見出し画像

イシュードリブンな方法を高速で回せ!

本書がすすめる問題解決技法の流れ

「本当に解く価値のある問題」を「イシュー(Issue)」と定義し,それらを実際に解く前に見極めるイシュードリブンな方法(第1章)から始める.そのイシューを分解したサブイシューを解決しうる仮説(Hypothesis)を考える仮説ドリブンな方法を通して,ストーリーライン(第2章),より視覚的な絵コンテを作る(第3章).ここまで考えて,ようやく実際の分析を始める(第5章).最後にストーリーライン,絵コンテ,それらの分析結果をまとめて,人に伝える(第6章).

イシュードリブンな方法とは??

知的生産性とは「投下した労力や時間(インプット)あたりの成果(アウトプット)」.

成果(アウトプット)とは,プロフェッショナルとして意味のある仕事(バリューのある仕事)である.例えば研究者ならインパクトのある論文だ.

バリューのある仕事(=成果)とは,自分が置かれた局面でその問題に答えを出す必要性が高く(イシュー度が高い),その問題に対し明確に答えを出すことができた(解の質が高い)仕事である.

「やってみないとわからない」精神で,とにかく大量の仕事をこなして,解の質を上げようとしても,イシュー度が低いとバリューが低くなり,成果につながらない!だから知的生産性が低い!

つまり,取り組む問題が本当に解く価値のある問題(つまりイシュー)でないと,結局,時間や労力を無駄にしてしまう!

本書では,これを努力と根性があれば報われると勘違いした「犬の道」と呼び,それをやめよと説く.

その代わり,著者が勧める方法が,イシュードリブンな方法である.

イシューを見極めるために(1章)

慣れないうちは,まずは指導教官や先輩に聞け!

これは当たり前のことかもしれないが,指導教官とのコミュニケーションのうちに「イシューの言語化と確認」を意識的にやるべきだなと感じた.

強引にでも前倒しで,イシューとそれに対する仮説を考え,しっかり言語化する!

逆に言語化できないということは,イシューの見極め,仮説の立て方,情報収集が甘い.言語化の3つのコツとして,1.主語と動詞を入れる(英語でやればよし).2.whyよりwhere/what/how(これはイシュー分解にも使える).3.比較表現を入れる(「比較こそ分析」).

一言で「本当に解く価値のある問題=イシュー」と言ったが,科学でいう「根本に関わる共通の未解決問題」と捉えることもあれば,受け手と送り手(ある限られた範囲)によってイシューの捉え方は異なることもある.

「良いイシューの3つの条件」

1.本質的な選択肢

その答えがその後の意思決定に影響を与えうるもの,本当に今それに答えを出す必要があるもの

2.深い仮説がある

常識を覆すような洞察を持つもの.新しい構造で現象を説明するもの.

人の理解は2つ以上の異なる情報に新しいつながりを発見すること=構造的理解

構造的理解のための4パターン(共通性,関係性,グルーピング,ルール)の発見

3.答えを出せる

現在の自分の状況・利用可能なテクノロジーで答えを出すことができるもの.

以上を無理やりまとめて,イシューの定義を再解釈すると...

これまで白黒はっきりしておらず,その答えが将来の意思決定や現象の構造的理解を促し,自分が本当に答えを出す必要があり,かつ利用可能な技術で答えがしっかり出すことができる問題.

最後に,著者が語るイシュー見極めの理想は,誰もが答えを出すべきだと思ってるが,手のつけようのない問題に対し,自分の手法なら答えを出せるという視覚的なイシューを発見すること.

世の中がなんと言おうと.自分だけの視点で答えを出せる可能性を常に模索せよ.

イシュー特定のための情報収集

時間をかけすぎずに大枠の情報を集め,対象の実体についての肌感覚をもつ!

自分らしいイシューの見立てを持つための情報収集の3つのコツ

1.一次情報に触れる

研究を実際にやった人にカンファレンスで実際に質問してみることとか,自分の研究で言えば,実験の現場がまさにそうなのかなと.

2.問題意識・フレームワーク

先行研究.これまでの研究の流れ(問題意識とその解決法)のなかで,自分の研究を位置付けることの重要性.

3.集めすぎない・知りすぎない(ざっくりやる)

論文の構成をうまくつかって,ざっと読み漁る.知り過ぎてしまうという状況が果たして大学院生のレベルでやってくるのかはわからないが.

イシュー特定の5つのアプローチ

上記のイシューの見極め方:良いイシューの3条件に従い,本質的な分岐点を探し,構造的な理解ができないか試み,現在信じられている常識の否定ができないか検討した,集めすぎない程度に一次情報に触れた,でイシューが見つからないとき

1.変数を削る

2.視覚化する

3.最終形からたどる

4.だから何?を繰り返す

5.極端な例を考える

なんか,物理や数学の勉強するときとアプローチが似ている気がするな!

イシューを分解し,ストーリラインを作る(2章)

解の質と生産性を高める=ストーリーラインと絵コンテ作り=イシュー分析

イシューを分解することで,イシューの構造(サブイシュー)とその優先順位を明らかにし,それに沿った分析のイメージを作ることができる.

