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How to stop the war with mushrooms.

ずーっと北のほう
おおきなおおきな原野がある。

そこの、とある家の花ばたけのかたすみに

名も無い、ばふんたけが住んでいた。



ある日、ばふんたけは、ウクライナで戦争が始まったことを知った。
『なんて、悲しいんだろう。
このままでは、ウクライナのきのこたちも、みんなしんでしまう。
『なんとかしなくては』

世界中で、心ある何千万もの人間が、この戦争に
反対したにもかかわらず、
戦争を止められなかったことを知ると、
ばふんたけは、悲しみでがっくり肩を落としてなげいた。
『人間とは、なんとおろかで、情けない生き物なのだろう
 こんな生き物に、これいじょう世界をまかせていては、
 たいへんなことになってしまう。
 いったいどうしたらいいのだろう。』

ばふんたけは、心配のあまり、夜もねむれなくなってしまいました。


思いあまったばふんたけは、
花ばたけのちかくの林に住んでいるしいたけに
相談することにしました。
『しいたけさん、戦争が始まったこと知っていますか?
たいへんなことになってしまいましたね』

『うん、わたしもとても、きになっていたんだ。
 人間たちには、本当にこまったものだ。』
『いったい、どうしたらいいのでしょう?』
『ううーーーむ!』
しいたけは、うでぐみして、考え込んでしまいました。


思いあまった、ばふんたけとしいたけは、
花ばたけのとなりにある野菜ばたけに住む
しめじに相談することにしました。
『しめじさん、戦争が始まったこと知っていますか?
 イラクのきのこたちが、たいへんな思いをしています。』
『ほんとうに、人間には頭がいたいよ。
 なんとかしなければと、わたしも思っていたんだよ。』
『しめじさん、なにかいい考えはありませんか?』
『ううーーーん!』
しめじも、うでぐみして考えこんでしまいました。


 思いあまったばふんたけとしいたけとしめじは、
   野菜ばたけのとなりの森に住む、
   ぬめりすぎたけに相談することにしました。
   『ぬめりすぎたけさん、戦争が始まったこと知っていますか?
    わたしは、イラクのきのこたちが、心配で夜もねむれません。』
   『ああ、にんげんたちは、どうしようもないやつらだよ。
    このままでは、たいへんなことになるだろう。』
   『ぬめりすぎたけさん、ではどうしたらいいでしょう?』
   『ううーーーーん!』
   ぬめりすぎたけも、うでぐみして考えこんでしまいました。


 『そうだ!わらいたけに相談してみよう。
    彼のちからをかりれば、なんとかなるかもしれない。』
    しいたけが、そう言いました。
   『でも、わらいたけは、がんこですよ。
    たすけてくれるでしょうか?』
   ばふんたけが、心配そうにたずねました。
   『ともかく、たのんでみるしか、いまのところ
    しようがないよ』

   そこで、よにんは、わらいたけに、相談してみましたが、
   やっぱり、がんこなわらいたけは、なかなか、ちからに
   なってくれそうもありません。

   『わたしたちのちからを、ほかのきのこたちに、
    教えることなど、できるはずがない。
    わらいたけ一族がうまれて、何万年ものあいだ、
    そんなことが、あったためしは、ないんだ!』

   『でも、いまこの瞬間にも、ウクライナでは、わたしたちの
    なかまが、つぎつぎとしんでいるんです。
    あなたは、それでも平気なのですか?』

   わらいたけは、ジッと目をつむり、考えていましたが、
   やがて、しずかに目をひらき答えました。
   『わかった。ちからをかそう。
    しかし、ぜったいに、こんかいかぎりだよ。』

   こうして、わらいたけのちからをかりて、
   きのこたちは、戦争をとめるための、作戦を開始しました。
   きのこたちは、ある情報を遺伝子にくみこんだ胞子を、
   風にのせて、世界中のきのこにつたえたのです。


   こんどの日曜日、午後一時が世界統一の
   きのこのピースアクションの日ときまりました。

   その日、世界中のきのこがいっせいに、胞子を
   飛ばしはじめました。
   胞子は風に乗って、どんどん広がっていきます。

   ウクライナでも、ロシアでも。日本でも。
   世界中に広がっていきます。
   ウクライナで戦争をしている、兵隊の上にも、
   胞子は飛んでいきました。

   すると、その胞子をすった兵隊は
   とつぜん、もっていた鉄砲をほうりだし
   『わーはっはっは
    わーはっはっはっは
    わーはっはっはっはっは』と
   わらいだしたのです。


   あちらでも、こちらでも。
   『いーひっひっひ
    いーひっひっひっひ
    いーひっひっひっひっひ』

   ロシアの兵隊も、ウクライナの兵隊も
   『がーはっはっは
    がーはっはっはっは
    がーはっはっはっはっは』と
   笑いだしたのです。

   飛んできたほうしには、わらいたけの
   人を笑わせる成分が入っていたのです。


  おなじころ、ロシアでは、プーチン大統領が
   胞子を吸い込んで笑い転げていました。
   『ブワーファッファッファ
    ブワーファッファッファッファ
    ブワーファッファッファッファッファ』

   日本では、岸田首相が
   『ヒィーヒッヒッヒッヒ
    ヒィーヒッヒッヒッヒッヒ
    ヒィーヒッヒッヒッヒッヒッヒ』と
   笑いころげていました。


  もうみんな、おかしくっておかしくって
   戦争どころではありません。
   『やめた!やめた!
   戦争なんてやってられない』と
   武器をなげだし、
   敵も味方もみんな肩をくみ
   『わーはっはっはっはっは
    いーひっひっひっひっひ
    ファーファッファッファッファ
    ヒィーヒッヒッヒッヒッヒッヒ』


   世界中で一人のこらず手と手をつなぎ
   『ホーホッホッホッホッホッホ
    ウァーファッファッファッファ
    ガーハッハッハッハッハッハッハ』
   おなかがよじれるほど、みんなは笑いつづけました。


   きがつくと、いつのまにか戦争は終わっていました。
   こうしてみんなで心配したウクライナ戦争を
   止めることができたのです。

   この21世紀の現代に
   戦争がはじまり、悲しんでいた人々も
   それが笑いによってさけられたことを、心の底から喜びました。
   でも、それが、きのこのしわざとは
   だれひとり、きづくにんげんはいませんでした

   さきほど、花ばたけにいってみますと、
   知らん顔して、ばふんたけが
   ひなたぼっこをしていました。

    ずーっと北のほうに
   おおきなおおきな原野があります。
   一度、行ってみませんか?
   たぶん、なんにもおこらないと思うけど


(註)
ばふんたけ ささくれひとよたけのこと 
        ばふんによくはえているのでこの名がある

わらいたけ このきのこは、北海道にはありません
      したがって、この話は実際にあったことではありません。
      このきのこには毒があり、食べて苦しむ顔が
      まるでわらっているように 
      みえるので、この名があります。
      とても危険なので、平和のためであっても、
      けっして、みなさんはまねしないでください


#創作大賞2023 #ファンタジー小説部門

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