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【詩】泣きっ面に。

本当はもっと子供でいたかった。
だけどそれはもう叶わない。
ゆっくりと、それでいて確実に。
死の音が私に近づいている。
誰かが私に語りかけてくる。
「早く大人になりなさい」と。
ずっとこのまま、この部屋で眠っていたいのに。
ああもう駄目だ。出ないといけない。
何かに脅されているかのように慌てふためいて
私を愛してくれたこの部屋からでないといけない。
大人にならないといけない。
そうしないといけないらしい。
上の空の私は宙ぶらりんで
私の心も体も硬くなって。
何にも考えられなくなるんだろう。
もともと何も考えてはいないけど。
夢とか些細な幸せとか
そんなことだけ考えるだけでいいじゃないか。
ああ、泣きたくなってきたな。
どうせなら思いっきり泣いてやろう。
声を大きくはりあげて、私は不幸だと愚図ってやろう。
ほら、あいつもこいつもそうしてる。
誰か最初に泣き出したとか
ばれやしないし、大丈夫でしょ。

お題:蝉

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