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記憶の糸

古い記憶を呼び起こそうとする時
まず音が甦る。
パコンパコンと軽快なリズムで
球が行き交うその音。
そして当時の食べ物。
部活の帰り、駅前で立ち食いした
みかんチョというアイスバーと
瓶入りチェリオ。
それから映像に辿り着く。
ペアで乱打をしてるときの空の高さ。
纏わりつく湿った空気。
気の合うメンバーと過ごし
他愛ない会話で笑い転げた日々。
七分袖のシャツブラウスの袖を更に
浜折り(当時ちょっと流行ってた)にし
スカートは裾を長めに下ろす。
教科書も入らないような薄い学生鞄の他に
スヌーピーのトートバッグを一緒に持つのが
お気に入りだった。

当時影響を受けた人は沢山いた。
好みの曲を作り唄うアーティスト
憧れの先生(好きな割にその教科の成績は
情けない程悪かった😅)
ダンスや絵が上手い友達
悩みをついこぼしてしまう親友
勿論毎日は楽しいことばかりではなく
門限や家族に縛られたり不自由も感じてて
将来の不安もあって。
自分には何の才能もないとか
そもそも才能って何?とか。
どうして自分ばっかりこんな些末な事に
いちいち傷付いたり、躓いたりするのか
と苛立ちと諦めを繰り返す日々。

でも何かの折に心の奥の柔らかい所に
そっと触れられる出来事もあったりした。
それはさりげない誰かの言葉だったり
ふいに流れてきた音楽だったり
友達や他の誰かが描いた絵だったり
頑張ってる人の光る汗だったりした。
自分に何かの才能があるにしても、
ないにしても、私は私の面白いを
探そうと思った。
私が自分の面白いを続けていれば
そのうち誰かの心の奥に小石をコツンと
当てることは出来ないだろうかと。
まぁ自分の事すら分からないのに
他人の何が分かるんだって
ことなんですがね😒
ホント音楽や絵で人に影響を与えるって
凄いな。それでもう少し頑張ろうとか
考え方がちょっと変わったりするんだから。

そんなことを考えてた頃の記憶の糸の端を
今、手繰ろうとしても掴めない。
あの頃の面白いはその後どーなった?
誰かの心をノックするどころか
ノーサイドになっていた事にも
気づかなかった。

まだ間に合うのだろうか
私の面白いはもう一度
仕切り直すことは
可能なのか。

空は高く青い。
流れる雲はその解を
知っているだろうか。


#創作大賞2023

#エッセイ部門

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