読書記録「檸檬」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、梶井基次郎氏の「檸檬」新潮社 (1967) です!
・あらすじ
"えたいの知れない不吉な塊が私の心を終始圧えつけていた"。肺尖カタルや神経衰弱に、背を焼くような借金という、目には見えない不吉なものに付き纏われ、学生である私の心は落ち着かず、終始街を浮浪するばかりであった。
なぜだか最近、「見すぼらしくて美しいもの」に強く惹かれていた。美しい詩や音楽ではなく、壊れかかった街、がらくたの転がる部屋など、現実の私を見失うことを楽しんでいた。
ある日私がまたも街を彷徨い歩いている時、とある果物屋で檸檬を見つけた。特段珍しいものでもないのだが、この形、この匂い、この重さ。あんなに心を悩ませた憂鬱が、たった1個の檸檬で紛らわせられた。
気分を良くした私は丸善に立ち寄る。だが1冊1冊と画集を開いては書棚に戻さず積み上げていくうちに、私の心はまたもひどく落ち込んでいった。
ふと果物屋で購入した檸檬を思い出す。積み上げた画集の頂に檸檬を置いてみると、暗くなった心も妙にすっきりとしていた。そしてこうも考えた。
――それをそのままにしておいて私は、何喰わぬ顔をして外へ出る。――
この黄金色に輝く爆弾が、目障りな丸善を木っ端微塵に吹き飛ばすだろう、と。
大学時代に従兄弟から譲り受けた小説、今更になって実家の本棚から引っ張り出した次第。
お恥ずかしながら新潮社に収められている作品しか読んでいないため、梶井基次郎氏の他の作風を存じ上げないのだが、全体的に暗い印象を覚える。主人公が肺炎や結核を患っているだの、ひどい憂鬱にかかっているなど。
それ故に世界をリアルに、そして繊細に描いている。
我々の悩みなんてものは、所詮檸檬と同じくらいの重さでしかないのだ。
それを重いと思うか、軽いと思うかは人それぞれだが、少なくとも、片手で持てる程度の重さでしかない。
だが、そんなものであっても人を殺すほどの恐ろしさがある。端から見たら、たかだか「それくらいで」という悩みが、心をかき乱し、最悪の事態を招くことだってある。
その時はさ、他人に迷惑かけてでも、馬鹿げたことをしてみればいいんじゃないかな。今の私だったら、そうする。それではまた次回!
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