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福島・飯坂温泉漫遊記

飯坂温泉は、宮城県の鳴子温泉、秋保温泉と合わせて奥州三名湯に数えられる温泉地。

福島市内で友人たちと楽しい夜を過ごした翌日、私は自分の休暇としてここで1泊する予定だったけれど、友人たちも観光を兼ねて行ってみたいということになり、急遽みんなで行くことに。

福島駅からは、在来線でおよそ20分ちょっと。

福島市民にとっても日帰りの温泉地として人気らしく、福島の友人も後から車で合流することとなった。

移動はレトロな「いい電」で

福島駅から公共交通機関で向かう場合は、福島交通飯坂線・通称「いい電」を使うのがよさそう。

ちなみに完全なる偶然だけど、今年「いい電」は開業100周年というとんでもないアニバーサリーイヤーだったらしく、さらに私たちがたまたま乗った車両は、どうやら周年を祝して復刻となった昭和から平成初期にかけて走っていたモデルだったらしい。

たまたまレトロ車両に!

この色合いって、平成生まれの私にとっても何故かめちゃくちゃ懐かしさがある。

社内も温泉感が溢れていて楽しい
看板もフォントもたまらない雰囲気

私は、鉄道オタクと呼べるほどじゃないけれど、鉄道や飛行機などの乗り物が博物館に行くレベルで好きなので、「いい電」に乗るのも楽しみの1つだったんだけど、みんなで乗るとなお楽しい。

「いい電」は、住宅街や畑の間、大きな道路の脇を走っていて、車窓の景色もどことなく江ノ電に似た雰囲気があった。

いずれの駅も、綺麗に手入れされながらも”昔ながら”と呼べるレトロ感をふんだんに残していて、一駅一駅が楽しかった。

歴史ある建物が多く残る温泉街

温泉駅に着いて階段を上がると、そこからすぐに温泉街は始まる。

というか、温泉街のほぼ中心に駅がある感じ。
あまり詳しい方ではないけど、なんとなく、ここまで温泉街の近くにある駅も珍しい気がする。

落ち着きのある街並みを歩くと、10分もかからないうちにメイン通りのような場所に到着する。

こじんまりとしつつも明らかに威厳のある歴史的な建物の宿が並ぶ様子は、この温泉の歴史に詳しくなくとも圧倒されてしまうオーラがある。

こちらは江戸館

こちらは、なかでも有名な「なかむらや」さん。
白壁の土蔵造りが珍しい木造三階建ての建物は、江戸末期建築の江戸館、明治時代中期建築の明治館の二棟がある。

いずれも平成10年には国登録有形文化財に指定されているけれど、現役のお宿で、バリバリ宿泊できる。

鯖湖神社を目の前に構えるの「ほりえや」さんも、創業明治15年からの外観をそのままに残す木造三階建ての歴史的なお宿。

新旧の宿が立ち並んでいるが、いずれも景観にとてもマッチしていて、統一感のある落ち着いた街並みを楽しむことができる。

こちらが正門

飯坂温泉の大きな観光スポットにもなっている旧堀切邸。
こちらは建物内含め見学無料で、敷地内には足湯・手湯を楽しめる憩いの場もあり、観光の要所となっていた。

日本最古の公衆浴場

飯坂温泉というと、奥州三名湯に並んで有名なのが、鯖湖湯である。

かの松尾芭蕉も奥の細道の途中に立ち寄ったらしい。ちょっとそこまでいくと逆に時間感覚がわからなくなるけど。

町の中には共同浴場なるものが数多く点在し、おそらく現在9つあるうちで最も観光的に有名なのがこの鯖湖湯。

面構えが違う…!

1993年(平成5年)に改築されるまで、ながらく日本最古の木造共同浴場だったらしいが、今でもバリバリ趣がある。

ちなみに1つを除いて入浴料は200円。

浴場は撮影禁止だったので残念ながらお見せできないが、脱衣所と風呂場が仕切られずに地続きになっている昔ながらのスタイル。もはやこれは地元にこの様式が無いと伝わらないかもしれない。

ちなみに飯坂温泉は番付が出されるほど源泉が熱いのでも有名で、友人たちと旅の思い出に入ってみたが、激熱だった。

たぶん、浴槽温度で47℃とか?源泉温度は確か50℃以上。

風呂場の注意書きに「体に悪いので42-3℃くらいに水で薄めてちょ」的なことが書いてあったけど、それでも通常よりは熱いし、あと、温度計が無いのに体感で何℃かわからないから、小細工せずに入浴した。

