地方は人口増減を気にしても意味がない話

このニュースは、フェイスブックでまちづくりなどの課題に立ち向かう実践者たちのグループ内で共有されたことで知った。

この記事にあるような「人口増」は自治体にとって「喜ばしい」という論調だが、我々専門家からしてみれば、そこだけでは無かろうに、ということで多くの指摘が飛び交った。下の木下氏の記述はとてもまっとうなものである。

しかし、残念ながら多くの自治体は人口の維持ということに必要以上に腐心する。人口が減ることは悪であり、増えること(特に生産人口が)は正義であるという、、、確かに、増えることで住民税が確保できるというのが大きなところではある。しかし、日本全体で見れば人口が減っている中で、20人増えたらそれがどういう効果が発揮するのか。ここに住んでくれたとしても、働くのは市外である可能性も高いし、もし子供がいたところで地元の高校でなくて都市部の高校に通いに行くことも考えられる。自治体の人口増減だけでなく、本来なら年代別の動向、そして生産世代がどのくらい地域内で働けているのか、どのくらい地域内の経済活動が域外へ流れ出てしまっているのか、そして現在の状況下でどのくらいの人口再生産性(コロナで再生産という言葉は悪くとらえられているが)があるか。つまり、人口だけにかかわらず、その地域の持続可能性がどこまであるかということを正確に分析して、課題を明らかにしなければならない。

言い方は悪いが、人口が増えればいいというのなら、老人介護付きマンションを作ってそこに住民票も移させれば人口は増える。

私は「関係人口」という言葉は嫌いである。この言葉は、表面上地方活性化の重要なキーワードのように見えるが、結局は東京のコンサルタント企業が考え出した、東京(霞が関)から補助事業を引っ張るための口実でしかない。「関係」って何よ。リレーションシップ、という言葉は使い勝手はよく、その地方に興味がある人(観光やふるさと納税などでかかわること)ということで見れば、地方が都会の人に対して働きかけをして興味を持ってもらうという見え方になるが、その逆を考えれば、地方に住みながら、東京ディズニーランドやUSJに遊びに行く人も、地方から一時的に離れて東京の学校に行く若い人もある意味関係人口であり、そういう意味で言えば一地方より東京や大阪など都市部の方が『関係人口を作る力』は圧倒的に高い。

東京や大阪でなくて地方で活躍しよう!と訴えることは別に構わないが、結局関係人口づくりというものが『地方であなたの力を活かせます!』という副業のレベルやただの観光レベルで終わるなら、それはただ一時的なことだ。何かのきっかけで地方を知って、そこで人の魅力に魅せられて移住する、、、ということは確かに今多く発生しているが、それ以上に高校卒業して若い人が東京に行って盆と正月以外一生戻ってこない、なんなら残されたお年寄りの見守りもお墓のお世話もふるさと納税でカバーしますよ、という時代である。

関係人口も、まずは観光や何らかの関りで副業などからその地域を知って、そのエリアに何度も来てもらい、関係を深めて、、、王道のように見えるが、まだるっこしい。ふらっと立ち寄ったアパレルショップで6万円くらいのワンピースを買うことはあるかもしれないが、ふらりと立ち寄ったところに移住するのはとてもハードルが高い。何かで訪れた観光でその土地にファンになって何度も行くというくらいそこに魅力があるのは、果たしてその土地の人の好さだろうか。単にそこのホテルが非常にいいものであるか、食事がいいからではないか。もしそこのホテルが廃業したとしてもその人は変わらずにその地を訪れてくるだろうか。そもそも、緩やかにその地域を知っていってだんだんとファンに、、、ということは、関係人口という名目で予算を突っ込んでもお釣りがくるくらいそんなに頻繁にあるのだろうか。

ファンづくりとはどうすればいいのか。AIDMAなどの言葉を使うわけでもなく、まずは興味を持ってもらうことが必要だ。そこで観光というところで興味を、というのは正しいように見えるが実は正しくない。なぜなら観光地は無数にあるから。そして観光地で体験できることも世界中でそこまでそう変わりはない。居心地のいい宿泊施設、美味しいその土地の食べ物、景観。ではそこで触れ合う人かというとそこまでみんながみんなホスピタリティ満載でもないし、触れたとしてもほとんどが「よそ行きモード・よそ者対応モード」になっているその人に触れたところで何がわかるというのだろう。マーケティング的戦略は必要だが、あまりに確度が低い戦略戦術を重ねていたところで、10年もしないうちに広報活動に費やせる費用が底を尽きるだろう。

ではどうすればいいかというと、まずはその地域にお金を費やしてくれる人を増やすことに注力するべきだと考える。

なんや結局観光やないか、というわけではない。そもそもコロナで観光の需要はまだまだ沈んでいることもあるが、観光はその時の景気にも左右される。そうではなく、その地域の活動や取り組みが面白いと思ってくれて、それを自分もお金を出すことでかかわりたいという人を増やすことだ。具体的にいうとアニメツーリズムのような事であり、特定の文化や遺跡を守ること、あたらしい取り組みを興すことなどだろう。その取り組みがどうどのように世界中の人に伝わるかどうか、そこの仕組みを作り上げられるかは自治体の腕の見せ所である。(そういう意味でのふるさと納税の活用はまだまだ改善の余地がある)

ただそれがただのストーリー合戦ではだめで、いかに地域の特性や歴史と紐づいて、ターゲットとして狙った人が納得するかどうかまでプロジェクトを、コンテンツを磨き上げることが必要だ。そういう取り組みができてきたらちゃんとした「ファン」ができる。そしてそのファンとともにプロジェクトを進められるようになったときに、初めてその活動が意味を持つ。そこまでくれば、本当に若い人の移住も、若い人の流出ストップも実現できる可能性が高まる。

私が今仕事として力を入れているのは、表面上「シティプロモーション」であるが、そのプロモーションするべきコンテンツを磨き上げることから、プロモーションによってコアなファンを作りそのファンがプロジェクトに参加できるようにして、さらにその盛り上がり自体がプロモーションになる、という流れを構築することである。

地方活性化は人口増減という単純なデータでなく、もっと一段も二段も上のレベルで話をしなければ何も達成ができない。


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