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言葉でつなぎ止められた私 -「つながるための言葉」を読んで-

コピーライターの勝浦雅彦さん(Twitternote)の著書、つながるための言葉~「伝わらない」は当たり前~を読みました。

昨日、アマゾンレビューに投稿した内容に加筆修正して、感想と共に、私に生じた変化についてご紹介したいと思います。

この本を読む前は、コピーライターの人が書いた本だから、もっと言葉の使い方やテクニカルな本だと思っていました。

結果的に、良い意味で期待を裏切られました。
著者の勝浦さんの、一人の会社員としての物語に、共感する部分が多々ありました。念願の部署に行っても仕事がうまくいかなかったり、人事異動で不慣れな仕事に苦労したりと、他人事とは思えない経験から紡ぎ出された「言葉」。

堅苦しくなく、説教臭く無く、それでいてワザを教えてくれるこの本は、私の毎日往復3時間の通勤電車の時間を、あっという間に感じさせてくれました。

私事で恐縮ですが、この本を読んでいる間に、家族が命に関わる大怪我をしました。
おかげさまで一命は取り留めたものの、仕事も何も手につかず、ただ心配する時間を過ごしていました。

一刻をあらそう2日間の変遷は次の通りです。
大怪我→救急搬送→入院1院目→不可解な退院→即救急再搬送→緊急手術→集中治療室(イマココ)

2院目での緊急手術前の救急搬送時、コロナ禍で受け入れ先病院が決まるまでに、2時間半かかりました。救急救命士の方は、全力を挙げてくださいました。緊急手術となった結果から考えると、出来うる中で最善の方法だったように思います。

おかげさまで、緊急手術も無事に成功し、回復に向かっています。首の怪我のため、麻痺が残る可能性があるそうです。ひっきりなしに救急車が来るERの皆さんも、主治医の先生も、検査や治療の対応はもとより、患者とその家族への配慮と対応が素晴らしいものでした。

特に主治医の先生は、手術が終わったときと、麻酔から覚めたときの2回、電話連絡をくださいました。私たちに容体を伝えた後、次の言葉をくださいました。

「私が出来ることは全てさせていただきました。ご家族皆さま、お疲れが出ませんように」

家族全員、この言葉にどのくらい救われたことでしょう。日が変わるくらいの深夜、大手術で先生がお疲れのはずなのに。
命の恩人から、私たち患者の家族を労う言葉をいただけるとは。
先生にな、「本当にお疲れ様でした」とこちらからも涙を流しながらお礼を申し上げたのでした。
私たちが信頼して、命を預けられると思えるひと言でした。

さて、本のお話に戻ります。
とにかく、心配と不安で、何も手につかないけれど、何かしていないと落ち着かない。
そんな時、カバンに入っていたこの勝浦さんの黄色い本をとりあえず手に取って、パラパラとめくってみたのでした。

この本で語られている、勝浦さんのユーモアと愛情に包まれた言葉には、辛い現実を目の当たりにし、何も受け入れる余地のない私のメンタルにも、じわじわと沁みて、久しぶりに辛い現実から離れて、没頭する時間をくれました。

「つながり合うことは、人間の本能である」
という言葉が、自分の心の深いところにスッと入っていきました。

大怪我の直接的な原因ではないのですが、この事態が生じた背景には、長年の人間関係の惰性による、コミュニケーション不足があったのではないかと、家族皆で反省していたところでした。

本人はもちろん、家族にとっても非常に厳しい現実ではありますが、勝浦さんの本との出会いも含め、これからは、私たち家族が愛情のこもった言葉を掛け合い、新たなつながりをつくる一歩を踏み出すきっかけにしたいと考えています。

あぁ、タイムマシンがあれば。
家族が怪我をする前に戻りたい。
何度思ったことでしょう。

しかし、この本の第10章にある言葉に、勇気づけられました。
「失われた時代を懐かしんでばかりいることは、今の時間を失うことなのだと。」
「私たちは戻れないのではない、戻らないのです」

主治医の先生の言葉、そして勝浦さんの本に書かれた言葉に、折れそうな心をつなぎ止めていただきました。

様々な苦難を乗り越え、前を向くための言葉を見つけたいと考えている全ての方に、ぜひ読んでいただけたらと思います。

今回も私のnoteをお読みいただき、ありがとうございました。

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