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「戦国上州の刀剣と甲冑」展を見て

2022/7/9~8/28まで群馬県立歴史博物館にて「戦国上州の刀剣と甲冑」展が行われています。
現在個人蔵で享保名物帳の中でも大判700枚とトップの代付けがされている「木下正宗(豊臣秀吉所持)」が展示されている貴重な展示会です。
また同じく名物で重要美術品の「佐藤行光」も展示されるという事で、神業ミュージアムに行った後、車で50分程かけて移動しました。
次いつ見れるか分かりませんからねっ!

38度という猛暑…
予約無しで入れます。月曜は休館日なので注意。


①展示リスト

新藤五国光から始まり、則重、行光、正宗、貞宗、志津、廣光、秋廣、廣助、綱広と、鎌倉期から室町期までの相州伝と、郷土刀が並んでいます。
また兜も多く並び、とりわけ「愛」の字で有名な直江兼続所有の兜も展示されていました。

直江兼続の兜(パンフレットより)


②展示刀を見た感想

館内は写真不可なので、写真はありません。

・新藤五国光(号:大権現国光)

文政ごろの折り紙で代金100枚(約1億円)の代付けがされた名短刀。
研ぎ減りは少しある物の、翁の髭と呼ばれる長い金筋が見て取れた。
茎と銘の位置からして後世に区送りと茎尻を切っている様子。目釘孔3個。
また沸映りのようなものが鮮明に見え、地鉄は非常に細かく詰んでいて粟田口のよう。

・則重

則重の刀身と拵(パンフレットより)

これには一番驚かされたかもしれない。よく見る小振りで筍反りの松皮肌が立った則重とは違い、大振りで地鉄が良く詰み、超健全な則重。
どうやら則重の初期作と考えられているようです。
銘も明瞭に残っている。
代金70枚の折り紙が付き、本阿弥六代の光通は「正宗に匹敵する出来」と称賛したらしい。
個人的には正宗には似ていないように思えたが出来が素晴らしかったのは言うまでもない。国宝かと思いましたが特に指定無い様子。
拵も素晴らしい。


・無銘行光(号:佐藤行光)※重美

個人的に今回の展示品で1番を決めろと言われたら則重かこの行光で悩むところ。
秀吉の家臣であった佐藤堅忠が所持していた事から佐藤行光と号が付いている。寛永12年に本阿弥光温が金30枚の代付けを行っている。
小沸が良く付いて刃が冴えている。そこによく肌立った地景が絡みあっていた。刀身は恐らくほとんど生姿ではないだろうか。
とても健全。目釘孔2だが一つは埋めている。


・正宗(号:木下正宗)※重美

正宗だから当然無銘だろうと思っていたが、在銘だった。
展示では距離も離れ銘は見づらかったものの、何か書いてある位には判別出来た。生茎在銘作唯一の太刀らしいが、最近まで行方不明であったことから研究はまだ多くされていないとのこと。
不動正宗、京極正宗、本荘正宗、大黒正宗に続き、今後銘が正真と認められるかどうかは個人的にも楽しみ。
反りが深く肌立っている。

パンフレットより

古鞘の展示もされており、そこには「闕所二相成候」と書かれていた。
これは解説によると、町人の筒崎屋惣右衛門が密かに正宗と粟田口吉光を豊臣家から預かり秘蔵していた事が徳川幕府にばれ、全財産を没収された上で追放されたという意味だそう。
代付けは金700枚(約7億円)で享保名物帳の中でも最高値。
それにしても豊臣正宗ではなく木下正宗とは…徳川家康と豊臣秀吉の関係性が想像できる面白い号ですね。


・金象嵌銘志津(琳雅の大志津)

こちらも刃が冴え冴えしており刃先に行けば行くほど躍動感が高まります。
飛び焼きなども多く見られ、個人的には重文の分部志津のような雰囲気を感じました。

・廣光(号:風神廣光)

ザ・廣光というような皆焼の作。
焼きが全体的に高く、飛び焼きも多く見られ刃中の働きも激しい。
風神廣光の他に「雷神秋廣」もあったが、風神雷神で何かこの2つの刀に関係性があったのだろうか。


③学芸さん作成の資料が分かり易い

小学生が夏休みの自由研究などで博物館に来るからか、館内には小学生が楽しめるワークショップや、展示品を分かり易く興味が持てるように開設されたチラシも置いてありました。
展示品と合わせて見れたので個人的にも普段流し眼で見てしまうような例えば梵字が書かれた資料などにも興味が持てました。


④物販コーナー

今回の特別展のカタログも売ってます。1200円
紙で作る刀掛け
紙で作る甲冑

図録も読みごたえあります^^


⑤終わりに

今回の群馬の旅は日帰りで17時までに神奈川に戻ってこないといけない弾丸ツアーでしたので、車で3時間→30分禅林ギャラリー見る→車で50分→30分歴博見る→車で3時間かけて帰る、みたいな展示閲覧1時間、車の中7時間という強行スケジュールでした。
しかし木下正宗を初め佐藤行光や則重、直江兼続の兜などをこの目で見れたのはとても良い経験になりました。
本当はもっとゆっくりと見に行きたいですが場所が場所だけに期間中はもう無理そうです。
とても素晴らしい展示でしたので、相州伝が好きな方は是非行かれてみてはいかがでしょうか^^
その際は是非「神業ミュージアム」も是非寄ってみて下さいね~!

神業ミュージアムの様子は以下をご覧ください。


今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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