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刀の入札鑑定と茶事

私が茶道について興味を持つきっかけとなったのはオリラジ中田さんの以下の動画である。


そこで恥ずかしながら「茶事」というものがこの世に存在している事を初めて知る訳であるが、イメージしていたのは主人が立ててくれた抹茶の入った茶器をクルクルと回してから茶菓子を食べるイベントである、程度の認識しかなかったわけであるが、そのイメージがひっくり返ったのが上の動画であった。(12:52~の茶事の話が面白い)

中田氏は「茶事はティーパーティではなくアートだ。1日だけ行われる招かれた人にだけ向けた美術館だ」というようなニュアンスのことを述べている。
この理由が上記動画を見ると実に納得でき非常に面白い。

中田氏を茶事に招き、中田氏の中にあるコアな部分を調べ尽くしてそれにあった茶器や掛け軸などのアイテムを用意しながら中田氏の人生そのものをストーリー仕立てにしてもてなす主人の器量や気遣いにも驚かされるが、その気遣いに気付く事の出来る中田氏もまた凄い。

こうした細やかな気遣いに五感全てを研ぎ澄まして気付き、それを理解し合うこと。
この主人のもてなしの「テーマ」とも言える部分に、気づく事が出来た時、言葉では言い表せないような感動が押し寄せて来るのではないだろうか。

千利休が手がけた茶室で唯一残る国宝「待庵」
(画像出典:産経新聞

前置きが長くなったが、先日刀業界の忘年会に参加させて頂いた時に、刀の入札鑑定にも茶事のようなことを応用出来ると面白いかもしれない、と仰っている方がいてお話を聞くと実に面白いと感じた。

刀の入札鑑定は5振並ぶのが常であり、ただ関係なく様々な時代の刀を並べる人もいるが、知識や経験が豊富な人になってくると「テーマ」を設けて参加者が学びをより多く得られるように工夫している事があるという。

この話をして下さった方も昔出題者の意図を完全に理解して満点を取った事があったというが、その時に5号刀は虎徹に入れるよう仕向けられた出題者の罠を見透かして三善長道に入れて「何で分かったの?!」と驚かれた経験があるという。
しかしこの方曰く、1~4号刀を通して出題者の考えている事を完全に把握し気持ちを通じ合わせた結果であると言い、これは入札鑑定を越えたもう一つの入札鑑定の楽しみ方であるような気がした。
勿論刀が見えていなければ1~4号で躓くので、刀が視えるというのは大前提で持っていなければならないスキルであるし、そうした意味では出来る人の限られた高次な楽しみ方ではあるが。

そしてこの話はやはり先の茶事の気遣いの話とどこか似ている、という印象を私も感じる。
刀の作風を見て個銘を当てる当てないというのも楽しいが、こうした出題者の隠された意図、テーマを探るのもまた楽しそうである。
こうした楽しみ方は誠に個人的な感覚ではあるが、細やかで繊細な気遣いをする実に日本人的な楽しみ方な感じに思えた次第。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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