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#042 「スマホ脳」(アンデシュ・ハンセン著)と子育て

スマホ依存についての本を読みましたので内容をシェアです!

この先スマホなしで生きていくのも大変なのはわかっているつもりです。スマホから独立した生活は今現在はイメージつきません。きっとやってまればできるのでしょうけれども、やるきっかけがあまりありません。

スマホに依存することの責任も被害を被るのも自分なので大して気にしなかったのですが、子供を持つことでスマホの依存について体系的に知っておきたいと思い、アンデシュ・ハンセンさんの書籍を3冊ほど購入しました。


もはやスマホに依存していない人を探すのは至難の業だと思います。毎日2時間以上は最低でも触れているでしょう。自分も毎日2時間以上、しかもスマホゲームにハマっている時は5、6時間は触っていました。スクリーンタイムでちゃんと時間が計測できてしまうんですね。スマホ依存は認知していて、何となく受け入れている状況です。


💰お金を払ってでもデジタルデトックスしたい時代💰




いかに現代人がスマホ離れができないか。高級ホテルでは、デジタルデトックスプランというのがあります。チェックイン時に電子機器をフロントに預けて、チェックアウト時に受け取るというシンプルな仕組みです。ホテル滞在中は自然に触れたりやアクティビティに集中する時間を大事にするという素晴らしい思想です。しかし、外部からの強制力がないとスマホを手放すことすら実現できない人間のスマホへの依存度合いに悲しさも感じます。デジタルデトックスプランなどを申し込まなくても、スマホやタブレットを封印することなど旅行中すぐに実践できる行為のはずです。しかしわれわれは、スマホを電車の中に忘れようものなら脱兎のごとく取りに行く哀しい生き物なのです。


👶子供のスマホ依存ってどうなの?📱


子供ができた時に考え方は少し変わりました。「子供にタブレットで動画を見せるのって、何か根源的に悪いことをしていない?」という疑問です。街ではよく見かけます。タブレットの画面を見せておけば泣き止んだりするので見せたくなる気持ちはわかります。電車の中で1歳とか2歳の子供とかが画面をじっと見ているのはたまに見かけます。それってどうなの?と内心思いますが、何がリスクなのかきちんと言語化できていないので、結局子供に動画を見せ続けるのはなぜ悪いのかがわかりません。子供がタバコを吸っているのは科学的な根拠に基づいて推奨できないですが、方向性としてはそれに近いものを感じています。


🌲自分の生育時の環境は参考にならない🌲



私は30代です。スマホなど存在しない時代に生まれております。中学生で初めてのガラケーを手にしました。しかし、今やスマートフォンやタブレットは幼児でも手に持つことができる時代です。スマホが普及したのはつい10年前くらいです。つまり、生まれた時からスマホやタブレットが存在している世代は、まだ10年しかないのです。幼児期のスマホやタブレットが仮に子供にとって大変なリスクであったとしても、それを証明するための被験者の大人がいないのです

スマホに限った話ではなく、技術は進化し続けてきてこういった依存症の話は今までたくさんあった気がします。そもそも、「依存症」という言葉を使う背景は何か健康面でリスクがあるからです。技術の進歩によって、洗濯機を使わない人はほとんどいないでしょう。しかし、洗濯機依存症という言葉は聞いたことがありません。「依存はしているけども、人間の負担を減らすためだけにあるもの」には依存者という言葉は使いません。

テレビはどうでしょうか。テレビ依存症という言葉はあまり聞いたことがありませんが、テレビ中毒という言葉は聞いたことがあります。テレビが見たくて見たくて仕方がなくなり、禁断症状が出るようです。しかし、日常的にテレビを見る人はありふれていて、それこそ1日に2-3時間テレビを見ていても自然な行為といえます。社会的にもテレビ中毒という言葉はあまり明るみに出ません。そこまで中毒性が高くないのかもしれません。テレビと比較すると、スマホの方がなんとなく中毒性は高いような気がします。



📕本の内容📕


前置きがとても長くなってしまいましたが、「スマホ脳」のTake Home Messageをまとめていきたいと思います。


🪓人間の脳は狩猟採集の時代に最適化された🐒


人間は種として生誕した20万年前から、狩猟採集の生活を送ってきました。この時代の平均寿命を鑑みると、およそ1万世代ほどありました。1万世代のうち、スマホが当たり前になってきたのは最新の1世代だけです。9999世代はスマホなしが当たり前の環境で生存してきており、1世代はスマホ当たり前の環境で生存しているのです。仮にスマホに超適応した突然変異種が現れていたとしても、人類の大半の世代に取って代わるにはあまりに経過時間が短すぎます。生物学的に脳は、まだスマホに適応するには時間が足りなさすぎるようです。

