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とにかくやらなければ!という言葉が示している「やる必要のない」こと



タイトルは、わたしがタイトル用に手を入れてしまったので(ハインライン先生ごめんなさい)、まずは原文をそのまま紹介します。

“われわれ(ぼく)(きみ)は、とにかくやらなければならない‥‥‥という文句は、する必要のない何ごとかを示している。“それはいうまでもない”は、赤信号だ。“もちろん”とは、自分でそれを調べるべきだということだ。これらのささいな決まり文句は、その同類とともに、正しく読まれた場合には、信頼できる水路標識となる。


©️ ロバート・A・ハインライン著『愛に時間を②』より引用


上記はハインライン作品にしばしば登場するラザルス・ロングというキャラクターの、作品中での覚え書きということになっています。

【ラザルス・ロングについて】

『愛に時間を』(あいにじかんを、英原題:Time Enough for Love )はロバート・A・ハインラインによるSF小説。『メトセラの子ら』に登場した4,000年以上を生きる長命種の人間ハワード・ファミリーの最長老ラザルス・ロングが語る性愛(エロス)と聖愛(アガペー)の物語である。1973年に出版され、翌1974年にネビュラ賞 長編小説部門とヒューゴー賞 長編小説部門にノミネートされた。日本語版は1978年に矢野徹訳で出版された。

Wikipediaより引用


最長老のラザルス氏は、ぶっちゃけ不老不死なのですが、それは初期の段階では、長命種であるがゆえに短命種よりも生存に適していたからです。
つまり、うっかり事故や大怪我なんかで死んでしまうような選択をする代わりに、彼には怪我をしたり病気になることをうまく回避するような、抜け目ない選択が可能な判断力が備わっているという意味です。

とにかく最長老にまでなってしまったら、ふつうの人間ではいられません。
YouTuberやインスタグラマーみたいに情報を発信しないだけで、一般人なんだけど、知ってる人はみんな知ってる「ある種の有名人」なわけですから。

彼は長命種のなかではダントツの知名度がある反面、人類の大多数である短命種にとっては、取るに足らない人物のままであり続けました。
そうでなければならないのです。理由は言わなくても想像つきますよね?

自分はまわりの人間とは異なる存在だと自覚しながら、神経症にもならずに図太く生きてゆけるのはどんな人間だと思いますか?
短命種だけでなく、長命種のなかにあっても、彼はほかの人々とは異なる最長老という存在です。
初期には長命種も不死ではないので、誰よりも長生きしている彼の秘密を分け与えてほしいと望む者が出てきたり、その段階を過ぎると、今度はまわりが最長老の彼をどうあっても生かしておこうとするので、死にたくなっても死なせてもらえません。

長命種であるハワード・ファミリーの人々は、長く生き続けるために「若返り処置」という手法を編み出していて、せっかく気が遠くなるような時間をかけて計算ずくの老衰で死にかけていたのに、目覚めてみたら‥‥‥なんて事態にもなっちゃうんですよね。



前の記事でタイトルに引用した「ひとは他人の経験からは何も学ばない…」の言葉は、それだけの歳月を生き抜いてきたラザルスの言葉(という設定)なのです。
出典がどの本だったのかわからないまま、探してはいるのですが、まだ見つけられません。
そこそこアクセスのある記事のようだし、それについてもっと詳しく書きたいのですが、なんとかして見つけるのでもう少し時間をください。
待ってられないひとは、ここに引用したデータをもとにご自分で探していただくか、もし出典をご存じのかたがあれば教えてくださると助かります。


今回のタイトルで引用した「とにかくやらなければ…」も、途方もない歳月を生き抜いてきたラザルスの経験から出てきた言葉(という設定)なのです。

「われわれはやらなければならないという言葉が示している、する必要がない何ごとか」とは、現代日本の『満員電車での通勤』や『全員を出席させることが目的の会議』なんかがそうですよね。
ほかにもっと効率的なやり方があるのに、何者かが非効率的なほうを選んで従わせようとしているわけで、これこそまさしくやらなくていいことだと思いませんか?

コロナ禍の数少ないメリットで、ようやく満員電車での通勤から解放されたのに、その後またしても満員電車での通勤を余儀なくされている人々が今もたくさんいるのは何故だと思いますか?
それが必要だと考える者たちの、そのほうが「社員を管理しやすいから」という馬鹿げた理由からなのです。
満員電車で定刻に出勤してタイムカードを押すことは、社員の安全や仕事を効率的にすすめることよりも重要だと考える企業や経営者が、この国にはまだまだたくさんのさばっているようです。

しかしそれでも新型コロナ以前は、この件に関しては疑問をもつことすら許されない空気がありました。
その空気はまだなくなってはいませんが、満員電車で通勤しなくてよくなった体験を語ったり、コロナ禍で浮き彫りになったおかしな習慣や要求について、さまざまなやり方で発信する人々が増えているのは良い傾向でしょう。