最初はイシュー検討の範囲と内容を明確にするために使い,次の段階では,進捗の管理やボトルネックを見極めるために使い,そして,最終段階では,論文やプレゼンの仕上げに使い,全体のサマリーとなる.

Step1: 答えの出せる最小のイシューにダブりもモレもなく(MECE: Mutually Exclusive & Collectively Exhaustive)分解する.

まず,前述のイシューの見極め方はイシューの分解にも役に立つことが多い

過去の事例からの共通項に加えて,自分の視点(これはどうなんだろうか)を加えた分解の型を持つようにし,分解したサブイシューそれぞれに仮説を立てる.

Step2: 分解したイシューに基づいて,ストーリーラインを作る

どのような順番でサブイシューを並べれば,人を納得させられるかを考え,「仮説が全て正しいとすれば」という前提でストーリーラインを作る.

1.イシューの構造,2,サブイシューの答え,3.統合して意味合いを整理.

論理的に検証するストーリーラインを作るための2つのピラミッド型

1.WHYの並び立て

結論について,理由や具体的なやり方を並列に並べる.結論が先頭にくる.

2.空・雨・傘

課題の確認(空),課題の深掘り(雨),結論(傘).結論が最後にくる.

ストーリーラインを絵コンテにする(3章)

「最終的に伝えるメッセージ=イシューの仮説が証明されたもの」から考える!

絵コンテ作りとは,自分ならどういう分析イメージ(個々のグラフや図表イメージ)があれば納得するかを考え,ストーリーラインに沿って分析イメージを前倒しで作ること.

もっと簡単にいうと,絵コンテとは,ストーリーラインの個々のサブイシューに対して,必要な分析や検証のイメージを実際の分析前にまとめたもの

どんな分析イメージが欲しいのかを起点に大胆に分析イメージを作ることがコツ!

分析とは比較すること

Step1: 分析の枠組みづくり

分析の縦と横の広がり:軸の整理が重要.

どのような値を,どのような軸で,どのように比較するかを具体的に設計する.

それぞれがイシューに答えを出すことに直結している必要がある.

定量分析の3つの型:比較,構成,変化

3つの型を表現するグラフは多様で,それらの組み合わせの場合もある.

Step2: 分析イメージの具体化

具体的な数値を入れてみて,分析イメージの具体化をする.

分析における意味合い=比較による結果の違い(どのような差,変化,パターンがあるか)をはっきりさせる必要がある.

Step3: 分析イメージの取得方法の提示

具体的な分析手法でどんな比較を実現するか,どんな情報源から情報を得るのかを考える.

既存の手法の限界に踏み込む感じが出てきたら,イシューから始めるという考えで分析の設計ができてる可能性が高い.

既存の手法の意義と限界について理解しておくこと(情報収集)が役に立つ.だから自分の研究分野で鍵となる手法は一通り知っておいた方が良い.仕事や研究を始めた最初の5年や10年はなるべく広い経験とスキルの育成に励むこと.

実際の分析を始める(4章)

まず,基本となる前提,鍵となる洞察から分析を始める.

重要なことにできるかぎり保険をかけておく,ここが崩れたら話にならない前提を二重にも三重にも検証する仕掛けを作る.

分析結果がどちらに転んでも,意味合いが明確になるようにする

答えありきでの検証(仮説の立証に有利な情報ばかりを並べる)ではなく,フェアな姿勢(矛盾や無理が生じることを証明)で検証をする

この検証の部分は「統計学」が決着をつけられると思う.

Trouble 1: 欲しい数字や証明が出ない

すでにあるデータを構造化したり,実際に一次情報を入手したり,複数のアプローチから粗い推定を行ってみる.

Trouble 2: 自分の知識では埒が明かない

人に聴きまくること!自分の周りに聴きまくれる相手がいることはスキルの一部とみる.

聴きまくれないときは,期限を決めてそれまでにできなければ見切りをつける(固執しないこと).

伝えるものをまとめる(5章)

どのような状態になったらこのプロジェクトを終わりとするのかを具体的なイメージを描く.

聞き手が語り手と同じ問題意識を持ち,同じように納得し,同じように興奮してくれるの理想.

1.意味のある課題を取り扱っていることを理解してもらう

2.最終的なメッセージを理解してもらう

3.メッセージに納得して,行動に移してもらう

聞き手は完全に無知で高度な知性を有すると想定せよ.

ストーリーラインを磨く3つのプロセス

1.論理構造を確認する

構造がすっきり整理されているか.前提が崩れていないか.

2.流れを磨く

流れ,締まりが悪いところはないか.補強は足りてるか.リハーサルしながら磨くのがおすすめ.

3.エレベーターピッチに備える

結論とそれの根拠を端的に説明できるか.

優れたスライドの3条件

1スライド1メッセージの徹底:徹底的に言語化せよ.

縦と横の比較軸を磨く:データの濁り(曖昧さ)がどこから来るかしっかり見極め,フェアな比較をする.

メッセージと分析表現を揃える:この分析表現,サポートで本当にメッセージを検証できるのかをチェックする.

最後に,プロフェッショナルとして意識したいこと

コンプリートワークをせよ:結果を生み出すことに対するコミットメントの強さ

プロフェッショナルの世界では,努力は評価されず,結果が評価される.

結果に対する強い自己ドライブがないと仕事を楽しめない!














この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?