ロバート・M・サポルスキー

地球上に存在した時間の99%、動物にとってストレスとは恐怖の3分間のことだった。その3分が過ぎれば、自分が死んでいるか敵が死んでいるかだ。で、我々人間はというと? それと同じストレスを30年ローンで組むのだ。

ロバート・サポルスキー(スタンフォード大学神経内分泌学・進化生物学教授)


💤ストレスが睡眠を妨げる理由💤


狩猟採集の世代などを含めた視点での人間は、「感情」が決断を下し、生存に大きく関わっていました。

恐怖を感じた瞬間に、脳はコルチゾールアドレナリンを放出する指令を出す。心臓が早く強く打ち始め、筋肉に血液が送り出される。逃げるにしても、攻撃に出るにしても、最大限に力を発揮できるようにだ。お腹が空いている時に食べ物を見ると、脳がドーパミンを放出して、食べたいという欲求を促す。ドーパミンはオキシトシンと同様に、性的に興奮する時にも放出され、他人との絆も感じさせる。そのおかげで、テレビ画面ではなく隣にいる人に集中できるのだ。

P39

ここからが重要なところです。

あなたや私にとってのストレスは、多忙な日々の予定をうまく調整しなければいけない、試験勉強が十分にできていない、仕事の締め切りに間に合わない、といったようなことだ。他がそれらは歴史的に脳にストレスをかけてきた要因ではない。

医学用語でHPA系と呼ばれるシステムを詳しく見ていこう。これは数百万年の進化の産物で、人間だけでなく鳥やトカゲ、犬、猫、猿など基本的に全ての脊椎動物が有するシステムだ。HPA系は、まず視床下部(H:hypothalamus)という脳の部分から始まる。そこから下垂体(P:pituitarygland)という脳の株にある分泌器に信号が送られる。すると下垂体は、腎臓の上にある副腎(A:adrenal glands)へコルチゾールというホルモンを分泌するよう命令を送る。コルチゾールは身体にとって最も重要なストレスホルモンだ。

HPA系は、人間にしても動物にしても、緊急性の高い脅威に遭遇した時のために発達したのだろう。不意にライオンに遭遇すると、HPA系が「気をつけろ」と警報を鳴らす。この反応が視床下部で始まり、下垂体が副腎にコルチゾールを分泌するように要請するのだが、このコルチゾールがエネルギーをかき集め、心臓の拍動を強く早くする。ストレスを感じて心拍数が上がるのは、誰しも経験があるだろう。それは、ライオンに遭遇したら、素早く反応して、攻撃に出るか、走って逃げるかしなければならないからだ。つまり「闘争か逃走か」。どちらにしても、筋肉に大量の血液が必要になる。そのために拍動が早く、強くなるのだ。

(中略)

闘争と逃走以外のことを全て放棄してしまうのだ。脳にしてみれば、こういうことだ。

・睡眠:後回しにしよう
・消化:後回しにしよう
・繁殖行為:後回しにしよう

つまり、ストレスがかかるとコルチゾールが分泌されて睡眠は後回しになるのようです。人間関係の悩みなどをスマホを経由して抱えるようになると、ストレスが溜まり、睡眠は後回しになります。Instagramを見て、大量の他人の素敵な投稿に「羨ましいなぁ」と感じてしまうのは良い意味でも悪い意味でもコンプレックスから来るストレスが含まれるでしょう。したがって十分な睡眠時間が確保できなくなります。

幼児の場合は流石にSNSを見て人間関係で悩むようなことはありませんが、幼児にスマホを見せた場合はスマホの映像による興奮状態が続くことで睡眠までが遅くなりそうなのは事実です。



☀️スマホのブルーライトは睡眠を妨げる🟦


メラトニンとは、睡眠を誘導するホルモンのことです。太陽光に含まれるブルーライトが目に入ると、脳内でメラトニンの分泌が抑制されます。したがって、日中は太陽光によってメラトニンの分泌が抑えられ、睡眠しないようになっています。これは、昼間は外敵から身を守るために生物として培ってきた本能だと思われます。したがって、子供がスマホやタブレットを見れば、昼寝ができなくなったり夜寝るのが遅くなったりしてしまうリスクがあります。

