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ラリィ・ニーヴンの短編集『無常の月』はクセがありすぎる。



今回はハインラインではなく、ラリィ・ニーヴンの『無常の月』をとりあげます。

この短編集『無常の月』のなかで、21世紀の今もウケるかも(たぶん男子ウケに偏りますが)な作品は、『スーパーマンの子孫存続に関する考察』がダントツでしょう。
この短編集は、半分くらいまでは「普通によくある感じのSF」なのですが、途中からファンタジー色が出てきたり、1行で終わる作品など、くだんの「スーパーマン考察」あたりから、どうにも妙なノリの作品が多くなってくるんですよね。
「スーパーマンの考察」は、読んだら誰かに話したくなるひとが続出すると思います。でも、今はなんでもすぐ広範囲に拡散されてしまうので、飲み会のネタにしたいのなら、ネットでの拡散は慎重にしておくことを薦めます。

ちょっとだけバラすと、スーパーマンが“チェリーボーイ”な理由(大きなお世話)は、異星人の彼が地球人の女性と子どもをつくろうとするのは、非常に危険だからなのだそうです。
どのように危険であるのかを、具体的に、かつ懇切丁寧に考察した、ネットの悪ふざけ系のノリというか、まじめにふざけているのか、まぁそういうタイプの作品です。
女子は途中でムッとするか、悪ノリしすぎと呆れるか、いっそドン引きするか大爆笑するか‥‥わたしはちょっと筒井康隆の『最高級有機質肥料』なんかを思いだしましたね。
調べたところ、筒井作品が【ベトナム観光公社(1976)収録】で、こちらは【無常の月(1971)】が初出の作品です。何かその頃、こういうタイプの作品が世界的に流行っていたりしたのでしょうか?
クセがあるので評価は割れると思いますが、読めば誰かに話したくなるのはほぼ確実です。



表題作の『無常の月』は、半世紀前のSFにしては意外と古びてなくて、このタイトルでも内容はどことなくラノベっぽい感じ?
妙に理屈っぽいところもあるのですが、作品全体の雰囲気はSF系ライトノベルな印象です。
とっつきやすく、読みやすいので、ハインライン作品よりもニーヴン作品のほうを推すひとも少なくないかもしれません。

Q 見たこともないほど明るい月を見たら、あなたならどうしますか?
主人公はカノジョに電話して教えてあげます。それからカノジョに会いに行ったり、夜のデートに出かけたりと、一見ラノベふうな展開で進むのですが、じつは主人公は、月の輝きの異常さから世界の終わりを科学的に予測しているのです。そして、そう来たか‥‥なオチが待っています。
短編だからネタバレするので、この先は読んでからのお楽しみということで。


1964年デビューのニーヴンは非常に多くのSF短編・長編を著している。

代表作は『リングワールド』(Ringworld, 1970年)。この作品で1970年度のネビュラ賞 長編小説部門、1971年のローカス賞 長篇部門とヒューゴー賞 長編小説部門を受賞している。また、「中性子星」では1967年のヒューゴー賞 短編小説部門を受賞し、1972年には「無常の月」でも同賞を受賞した。1976年には「太陽系辺境空域」でヒューゴー賞 中編小説部門を受賞した。
ニーヴンは Land of the Lost やアニメ版スタートレックなど様々なSFテレビ番組の脚本を書いている。また、『アウターリミッツ』(1996)では「無常の月」がドラマ化されている。

ニーヴンはロナルド・レーガンが戦略防衛構想(スターウォーズ計画)を立案する際のアドバイザーだった。このことはBBCのドキュメンタリー Pandora's Box で明かされている。

Wikipedia【ラリー・ニーヴン】より一部抜粋して引用


多作で、テレビアニメの脚本を手掛けるなど、ハードSF作家のはずなんだけど、意外と大衆ウケした多才な作家だったのかも?

わたしはニーヴン作品は『リングワールド』も『中性子星』も読んでますが、ハインライン作品と異なり、ニーヴンの作品については、もう特に書くことがありません(汗)
発想はおもしろいし、嫌いじゃないのですが、わたしはやっぱりハインライン贔屓なんですね。
でも、『無常の月』を読めば、きっと「ニーヴンが好き」というひともたくさんいると思うので、この著者の推しや、ほかの作品に対する感想や考察は、別のひとにお任せしようと思います。


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