見出し画像

東京を自転車で旅をする。

 コロナ禍の中、休日がどうもパリッとしない。どこかに出かけようにも気乗りがしない。なにかしようと思いつつ、スマホをいじっているとお昼になっちゃって、家で適当なものを食べて、テレビを見て夕方になっちゃって、みたいな日曜日も少なくない。

 そんな時には、自転車で東京の街へと旅に出る。ロードバイクに乗って出かけることが多いが、別にママチャリだっていい。サドルを少し上げると格段に早く走れるようになる。都内にびっしりある赤いレンタサイクルだって構わない。実はあの自転車はかなり優秀なのだが、その話はまた今度。ヘッダーの写真は、eBikeを手がけるオランダのVanMoofを見にいった時に撮ったもの。

 その日、家を出たのは午前9時前。小銭とスマホとコンデジをポケットに忍ばせ、ロードバイクにまたがり、行き先を決めずにペダルをこぎ出した。

 コロナ禍の都内、休日の朝は車も少なくて走りやすい。東京の街を走っていると、さまざまな景色に出くわす。変化に富んでいてあきない。

 恵比寿から明治通りを東へ。東京タワーをかすめ、増上寺を通り過ぎると、やがて皇居にさしかかる。丸の内のビル群との対比が美しい。サドルの上からは、人混みからは距離をとりながら町の四季を感じることができる。このライドは11月初旬だったが、今なら紅葉で黄色に染まった銀杏並木が都内のあちこちで見られるだろう。

 自転車で走ると、さまざまな発見がある。美味しそうなコーヒー屋、面白そうな本屋、新しくできたビルなどなど、変化のスピードの速い東京だから、いつ走っても必ず何か新しいものに出会える。

 地下鉄の駅で覚える東京は点になるが、自転車で走っていると面になる。身体の感覚がむき出しなせいか、文字通りそれぞれの街を体感することができる。あ、この通りはここに繋がるのか、とか、青山を抜けると、六本木に出て、そのとなりに麻布があって、GoogleMapとは違う、体感地図のようなものができていく。

 上野公園のベンチでコーヒーをすすんで小休止。それから浅草をかすめて、隅田川をわたり、スカイツリーまで。すごく遠いと思うかもしれないが、実は大したことはない。ママチャリでのんびり走っても、23区内ならどこにでも行ける。

 行ってみたい場所があった。前日の夜、たまたま読んだ小池花恵さんの記事で読んだ、ぷっくらとした美味しそうな餃子が気になっていた。

「はい、トマト餃子」とお母さんがカウンターに餃子を置いてくれました。
「餃子の皮のおいしい匂いがする」餃子を頼んで、皮の匂いに注目したのは初めてかもしれない。
しっとりした肉厚の皮から湯気がほわほわとのぼっていきます。お皿を鼻に近づけて、もう一度皮の匂いをかぎました。やっぱり、皮の匂いがたまらない。

こんな文章、書かれたらもういくしかない。葛飾区堀切にある哈爾濱餃子。中国ご出身の老夫婦がおふたりでやっているカウンターだけの小さなお店だ。ググってみるとスカイツリーからは目と鼻の先、はやる気持ちでペダルをふむ。

 お昼少し前にお店に到着。

水餃子、トマト餃子、焼き餃子をぺろっといただきました。これは本当に旨い。その美味しさを体感したい人は、小池さんの書いた名文をぜひ読んでください。絶対に行きたくなっちゃう危険はありますけど。

. 自転車に乗る良いことは、たくさん食べられること。半日も乗れば、簡単に1000キロカロリーくらいは消費する。成人男性の1日の必要カロリーが2500くらいだったと思う。おなかも減るし、良心の呵責なく、パクパク食べられる。そしてよく寝られる。

 STRAVAというアプリをスマホに入れていると、GPSでルートを記録、簡単にログが取れる。無料だしとても便利。

 結局この日は9時前に家を出て、帰ったのは16時ぐらい。自転車で走っているのは3時間ほどだったが、休憩したり、写真を撮ったり、お昼を食べたり、なんだかんだで丸一日楽しんだ。

 自転車に乗って出かければ、スーパーに行くだけじゃもったいない。ちょっとあったかい格好して、サドルにまたがってこぎだせば、冒険の旅に出られます。

この記事が参加している募集

あなたからのサポート、すごくありがたいです。