毛糸

人生に未練のない女

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  • 30歳で自立したくなった話

    5年神様に飼われていた女が30歳になったら急に自我が芽生えて自立したくなった話です。思ったより長くなったのでまとめました。

最近の記事

人生に飽きた人へ

私は人生に飽きた。 飽きたってほどいろんな経験をしたわけでも成功者なわけでもない。でも結局この世がなんの意味もないものだと感じ始めてしまった。 そうするとどんどん現実の自分との乖離が生まれていく。 典型的な東京の独身貴族OL。流行り物が好きでミーハーで毎日楽しく暮らしてる。 仕事でそれなりにいろんなことが起きて一喜一憂して、休日に好きなことをして笑って。そのときは全力でその感情を持って生活している。 でもずっと頭の片隅にある、「それがなんになる?」 どんなにお金を持っ

    • ウフフ女でいたいのに

      これ以外にも「変わってる」「意外」「毒舌」とか、そういう感じのことを言われるのが本当に恥ずかしい。 それらは決して嫌な感じではなく、好意的に発せられる。「ほんと変わってておもしろいよね〜」とか「そんなふうに見えないのに意外と毒舌だよね、いいよ!」みたいなの。 もうまじで恥ずかしすぎる。 それを言えば喜ぶと思われてることが恥ずかしすぎる。 だって私がそれを言うとしたら、あ〜この人変わってると言われたいんだろうな、という人にしかいわないから。 ほんとのほんとに変わってる人には

      • 30歳で自立したくなった話16/ミントグリーン

        憧れの「フレンチモロッコメキシカン」にするためには壁の色を変えることが必須だ。 最近は賃貸OKの壁紙が出ていて、自分でDIYすることもできる。 でも不器用な私は自信がなく、例の後輩に相談すると、壁紙業者を紹介してくれた。 後輩の素敵部屋も実際にこの業者を使ったということだった。 「イケメン社長が貼りに来てくれますよ!」 後輩はロバートの秋山を日本一イケメンだと思っている。期待せずに予約した。 引越し当日は、地元の友達とその先輩が手伝いにきてくれた。 先輩はその日がはじめま

        • 30歳で自立したくなった話15/どうして全てを委ねられないんだろう

          引越し日の少し前、ガスや電気の開通のため新居に行くことがあった。 何もないガランとした部屋に、新しく買ったお気に入りのカーペットを広げた。それだけでワクワクして、これからこの部屋がどうなるのか考えるだけで幸せだった。 ガス会社の人が来るまで時間があり、うたた寝をしてしまった。 ハッと起きるとたくさんのクッション、広いソファ、寝ちゃったの?と覗き込む彼の顔、は、ない。 母親の姿が見えなくて泣き出す赤ちゃんのように不安な気持ちに駆られた。 窓からオレンジと薄紫の空が見えた。新し

        人生に飽きた人へ

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        • 30歳で自立したくなった話
          16本

        記事

          The Saunaという天国を見た

          情景、香り、蒸気、水、風、その全てを忘れられない。完全に恋に落ちた。 それが、The Sauna。 場所が最高The Saunaがあるのは長野県信濃町。野尻湖の湖畔だ。 東京の午前中とは思えないうだるような暑さをの家を出て3時間。黒姫駅に降り立ったとき、「そう、これだ」と思い出した。 照りつける太陽と青空の暑さの中、緑が創る日陰にスッと吹き抜ける爽やかな風。 あぁ、ニッポンの夏 is here. 最近の東京はもはや東南アジア。 サウナが最高 あの、当たり前なことを言って

          The Saunaという天国を見た

          10年ぶりにタトゥーを入れた

          特に意味はない。意味を持って何かをすることなんて、もうない。私の行動の全てには意味がない。 じゃあなんで急に入れたかというと、なんか可愛くて入れたくなっちゃったからだ。 10年前のことなんてよく覚えてないけど、多分そのときもなんか可愛くて入れたくなっちゃったからだったと思う。 でもその頃はいちいち意味付けをしたかった。このタトゥーには隠されたこんな意味があるの、ふふ、という過去になんかあったミステリアスな女を演じたかった。なんもないのに。 その頃、耳はあなぼこだらけだった

          10年ぶりにタトゥーを入れた

          30歳で自立したくなった話14/私が犯人

          目を覚ますと隣に彼の姿は無かった。 急に不安になって飛び起きると、遠くからシャワーの音が聞こえた。 よかった、いつも通りの朝だ。 彼はいつも私の30分前に起きて身支度を済ませ、私の起床時間になると寝室に起こしにきてくれていた。 私は目覚めが良いのでひとりでも起きられる。でも彼が優しく起こしてくれるのが好きで、いつもなかなか起きられない子のふりをしていた。 でも、もうそれも無くなる。そう思って寝室を出ると、丁度お風呂から出た彼と鉢合わせた。 「ひとりで起きられたね」 彼が

          30歳で自立したくなった話14/私が犯人

          大好きは都合が良い

          先日誕生日を迎えた。 毎年毎年、大好きな友達に祝ってもらって周囲に恵まれていることを噛みしめる日。もはや私からみんなへの大感謝祭。 そんな日に、心をぶち抜いた言葉を貰ったのでここに残しとく。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私はあなたのことが大好きです。 大好きってすごく自分に都合が良くて、優しくされたり大事にされたり嬉しいと思ったときに感じることが多いけど、あなたへの大好きはちょっと違うよ。 あなたに幸せでいてほしいとき、綺麗でいてほしいとき、愛されていてほし