WHOは子供の健全な成長のためのガイドラインを発表しています。これによると、

1~2歳は

  • 運動:少なくとも180分

  • スクリーン:0分(見せない)推奨, 長くても60minまで

  • 睡眠:11-14時間

ということを発表しています。少なくとも4歳まではスマホやタブレットを見せるべきではないということが書かれています。限度としても1日60分以内に抑えましょうね、ということですね。


🧪スマホがドーパミンを分泌させる理由


人間は新しい物好きで、新しいものを見るとドーパミンを分泌するようですが、その理由が本書には書いてありました。


ストレスのシステムと同様に、脳内の報酬システムは何百万年もかけて発達してきた。どちらのシステムにとっても、現代社会は未知の世界だ。報酬システムでは、ドーパミンが重要な役割を果たし、生き延びて遺伝子を残せるように人間を突き動かしてきた。つまり食糧、他人との付き合い(中略)だが、スマホもドーパミン量を増やす。それが、チャットの通知が届くとスマホを見たい衝動に駆られる理由だ。スマホは、報酬システムの基礎的なメカニズムの数々をダイレクトにハッキングしているのだ

P71

つまり、新しい発見があるとドーパミンが分泌されるようです。ドーパミンが分泌されると人間の脳は、その行為自体を「幸福感や快楽が得られる行動」として記憶し、繰り返そうとします。ドーパミンは通常、意欲が向上したり感情の安定に寄与しますが、過剰に分泌されると依存症になり、単なる時間の浪費だけではなく、勉強などスマホ以外の作業の集中力低下や運動不足が引き起こされます。



👶バカになる子供たち


スマホは新しい情報が満載ですし、友人の状況を把握することも可能であるため、常に脳に報酬を与え、依存症に陥りやすいです。子供は、スマホから離れることができなくなります。スマホ以上に脳にドーパミンを与える存在がない状況が長くなると、スマホを使い続けます。前述の通り、運動不足に陥ったり、スマホ以外の健全な行動(勉強や友人との交流など)に対して意欲が失われたり集中力が低下したりとリスクが伴います。

また、シンプルにブルーライトを長く見ることによってメラトニンの分泌が抑制され、睡眠が不足します。

人との交流という側面では、SNSによって引き起こされる不安やストレスにさらされる状況が夜中まで続き、睡眠障害を抱える可能性が高くなります。また、手を使って書いたり体を動かす経験が不足することで記憶力や集中力が失われてしまいます

iPhoneの父、スティーブジョブズは子供に電子機器を安易に与えかなったそうです。それは、スマホが子供の脳に与えるリスクを懸念してのことです。

2歳になるまではスマホやタブレットを見せずに育てるのが1番良いですし、5歳までは長くても1日1時間以内に使用を抑えたいですね。



終わりに


アルコールは身体的な依存症が確認されていて、成人するまでは飲んではいけないことになっています。スマートフォンは、便利な側面もある反面、精神的には依存症が確認されつつあります。子育てをする間は、1日の使用時間の制限をした上で適度な運動を促していくべきだと感じました。

子育てをする上では、「スマホを使用するリスク」を把握する必要がありそうです。スマホ使用が増えると、睡眠時間が減るリスクがあります。睡眠時間が減ると、睡眠中に分泌される予定だった成長ホルモンの分泌が減少し、体の発育が遅れるリスクがあります。また、睡眠が不足すると認知機能が低下し日中学んだことを忘れます。睡眠不足が情緒不安定を引き起こすと報告している例もあるようです。子供が十分に睡眠できる時間を確保することは重要そうです。

子供にスマホやタブレットを見せる時間も実態を把握したいですね。スマホを見過ぎなのかどうかを親がちゃんと把握するべきだと思いました。電車で移動する時に必ず見せているのであれば、簡単に60分はすぎてしまいます。自分の子供が何分スマホを見ているのかを把握するのは意識しないと出来なさそうです。これから気をつけていきたいです。

個人的には次のスマホは、ガラケーに戻すのもありかもしれないと思いつつあります。最低限の連絡さえできれば、あとの機能は依存症を引き落とす元です。デジタル・デトックスも毎日19時以降など決まった時間に習慣化するのもありだと思いました。

おしまい

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