きむらまさる

根釧原野で暮らし始めて39年。 大きな原野の小さな森が教えてくれたたくさんのこと

きむらまさる

根釧原野で暮らし始めて39年。 大きな原野の小さな森が教えてくれたたくさんのこと

最近の記事

種と牙

ガラスケースの温室の中で たくさんのちいさな命が 芽を出し始めた。 ガーデンに植え付ける花たちと 今年1年私たちが食べるための野菜たち。 体と心の栄養のために・・・ 他から奪うことなく・・・ けれどもより豊かに生きるために・・・ 私たちは明日のために種を撒く・・・ 自らは種を撒くこともなく その収穫を狙い 奪おうとする者たちがいる。 奪うのに用いるのは 労働による汗ではなく牙・・・ その牙は直接噛み付くのではなく 法律と言う名の衣をまとって 巧みに襲いかかるほうが多い。

    • How to stop the war with mushrooms.

      ずーっと北のほう おおきなおおきな原野がある。 そこの、とある家の花ばたけのかたすみに 名も無い、ばふんたけが住んでいた。 ある日、ばふんたけは、ウクライナで戦争が始まったことを知った。 『なんて、悲しいんだろう。 このままでは、ウクライナのきのこたちも、みんなしんでしまう。 『なんとかしなくては』 世界中で、心ある何千万もの人間が、この戦争に 反対したにもかかわらず、 戦争を止められなかったことを知ると、 ばふんたけは、悲しみでがっくり肩を落としてなげいた。 『人間

      • 原野のスズラン

        根釧の原野に スズランの花が咲き始めました。 北欧舎のガーデンは 元々、ミズナラの森に 開かれた場所に造られました。 その森には たくさんのスズランが 咲いていました。 原野とガーデンの境が 曖昧な場所に咲く 野生のスズランは ガーデンに咲くスズランには 決して見られない 命の詩を感じます。 初夏の原野のガーデンへ ようこそ!

        • 光を写す

          モノを写すのではない。 光を写すのだ。 考えてみれば モノが見えたり 写真が写るのは 光があるから。 もう50年以上も前 新聞配達のアルバイトして 一台の一眼レフカメラを買った。 白黒のフィルムを 自分で現像し そして暗室にこもり 印画紙に焼き込む。 考えてみれば フィルムに写し込むのも 引き伸ばし機を使って 印画紙に焼き込むのも 全てが 光のマジックだった。 14歳の私は 光のマジックに 夢中だった。 あれから50年。 写真はフィルムからデジタルに 変わったけ

          お別れのとき

          3日前の金曜日からあやめちゃんはご飯を 食べなくなりました。 あやめちゃんは17年前に 我が家にやってきました。 17年という月日は、 たくさんの思い出と 深い絆を紡ぐに十分な時間でした。 2年前の秋に足腰が弱り 身動きがままならなくなってきました。 ここ1年ほどは 認知症の傾向が現れ、 食事や身繕いに 私たちの介護が必要になっていました。 でも、だからこそ あやめちゃんとの間に 愛しいほどの深い関係性が 生まれてもいました。 一週間前の月曜日頃から 食べる量が減ってき

          お別れのとき

          再生

          夢と希望

          いい日旅立ち 春、たくさんの命が 芽吹きました。 長く生きた者も 中くらい生きた者も 今年初めて生れた者も 夢や希望に向かって 旅立つ春。 けれども 現実の世界は 夢や希望とは ほど遠い。 異常気象や ナショナリズム そして戦争 でも、だからと言って 夢や希望を 失っていいはずがない。 暴力や憎しみが 連鎖する世界で いいはずがない。 愚かなものたちが 創ってしまった現実に すっかり夢も希望も 失ってしまったら 暴力と絶望と差別の 悪循環は ますます続く。 若者たちの才能を 戦争で消費していいはずがない。 若者たちの職場を 戦場にしていいはずがない。 おかしな価値観が 世界中に溢れていて 染まらないでいるのは 難しいけれど。 変えられるのは やはり 私たちの夢や希望 願わなければ 決して叶うことがないのが 夢や希望 そして未来。 小鳥が囀り 春の優しい風が吹き スノードロップが踊る。 そしてバックには 素敵な曲が流れている。 いい日旅立ち さあ! いい日旅立つにはピッタリだ!

          再生

          月と星

          53億8千万年(注1)前までは、 月は今のように満ち欠けせずに、 いつでも丸いままでした。 月は空のどの星よりも大きく、どの星よりも輝いていました。 そのために月はだんだん自分がこの空で一番強いものだと 思うようになりました。 月は他の小さな星たちを『星屑』といって 馬鹿にするようになりました。 空の大事なことを決めるために、年に数回行なわれる 星たちの会議でも、月は星たちの意見を聞こうとしないで 自分の意見を押しとうし、強行的な採決をしました。 そうやって空の法律も自分の

          くるみの木の下で

          おねえちゃん もっとおして もっとおしてよ! 家の裏の大きなくるみの木に とうさんがロープをつるしてつくってくれたブランコ 雨の日いがいは、いつもいつも わたしとちえはブランコにのってふたりで遊んだ。 わたしはもうひとりでブランコをゆらすことができるけれど ちいさなちえはわたしがおしてあげないと、ブランコではあそべない。 はる あたりいちめん たんぽぽの黄色でそまるなか わたしとちえはブランコであそぶ ちえのほっぺもそしてわらいごえも 黄色にそまっている 谷間でかっこ

          くるみの木の下で

          おおいなる森の恵みメープルシロップ

          おおきな原野のちいさな森の奥へとつづく足跡。 メープルシロップを作るために、 イタヤカエデの樹液を集めてまわるとき 私がスノーシューをつけて歩いてできた道です。 雪深い森。 夜には氷点下の気温まで下がりますが、 日中はプラスの気温になり暖かな光が森の中に差し込んでいます。 まだ眠っているように見えるイタヤカエデたちですが 芽吹きに必要な水分と養分を 幹の中にためこみ、それがグルグルと循環しているのです。 芽生えが始まると樹液は若葉が必要とするため出なくなります。 それまで

          おおいなる森の恵みメープルシロップ

          四葉のクローバー

          雪の中で凍りつくクローバーを見つけた。 すっかり緑を失い、 それどころか枯れ色さえ すでに色あせている。 強風で引き千切られ いつのまにかこんなところに 吹き寄せられたのか・・・・ それは「四葉のクローバー」だった。 子どものころ、この四葉のクローバーを 摘んだ記憶がある。 この原野に移り住んでからも、 道ばたや野原などでこの四葉のクローバーを見つけると なんだか、ちょっとだけうれしいような 得をした気分になる。 幸せを呼ぶ・・・ 幸福を招く・・・ この雪の中で凍りつい

          四葉のクローバー