          大好きは都合が良い

          30歳で自立したくなった話13/ありきたりな大切なんて言葉じゃ足りない

          彼と付き合うまで、私は大切にされるということがどんなことかよくわからなかった。 それまでお付き合いしてきた人達が大切にしてくれなかったわけではない。 でも、よくいう釣った魚に餌をやらない人が多かった。最初は優しくても、徐々に「言わなくてもわかるでしょ」のスタンス。 ほんとに私のこと好きなの?と不安になるのがお決まりのパターンだった。 彼とまだ友達だった頃、そんな話をすると「ふーん。俺は違うけどね」と言ったことに驚いた記憶がある。 友達の頃の彼はどちらかというとクールで斜に

          30歳で自立したくなった話13/ありきたりな大切なんて言葉じゃ足りない

          30歳で自立したくなった話12/どうしたってひとつにはなれない

          いつもとは違う毅然とした態度で話していた私が急に泣き出したことで、彼はハッとした顔をした。 実は半年前に一度、出ていこうと思っていると告げたことがある。 そのときに自立したいこと、ここにいてはだめだと思う旨を話した。 でもきっと彼は忙しくてかまってもらえない彼女が自分の気を引くために言っていると思ったのだろう、「そんな必要ないよ、ずっとここにいて赤ちゃんでいいよ」と言って頭を撫でた。 その翌日から、私は部屋探しを始めた。 「この喧嘩は引っ越しに何も関係ないよ。もう前から決

          30歳で自立したくなった話12/どうしたってひとつにはなれない

          人は忘れないと生きていけない

          私の目はカメラと同じ動きをする。 何を隠そう(隠してもない)、極度の乱視だ。 コンタクトを外すと何も見えない。 特に夜、暗い中の光を見るとまるでカメラの玉ボケのような景色が広がる。 一生懸命ピントを合わせようと水晶体が閉じたり開いたりする。毛様体筋頑張ってんな〜とわかるくらい、ギコギコ音を立ててチカチカ動く。 私の壊れかけている愛用カメラと全く同じだ。なかなかピントを合わせられずに、ずーっと開いたり閉じたり。シャッターを切れないでいる。 私は誰のことも忘れない。でも、目

          人は忘れないと生きていけない

          合法的に脳を溶かす

          あの感覚を思い出しただけで、白目を向いてヨダレをだらだら垂らしながら昇天しそうになる。 コロナによる自粛でその快楽を味わえなくなって早3、4ヶ月。今、私は最も禁断症状が色濃く出ている時期だ。 もうダメ、我慢できない、金ならいくらでも払う。 サウナイキタイ 出会いは昨年春。 既に敏腕サウナーであった諸先輩方の体験を聞く度に半信半疑だった。 「疲れがふっとぶ」「頭がスッキリする」 「仕事が捗る」「アイディアが湧き出る」 …戦後のヒ〇ポンの宣伝文句かよ、と思っていた。 そこ

          合法的に脳を溶かす

          料理はくそうまいんだよなぁ

          先日家族のことを少しnoteに書いた。 あのとおり、私は普段あまり家族への意識がない。嫌いとか愛がないとかそういうことではなく、家族がいるという意識があまりないというのがしっくりくる。 その中で、母とは1番そりが合わない。 土曜、家族LINEのグループビデオ通話がかかってきていた。でもあれってなぜか着信音が鳴らないので気付かなかった。 その後、母から普通の着信があった。 電話に出ると、母は「今お姉ちゃんがうちにきてて、孫ちゃんもいるしみんなでビデオ通話したかったのに~」と言

          料理はくそうまいんだよなぁ

          30歳で自立したくなった話⑪/家族の呪縛なんてないと思ってた

          別れたいわけがない。 こんなに大切で愛おしい存在を手離せるわけがない。じゃあなんで?なんでその存在から距離を置こうとするの? 彼と私の関係性は、一緒にいる間に様々な側面を持つようになっていった。親友であり、兄妹であり、親子であり、飼い主とペットでもあった。 でも、「恋人同士」という関係性は、いつのまにかなくなってしまっていた気がする。 私は両親から甘やかされたり褒められたりした記憶がない。 お遊戯会で上手に踊れても、テストで良い点数をとっても、絵や作文が入賞しても、通信簿

          30歳で自立したくなった話⑪/家族の呪縛なんてないと思ってた

          30歳で自立したくなった話⑩/男女の関係性は自由がきかない

          すぐに既読になったが、返信はなかった。 その日はソファで眠ろうと決めた。私の知らない人になってしまった彼と同じベッドで眠りたくなかった。目を瞑ると、私のよく知る顔の彼が笑っていた。 ガチャ、という玄関の開く音で目が覚めた。 朝4時。 この時間ということは、彼は相当酔っていて話にならないはずだ。これでは話をすることはできない。苛立ちとともに、どこかほっとしている自分がいた。 リビングのドアが開く。私は寝たふりをしながら彼の様子を伺った。 意外にもしっかりとした足取りで鞄を

          30歳で自立したくなった話⑩/男女の関係性は自由がきかない

          30歳で自立したくなった話⑨/私の家じゃなかった

          「で、おれんちいんの?」 その平仮名の羅列を見た瞬間、サーッという音が耳の奥でして、指先が冷たくなった。 あーこれが血の気が引くってやつか。 同時に、その一瞬でこの10文字に含まれた全ての意味を理解した。 「いるよ」 「あっそ」 彼からこんな冷たいLINEがきたことは未だかつてなかった。これを送っているのは本当に彼なのかと疑うほどだった。 そんなことよりも。 彼はいつでもここはふたりのお家だと言っていた。私が、○○くんの家と言うと怒った。私に悲しいことがあると、早く

          30歳で自立したくなった話⑨/私の家じゃなかった