ならばアフターコロナの世界は変わるでしょうか?
すぐには無理でも、わたしは変わらざるをえなくなるだろうと思っています。
ある部分では、と、但し書きをつけてですが。
SFと経済を取り上げた記事のなかでも書いたけれど、こと経済が関わってくると、一気に変革というふうにはいかないのが現状のようです。

だから今のところは、あまり悲観も楽観もせず、この事態が過ぎ去るのを待つぐらいしかないのですが、それでも確実に「いますぐやったほうがいい」ことがあります。

思えばGO TO〜政策は大失敗でした。
経済を救うという大義名分と効果以前に、それを利用したり、利用しようと考えた者たち全員に、とんでもなくマズい意識を植え付けてしまったからです。

少し前の観光地や、2度めの緊急事態宣言下の街のインタビューで、「せっかくの機会だから」とか「今しかないから」とか「もう予定を組んでいたから」というたぐいの今そこにいる理由を聞かなかったひとはいませんよね?
すなわちそれが「外出自粛を求められようとも出歩く口実や言い訳」として当たり前に使われているわけです。

さらに悪いことに、現政権がなかなかGO TO〜をやめようとせず、もうどうにもならない瀬戸際まで「やめようとは考えていません」などと愚かな発信を続けたせいで、この口実は使えるぞと考える国民の意識をさらにあおったのです。

感染拡大中の都心から実家のある他県に行くことは諦めるかわりに、だから「久しぶりに会う友人たちと気をつけて食事する」とか「とにかく消毒だけには気をつけてディズニーでストレス発散」といった言い訳が、この期に及んでも免罪符のごとくいまだにまかり通っているわけです。

誰もがそれを思いとどまっていれば、もう少し事態は違ったはずなのに、感染拡大が予想されていた秋から冬に向かってもなお政府がGO TO〜を奨励し、国民もこの機会を利用しなければと躍起になりました。
そのノリで年末を迎えたわけですから感染拡大して当然で、12月になってあわてて自粛を呼びかけても、結構な人数で集まって忘年会やクリスマスをやらかす国民が出るだろうことぐらい予測できたはずなんですけどね。

だって、彼らはもう予定を立てて予約もしていたし、つい最近まで「どんどん行きなさい」ってノリだったわけで、ほとんどのひとが「じゃあこれで最後にするから」と最後の飲み会を楽しんでから、残りはキャンセルして我慢しようと考えたわけです。

実際そうなりました。
GO TO割引きがなくなったとたんに旅行のキャンセルが出まくった事実からして、感染拡大は事態を甘くみすぎていた政府の不手際による人災だったといっても過言ではないぐらいです。
イギリスで9月には発見されていた感染力の強い変異種への対策も、GO TO〜優先で遅れに遅らせた挙句、なかなか入国制限に至らなかったわけですから、これで感染が拡大していなければそっちのほうが不思議なくらいです。

だからもしも今、われわれにまだできることがあるとしたら、とにかく外食や外出には誰も誘わず、誘いは断る。これしかありません。
まずはそこからで、冷静に考えられる人間が、無謀なことをしようとしている人々の行動を止めるしかないのです。

これには「ちょっとぐらい大丈夫だから」と、易きに流されやすい両親や祖父母に対して、小中学生がキッパリと「そんな甘い考えじゃダメだ!」というようなことも含まれます。
もし、彼らの口からそういう正論が飛びだしたら、生意気いうなと叱ったりしないでください。
打算やごまかしを嫌悪する純粋な若い世代が行動を起こすのでなければ、計算高くてズルいおとなにはおそらく出来っこありません。

むろん若すぎる彼らだけでは、老い先短いじじばばの頼みだからだの、滅多にまとまった休みがとれないお父さんや、いいかげんストレスがたまっているお母さんの提案や意見に押し切られてしまうでしょう。
でも、そういうふうに流されて、儲け優先の企業論理に押し切られてきたからこそ、この世界はいま地球温暖化が原因の災害や人災に苦しめられているのではないのですか?

グレタさんに「子供は学校へ行って勉強していろ」と言い続けて、ここまでずっとやりたい放題やったきたおとなたちが、コロナ禍だからといって、直ちに考えも行動も改める…そんなに簡単に変われるわけがありません。
そうはならなかったから、世界じゅうで感染が広がり、今なおコロナの感染拡大は続いているのです。

もしこれを一理あるとか、もっともだと思うなら、「わたしは誰も誘わないし、誘いは断る」を、どうかご自分の意見として発信してください。
これを読んでくれたなかの何人かが、自分の意見と合わせてそれを発信してくれたら…と思いながらこれを書きました。

もし可能であれば、これ以上の感染拡大の阻止とコロナ収束のために、「誘わない、断る」の意見の拡散にご協力ください。
よろしくお願いします。

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