見出し画像

読書記録「カラフル」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、森絵都さんの「カラフル」文藝春秋 (2007) です!

森絵都「カラフル」文藝春秋

・あらすじ
ゆらゆらとどこか暗い場所へ流されていたぼくの魂は、突然現れた天使によって行く手を遮られた。

「おめでとうございます、抽選に当たりました!」

天使(プラプラ)から聞くところによると、前世で大きな罪を犯した人間の魂は、輪廻のサイクルから外されるのが原則である。

しかし、そのサイクルに戻るための”再挑戦”のチャンスとして、抽選に当たった魂(つまりぼくに)白羽の矢が立ったらしい。

再挑戦としてやるべきこと。それは一定期間、現世に住む人間の体を借りて過ごし(天使の業界では「ホームステイ」と言う)、ぼくが前世に犯した過ちを自覚することだという。

なお、天使のボスの命令は絶対らしく、ぼくに拒否権はない。


病院の一室。大量の睡眠薬を接種して自らの命を絶った人間に入れ替わり、目が覚めると、ぼくは小林真になっていた。

借り物の姿で、これからぼくは前世の過ちを思い出さねばならない。

しかし、そのホームステイ先は、お世辞にも良い環境ではなかった。

隠れて不倫をしていた母、悪徳商法の会社に勤める利己的な父、真の容姿を馬鹿にする兄貴 満。初恋の相手がラブホテルに入っていくのを目撃し、学校には友達が一人もいなかった。

一体ぼくが過去に犯した罪とはなんなのだろうか。こんな状況で、本当に前世の記憶を思い出すことはできるのだろうか。

個人的に「有名だけれども、そう言えば一度も読んでなかった本」の1冊。

小川洋子さんの「博士の愛した数式」、梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」に引き続き、ハートフルな作品をご所望から紐解いた次第。

ここから先、センシティブな話になります。




私が中学生の頃、社会人になった従兄弟が飛び降りて亡くなった。

職場が近いからと、うちに居候していた。とても真面目な兄さんで、悩みを抱えている素振りが全然見えなかった。

通夜には従兄弟の同僚が大勢参列していた。出棺では従兄弟の会社の同僚や、友人たちの手によって見送ってもらった。

会社側が賠償しますと頭を下げると、従兄弟の母は「お金はいりません。息子を返してください」と返した。

考えてみると、真にかぎらず、この世にはもう遅すぎることや、とりかえしのつかないことばかりがあふれているのかもしれない。

142頁より抜粋

どうして従兄弟が飛び降りたのか、そこまで追い詰めなければならなかったのかと考えると、とても悲しくなる。

生きていてほしかった。そんなに仕事が嫌ならば、思い詰めず、他にも選択肢があったはずなのにと。

嫌なことが続くと、世界が色を失ったように見えるという。

物事の悪い点しか見えなくなり、何を考えてもネガティブなイメージしか思い浮かばないという。

従兄弟が最後に見た世界は、どんな色だったのだろうか。

あそこでみんなといっしょに色まみれになって生きよう。
たとえそれがなんのためにだかわからなくても――。

同著より抜粋

私の行動指針の奥底にある「それでも、生きることに意味がある」。

もう10年以上前のことである。正直、記憶が薄れている部分ばかりである。

それでも、従兄弟の存在は、私の人生に深く影響を与えたのは事実。

そう言うとまるで…と捉えられてしまうかもしれない。

今でも「生きてほしかった」ことは変わらない。どんな状況だったとしても。私は従兄弟の代わりに生きることはできないのだから。

だけど、こうは言える。まだ兄さんのことを忘れずに生きているよって。


すごくセンシティブな話になってしまいましたが、とても、とても心に残る作品でした。それではまた次回!

この記事が参加している募集

今日もお読みいただきありがとうございました。いただいたサポートは、東京読書倶楽部の運営費に使わせていただきます。