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実録!インハウスデザイン部門の作り方【前半】

以前は「インハウスデザイナーに必要なこと、心がけ」について書きました。今回は最初の1人となるインハウスデザイナーを育成したいな、と考えている経営者向けて。私が最初の1人として入社してから退職する13年の間に、どうインハウスデザイナー部署ができて、1人→4人体制になったかを時系列で整理してみようと思います。

実録!地方建設会社のインハウスデザイン部門の作り方です。


はじめに私が入社した会社はどんな会社だったのか、を記しておきます。

  • 岩手県の中小ゼネコン

  • 入社時100人弱→13年かけて約260人に拡大

  • 女性社員私で5人目→13年かけて約60人に拡大

  • 建築、土木の入札中心→民間営業(企業、住宅、リフォーム、不動産)が成長

  • 経営者は先進的な視点を持ち合わせた人

官公庁の仕事中心とした建築・土木の入札型ビジネスモデルから、企業、個人を相手にする住宅、リフォーム、一般建築にシフトしていこう、となったタイミング。BtoBからBtoCのタイミングで、チラシを作ったりプレゼン資料を作れる専任が内部にいた方がこれからはいいでしょう、ということで当時「広報・営業企画」という名で募集が出ており私(大学では空間デザイン専攻)と広告代理店出身の男性の2人が中途入社しました。

育てるなら未経験の新人の方が良い デザイナーの前に社員

後から聞きましたが、営業企画・広報の応募には100名くらいの応募があったそう。なぜ私だったのか?社長に聞いたところ「一番若かったから」だそうです。今までにない職種を社内で作るには、経験者を選びがちです。しかし、新入社員の方が正直変な考え方の癖がついていないので育成しやすいです。技術を求めるなら外注の方がコスト安。〇〇教室のようにスキルアップの教材はいくらでもあります。しかも今なんてYouTubeで無料でソフトの使い方を習得もできます。インハウスデザイナーの前に「社員」を採用するという視点を忘れてはいけません。私もそれにはなるほど!と思いました。正解がないのだから共に作り上げていく、方が長い目で見るとストレスが少ないかもしれません。


入社後しばらくはデザインに専念

入社直後の仕事はイラストレーターで住宅事業部のチラシ作り。建築営業のプレゼン資料(パワーポイント)、法人リフォームのプレゼン資料(手書きパース含む)を作っていました。本社移転のタイミングでは社屋1Fをショールームにするためショールームの施設名を考え、ロゴデザイン、販促ツールデザイン、掲示物デザインと全て1人で担当しました。役割分担は年齢と社会人経験が私より上なので、広告代理店出身の彼が営業と打ち合わせしたり会議に出席。私はデザインがメインでした。

リーマンショックの人員整理と私の業務拡大・評価方法

しかしリーマンショックで人員整理のタイミングがありました。相方が退職し、私は入社4年目あたりで1人に…。会議出席、協力会社とのやりとりをしていくれていた相方がいなくなったことでそこも私の業務に。相方がいなくなった不安はありましたが、代わりに広い視野と経験を手に入れました。見積もりやスケジュール、企画とデザイン前後の部分にも関わるようになったのはこの頃でした。

一方所属は入社してからずっと建築営業部。これはしばらく続きます。組織なので誰かが評価管理をしないといけないのでそりゃそうなります。最初の1人なのでデザインの良し悪しを評価できる上司はいません。かといって社長直属だと、社長が私の有給申請や旅費精算など細々したことにハンコを押すのか?管理するのか?という問題が発生します。そうなると組織図上はどこかに属せざる負えません。なので、所属に関しては特に不満はありませんでした。建築営業部は会社の稼ぎ頭部署だったので、全社的な相対評価も自然と高く…賞与に反映されるので、ここは正直ラッキーと思っていたのは内緒です。

数値化する会社でしたが当時の私の目標は「いつまでに何を完成させる、整備する」といったもの。あとは面談で評価を決めてもらっていました。全社的に見ると特例の評価方法でしたが、これは社長が役員に「新しいことだし誰もデザインは評価できないでしょ?だからできるだけ加藤は対話型で評価を」と言ってくれてたいたようです。これも大分後から知ったのですが、ありがたいことだったと感謝です。ガチガチの評価なら間違いなく辞めていたと思います。

脱1人時代!ついに新たなパートナーをゲット

しばらくして、新入社員を私の下に付ける、と社長から言われ国立大教育学部美術コース出身の子が入社しました。この時点でも所属は建築営業部です。しかし住宅、リフォーム、会社概要などの会社全体の制作物、採用活動なども手広く関わっていました。絵は描けるけどイラストレーターはいじったことがない、ということでまずはソフトを覚えるため入社後は私の作ったチラシをイラストレーターで模写することから始めました。

同時に私は、自分ルールでこなしてきた仕事を整理するきっかけをもらいました。何をやらせるか、マニュアル化・明文化してどう教えるか。人に教えることで自分も成長することを感じました。どんな仕事でも後輩を持つことは大切なことです。

会社の外に出て視野を広げる

ちょうど東日本大震災後に2人体制になったので、彼女のインターン時期から入社後しばらくは制作物を作ってもいましたが、復興イベントや震災特番の撮影立ち会いなど外に出る機会がグッと増加。仮設住宅建設に携わった団地では年に2回住民交流会を企画。イベント企画、運営もこの時期には担当するようになっていました。パソコンと睨めっこする日々から、一気に外へ。社内のイベント、見学会をプロデュースすることはこの頃から始まりました。

引き続き広告代理店、メディア、印刷屋さんとの打ち合わせも私の仕事になっていました。自然と企画を作り、形にするため社長、社内の人との会話も増えました。今でも「デザインは情報整理である」と私は思っていますが、そう思い始めたのはこの辺りから。あれこれ要望が出たり、日によって社長も言ってることが違う。そんなことはザラにある中でどう形にしていくか?集められるだけ情報を集めてまず整理。いきなりデザインには入れません。

デザインは情報整理 理由が必要だ

赤か青か。私の好き嫌いで決めるのではなく、何を伝えたいのか?によって選ぶべきです。決められるまで情報を集め、自分が腑に落ちないと色一つ決められない。理由がないとデザインは主観で手戻りが発生します。忙しかったこともあり「無駄なデザインをしたくない!」と切に思っていたのがよかったかもしれません。また後輩になんとなく…では教えられない。そんな環境が幸いし、インハウスデザイナーは個人の思いを形にするものではなく、会社の思いを形にしたものでなければならない。「デザインには理由が必要だ!」というの身をもって感じていました。


この後2人がなんと3人体制に。あれよあれよと4人体制までいきます。そこは次回後編で。

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