構えています。

五色工場は森や田畑が広がるとても静かなロケーションにありました。

中に入り、まず最初に案内されたのは工場の最上階。そこは天井がとても高く、大きなタンクのような機械が設置されていました。あの華奢なお線香とはイメージが結びつかないほど大型の装置です。

工場を案内してくれたのは、研究開発課の木本さん。

このタンクの中には、お香の原料となる炭の粉末が入っていて、建物の1階から吸い上げているとのこと。なぜ、わざわざ高いところへ原料を運ぶのでしょうか……。それは、また後ほど。

さぁ、ここから1本のお線香になるまでの旅がはじまります。

こちらは、先ほどのタンクの部屋から一つ下がったフロア。なにやらスライダーのような形状をした機械があります。

なるほど、一番高いところに運ばれた炭の粉は重力を利用して滑るように工場内を移動していくのですね。確かに粉末状のものを移動させるときは、平行よりも上下に移動させたほうがらく!きっと、そういうことなのでしょうと合点したのでした。

ここで40㎏ずつ計量されて、さらに下の階にあるミキサー室へ。香料や水、つなぎの役割をするクスノキ科の樹皮を粉末にした椨粉(タブコ)と15分くらい混ざ合わせてお線香の「種」のようなものが出来あがります。

手に取ってみると、ほどよい柔らかさと湿り気があり、例えるなら粘土のよう。顔を近づけると、ほわっと香りが漂います。

見た目は、よく知っている線香とはまだまだほど遠いけれど、中身はしっかりとあの線香へ変化をとげているようです。

そこへ、今度はなにやら紫色をした塊が工場に運ばれてきました。

中身を見せてもらうと、着色されたお線香の種が。本社の工場でミキサーにかけられたものが、この後の工程を五色工場で行うために運び込まれてきました。きれいに着色するために、お湯を使って混ぜ合わせているそう。
まだホカホカとしていて、熱気とともにまたいい香りが立ち上ってきます。

お線香の旅は、ここからがハイライト

さて、後編ではいよいよお線香が仕上がるまでをお届けします。粘土のような「種」から、細くて硬くて繊細な「一本のお線香」へと。
その様子は、なんだか想定よりもわくわくするものでした。

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