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もうロマンスは無いけれど

まだ6月前半だというのに、真夏日である。どうかしている。どうかしちゃいそうだ。

もはや毎年更新し続けている気がする過去最高気温や歴史的な酷暑の記録だけれど、さすがにこのペースのままでいったらまずいのではないだろうかと危機感を持つレベルになっている。

近いうちに夏は40℃を超える国になってしまうのかもしれない。

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10代後半から20代あたりまでは、夏がとにかく好きだった。雪国生まれの私にとって、薄着で出歩ける季節は貴重だった。

特に、夏の夜は、何か起こるわけもないのに何かが起こるんじゃないかというソワソワした空気を至る所に感じていた。
実際は、そんな空気などは無く、私がソワソワしていただけなんだと思う。

それでも、ノリで夜中に遊びに繰り出したり、宿を取ったのに朝まで遊び歩いてシャワーだけ浴びて寝不足のままチェックアウトをしたり、結果的に落ち着きのない過ごし方をしていた。

『タイヨウのうた』みたいな(世代ピンポイント狙い)、夜にしか会えない恋といったドラマチックな出会いもあるかもしれないなんて心の片隅で妄想したこともあったけど、私の恋した人はみんな夜でも昼でもいつでも会えた。てゆうか、絶対こっちの方がいいのにね。

とにかく、あの頃の夏の夜は、なんだかいつも浮足立っていた。

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ふと気づくと、夏にソワソワしなくなっていた。
結婚もしたことだし、ドラマチックな恋愛も一夜のロマンスも必要なくなった。
友だちたちにも子供が出来て、ノリで夜中に集まることも難しくなった。

でも、不思議と寂しさはない。

今は今で、楽しいことや好きなことがちゃんとある。
季節の、時間の、過ごし方が少し変わっただけ。

ただ。
何もしていないのにじっとりと肌が汗ばむ頃になると、時折フラッシュのように、かつての夏が私のなかで一瞬弾ける。

今年も早めに夏が来そうだ。

ソワソワすることはなくなっても、あの頃ほど好きじゃなくなっても、やっぱり夏は、どこか楽しみ。

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