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読書記録「図南の翼 十二国記」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、小野不由美さんの「図南の翼 十二国記」講談社 (2001) です!

小野不由美「図南の翼」講談社

・あらすじ
先王崩御から二十七年 国に妖魔が蔓延り、衰退の一途を辿っていた。この国の有様に齢12歳の少女は嘆き、そして自ら王にならんと蓬山を目指す。

珠晶しゅしょうは連檣のとある豪商の娘であった。幼き頃から何不自由なく育ったのだが、国が荒廃し妖魔が人を襲っているにも関わらず、窓に鉄格子をはめて安堵している大人たちに憤っていた。

ある日、珠晶は蓬山を目指し家を飛び出す。旅の途中で様々なトラブルに見舞われながらも謎の旅人 利広りこうに巡り会い、黄海近くの乾の宿屋で猟戸師 頑丘がんきゅうに偶然で出会う。

蓬山へたどり着くには妖魔の蔓延る黄海という道なき道を進まねばならない。当然、何十人もの護衛を携えていても、1人の犠牲もなく黄海を超えることは不可能と言っても過言ではない。

時には人を犠牲にしてでも前に進まねばならない。だが、地の利に詳しい頑丘が全く人を助けようとしないやり方に、殊晶の心に疑惑と憤怒を覚える。

果たして、最後に麒麟が跪いた者は一体誰なのか…。

先日の読書会にて紹介され、是非川口さんに読んで欲しいとその場で譲り受けたため、十二国記シリーズは初めてだがこの度読み終えた次第。ちなみに、紹介頂いた通り、十二国記を全く知らなくてもしっかりと楽しめた。

世間知らずで豪商のお嬢さまである珠晶と、浮民で明日食う飯も厳しい頑丘とでは、生まれも育ちからしても全く異なる。最初はいつまで経ってもお互いがわかり合うことができなかった。

そもそも珠晶が蓬山へ目指すこと自体、頑丘には理解できなかった。黄海の恐ろしさを知らない世間知らずな少女が、王になろうと思うこと自体理解に及ばなかった。

一方頑丘は何度も黄海を旅しているのに、全く他の人を助けようとしたり、犠牲を犠牲とも思わない考え方を理解することができなかった。

旅の途中、ついに珠晶は頑丘を見限り、他の者について行くという選択をする。それでも旅を続ける頑丘に、利広はこう諭す。

「何事につけても、自分の身に起こってみなければ、理解できないものというのはあるからね。それは事実だけれども、同時に理解を拒絶する言葉でもある。理解を拒絶するくせに、理解できない相手を責める言葉だ」

同著 201頁より抜粋

人の上に立つからとか、王になるからとは関係なしに、相手の理解に努めることは非常に大切である。人の気持ちを完全に理解することはできないが、相手の背景や経緯を理解に努めることは出来る。

経験したことがないことに対して、何も知らないくせにと撥ね付けることは容易い。だが、そこからは軋轢以外なにも生まれない。

旅を続けていくなかでお互いを認め合う。果たしてこの旅の行く末はいかに。それではまた次回!

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