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読書記録「破局」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、遠野遥さんの「破局」河出書房新社 (2020)です!

*物語のあらすじのために卑猥な表現を使います。閲覧にはご注意ください。

遠野遥「破局」河出書房新社

・あらすじ
陽介は大学四年生 公務員試験に向けての勉強と、日々身体を鍛えることを怠らなかった。

陽介には漫才師を目指す膝という友人がいる。大学で新歓ライブに出るから見に来てくれと頼まれた日、漫才を見に来ていた一年生 灯と出会う。

男は公務員試験前でもトレーニングを怠らない。自宅では裸で腕立て伏せをして、性器を床に押し当てる。

ラグビーをしていた陽介は、高校卒業後に顧問の勧めでコーチ役を引き受ける。準決勝進出を目指し、部員を鍛え締め上げる。

男にとって朝の自慰は欠かせない。利き手の反対側の手ですると、他人に触られている気がして心地いい。

陽介はラグビー部の指導に熱が入る。ラガーマンはゾンビのように立ち上がっては敵に襲いかかれと。ゾンビになったと思えば、恐怖も無くなる。

男は女性には優しくする。それが父の教えだからだ。決して女性が嫌がることはしない。

陽介が灯と肌を重ねたのは、彼女の麻衣子と別れた日。日に日に二人は肌を重ねる時間が増えていく。それこそゾンビのように、何度も何度も…。

2ヶ月くらい前から、川口からこの本を読んだ感想を聞きたいと勧められ、ようやく読み終えた次第。

だが読んでいる最中に、どうしてこの本をそこまで推すのかという点ばかりが頭を過ぎって仕方がない。

わかる、と同意を求めているのか。いや、わからんでもない感じ。虚無感というか、どこかあきれるような思い。

それか俺は今こんな状態なんだ!助けてくれ!という彼なりのSOSなのかもしれない。

本の帯にデビッド・ボイドの書評が載っている。この作品は村田沙耶香さんの「コンビニ人間」に通じる、特異な思考を描き切っていると。

読んでいて感じたことは、陽介に感情移入はできない。

だが物語に登場する男には共感できる。

この作品は陽介の一人称視点で物語が進む。彼が日々感じていること、考えていることがそのまま文字に起こされている。

外向きはいい男だろう。筋肉隆々で健康的、女性に優しく、公務員を目指す男。

だがその行動や思考は、一体どこから来ているのか。バックグラウンドがそこまで語られていないからこそ、不可思議であり現実的である。

陽介は時折祈りを捧げる。

交通事故で亡くなる人がいなくなればいい
働きすぎで精神や身体を壊す人がいなくなればいい
すべての受験生が志望校に合格できるといい

しかし祈ったあとで、彼は神様を信じていないと自覚する。

だからなんだ、と思う。けれども、妙に納得している自分がいる。

人におすすめするのは躊躇するが、この本を読んだ方の所感は伺いたい。
でも読書会でこの本を紹介するかは保留。それではまた次回!

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