熱くて足先がビリビリしびれるほどだったけど、なぜかクセになり、果敢に挑戦して何度も肩まで浸かった。
ただでさえ暑い日だったのに、さらに汗が止まらなくなった。

もうすぐ閉業となる切湯さんを遠くから

こちらは、多くの山伏が切り傷を負った際に湯治をしたことで切り傷によく効くとのことから「切湯」と呼ばれるようになった公衆浴場。
お風呂は階段を下った先にある。

しかしこちら、令和6年11月14日(木)をもって閉業が決定。1つの歴史が終わろうとしている。

誰もが自宅でゆっくり湯船につかれるようになった時代。
公衆浴場という文化がいまもこれだけ残っていることが、もはやすばらしい財産なのかもしれない。

夜もどんどん歩きたい

今回、夕食はつけなかったので、どこか街中で夕飯をいただこうと夜の街に繰り出した。

とりあえず目的もなくブラブラしよう街に出てみることに。

暗くなると街のあちこちに明かりが
夜の足湯も楽しめる

ひとまず夜の営業が始まるまで、街中を散策し、日中とは雰囲気ががらりと変わった旧堀切邸の足湯にて、貸し切り状態でいったん温まる。

しかし、私も温泉地出身だからこそ思うけど、地元民って足湯しないよね?勝手に、足湯って観光客のためのものだと思っている。
私だって、地元の足湯は入らないけど、旅先では入りたくなっちゃうもんな。楽しいね。

映画のセットのような街並み
八幡の湯

日中は、私を含めたいかにもな観光客がウロウロしていたけれど、陽が沈んでくると、犬の散歩や片手に入浴セットを抱えた地元民らしき方々が歩いていて、よりローカル感があって楽しかった。

観光地とはいえ、私はその土地にお邪魔させてもらっているという感覚で街を歩くので、怖がられない程度に積極的な挨拶をするようにしているのだが、この街の方々は普段がそうであるかのように自然に返してくれる方が多く、とてもほっこりさせてもらった。

おっちゃんがタオル1枚肩にかけて、公衆浴場から湯気をたたせて出てくる様子なんか、とんでもなくかっこよかった。

飯坂温泉と言えば円盤餃子だけど…

どうやら円盤餃子のお店が多いらしいのだけど、週末だったこともあり見るからに混んでいて、1人で並んで食べるにはちょっとエネルギーが必要だったから、特にこだわらずお店を探すことに。

すると住宅街のなかに、ぽわんと光るお店を発見。

住宅街の中にひっそり佇むお店「絶好鳥」

予約も何もなく飛び込みだったけど、運よく入れたお店は、焼き鳥がメインのお店らしく、すでに先客の注文した串からモクモクと美味しそうな香りが立ち昇っていた。

頼んだのは、レバー、ハツ、カシラ、砂肝、馬刺し、という大肉祭り。

ふわっふわで濃厚なレバー焼き

ここ、焼き鳥がどれもとんでもなく美味しかった。びっくりした。
特に、レバーは濃厚ながらフワフワで、言われた通り串から外して、塩・ごま油・にんにくのたれに絡めて食べたらそれはもう絶品だった。

自分史上最大の衝撃を受けた馬刺し

そして、会津の名物でもある大好きな馬刺し。
部位を聞くのを忘れてしまったんだけど、これがもうとんでもなく美味しくて、馬刺し大好きでこれまでもいろんな馬刺しを食べてきたけれど、確実にトップ3には入る。

赤身の旨さと脂の甘みがとんでもない。心の中にとどめておいたけど、本当は大騒ぎしたいくらいおいしかった。

勝手知ったる常連さんや、飯坂温泉に来ると必ずここに来るという遠方のお客さんもいたけれど、それも納得の美味しさだった。

お店の方にもとても穏やかで素敵な笑顔の接客をしていただき、とっても素敵な夕食となった。

朝の散歩も気持ちいい

翌朝も6時半に起きて、早朝散歩へ。

7時前にオープンするという名物ラジウム玉子(温泉卵)のお店が10分ほど歩いた先にあったので、散歩ついでに行ってみた。

フォント萌え…!ラジウム派とラジュウム派があるようだ。

街中にはラジウム玉子のお店がいくつかあるけれど、どれも朝から昼前までの営業がほとんどで、それ以外だと自動販売機で買えるところがある。

ちなみに、常温で10日ほどもつらしいのでお土産にも嬉しいね。

柱、壁、敷石、置物、すべて抜かり無く美しい。
夏を名残惜しんでいるかのような朝顔

1人旅に出ると、国内外問わず、朝の散歩を楽しみに出かけることが多い。

特に海外だと、治安の面もあるけれど、夜は比較的観光客が多い場所も、早朝はそこで働き暮らす人たちの時間になっていることが多く、その土地の生活を垣間見れるようで余計に楽しいのだ。

散歩を終え、宿でゆっくり美味しい朝食をいただいた後は、リノベーションされたお店でゆっくりコーヒーを飲んだ。

古い町並みにも新しい風が吹いている

コワーキングスペースも用意されているらしく、近年のワーケーションスポットとしても活用できそう。

新旧がぶつかることなく同じ景色にしっかりと根を張る様子は、よそ者にも心地よく、ゆったりと心地よい時間を過ごすことができた。

福島市から日帰りでも楽しめる好アクセスの温泉街


駅近くの足湯公演

福島駅から電車1本で行けて、地元民にも観光客にもアクセスしやすい飯坂温泉。

公衆浴場でサクッと温泉を楽しみたい人やゆっくりじっくり滞在したい人など、いろんな人のニーズに応えられるフレキシブルな場所だなという印象をもった。

地方の温泉地というとアクセス方法がネックになりがちだから、車が無くても気軽に行けるというのはかなり大きなメリットだと思う。

そして思いがけず私は、この後芭蕉の足跡を追うことになろうとは…。

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