可視カフェとPurpose Carvingで自分のパーパスをアップデートするプロセスを公開した話
みなさん、こちらの記事はお読みになりましたか?
もちろんお読みになりましたよね?
2020年6月に、自組織の幹部社員6名を対象に行われたパーパスカーヴィング。
Twitterにも以下のように書きました。
このPurpose Carvingを経て、私も自分のパーパスをきちんと言語化しようと奮い立ちました。しかし、きちんと言語化することにあまり自信が持てませんでした。というのも、今から3年ほど前に同じように自分のパーパス(当時は自分の「ミッション」と呼んでいました)を言語化することに一度チャレンジしたのですが、うまく言葉にできなくて諦めてしまったという経緯があったためです。
今回は、そんな過去のことも少し振り返りながら、どのように自身のパーパスを言語化し、それをアップデートしていったのかを残していきます。
なぜパーパスを言語化したかったのか
基本的に自分が「面白そう」「やってみたい」と思ったことは何でもやってきました。言い換えれば「後先を考えずに行き当たりばったりで行動してきた」とも言います。それが悪いというわけではなく(むしろ行き当たりばったりな生き方を変えずとも)、自分が目指す世界の実現のために、やることを選んでいけるようになりたいと考えていました。自分の中に一本筋を通すというか、自分の軸を作るというか。
それはなぜか。私は自己紹介にすごく苦手意識があったのです。
『私の名前は○○です。○○株式会社の○○という部署で○○の仕事をしています。○○の資格を持っています。〇歳と〇歳の子供がいます。』
( ↑ よくある自己紹介のテンプレートのつもりで書いています)
私がデザイナーやグラフィックカタリストとしてやっている領域は、幅広くて複雑で、一言で説明することはなかなか難しい。でも自己紹介をする場って、あまりそこに時間をかけすぎてはいけないようなプレッシャー(こういう場で急に働いてくる「お前のことなんてそんなに興味ある人いないんだからさくっと次に行け」という自己肯定感低い妖精の囁き)があり、テンプレートのような当たりさわりのない自己紹介をしてしまっていました。(※普段は自己肯定感高い方です)
でもこれって、自分の外側のことしか話していないなって思ったんです。自分の殻というか、鎧というか、自分を覆っている膜でしかないと。あれ?全然「自己」を紹介していないな?と。
「自己」を紹介するために自分が普段やっていることを話そうとすると、説明が多岐に渡ってしまう。でもその多岐に渡る内容を私がどういう想いで、何のためにやっているのか。私が目指している世界はどんなものか。一本筋が通っていれば、それを伝えることが自己紹介になるのではと思いました。
それを言語化することで、これからの自分の判断や行動に自信が持てるようになるし、行き当たりばったりで行動していただけでは見えていなかった世界が見えるようになるのではないかと思いました。
そんな想いから、私のパーパス言語化の旅ははじまりました。
やってみたこと①自分のこれまでの活動を棚卸する
まずは子供の頃から現在に至るまでの自分の活動を棚卸することから始めました。
自分がどんなことが好きで、どんなことに情熱を注いできたのか。どんなことがターニングポイントだったのか。ひたすら描き出していきます。やったことや起きたことだけではなく、その時自分がどう思ったか、どんなことを考えてそこに至ったか、といった感情面も残すようにしました。
一通り描いてから「ここは重要だったな」と思うところに色を塗ったりしていきました。
これまでの活動棚卸で描いた絵
やってみたこと②自分が実現したい世界を描く
自分の活動の棚卸で抽出した重要だと思うところなどを参考にしながら、思考を少し未来の方へシフトさせていきます。
なぜそれが重要だと思ったのか、この感情はどういったものごとから生まれたのか、私が変えたいと思うこと、目指したい世界はどのようなものなのかを考えていきました。
「目指したい世界」と言っても、「世界平和」とか大きなものではなく、「子供がこういう想いで生きていける世界になるといいな」とか、「チームのみんながこういう想いで働けたらいいな」とか、身近な人をイメージしながら描いていきました。加えて、その世界の中で「私がどういう役割を担っているのか」も描くようにしました。それが私のミッションになると思ったからです。
実現したい世界と、そこでの私の役割を描いた絵
ここまで描いて、「色々な理由があって口には出せないけれど、本当は○○だったらいいなと思っている人に、光や水を与えるような人になりたい」という想いが自分の下地にありそうだ、ということが見えてきました。
でも「ミッション」というにはイマイチというか、これ以上にしっくりくる言葉にできませんでした。(「与える」っていう言葉がなんか上から目線に感じてやだな~とかとか…)でも一旦言葉にしたので、まずはそれを使おう!ということで、過去に書いたこの記事でも使っています。
「参加者の当事者感を高め、次の一歩を踏み出す支援をすること」「小さな好奇心の種に光と水を与えること」を目標に、様々な現場で議論や対話、人々の想いをリアルタイムに可視化する活動をしています。
「ミッション」とは言いにくかったので「目標」と言っています
やってみたこと③他者のパーパスに触れる
自己紹介の記事の日付をみていただければわかるように、この言語化をしたのが1年前。しっくりはきてはいないけど一旦言葉になったので、一息つきつつ新たな言葉との出会いを楽しもう!くらいの気持ちでいました。
そんな中、コロナの感染拡大によって働き方が大きく変わっていきました。同時に、Twitterを中心に「パーパス」という言葉を目にする機会がすごく増えました。富士通を含む様々な企業がパーパスを言語化していたように感じています。
今この時代に、企業はどんな言葉を選ぶんだろうか?ととても興味が湧いたので、目についたものは片っ端から見ていき、自分のパーパス言語化の参考にしていきました。
余談)CRAZYさんのパーパス言語化のプロセスがすごくわかりやすかったのでオススメです。言葉の選び方も完成したパーパスもとってもすてき…。
同僚のタムカイさんと小針さんは、もう何年も前から自分のパーパスを言語化していて、普段の活動や行動を見ていても、自身のパーパスを起点にされていることがビンビン伝わってくるので、全てを参考にしてました。
中でも小針さんのこれまでの活動の中で生まれた、「誰もが『私』を主語に語り合う」という言葉が、過去に私が考えた「本当は○○だったらいいなと思っている人に、光や水を与える」に重なる部分をすごく感じて、「私がやりたいの、これかもしれない」と思い、この言葉をもらうことにしました。
やってみたこと④パーパスを言語化する ver.0.1
他者の様々なパーパスや言葉に触れることで、自分の中にヒントや素材が集まってきた感覚がありました。あの時はしっくりくる言葉にできなかったけど、今ならパーパスとして言語化できるのではないか?と思い、もう一度言語化にチャレンジしていきました。
「誰もが『私』を主語に語り合う」ために、私にできることは何だろう?
私ができること、得意としていることは、対話の場をデザインしたり、グラフィックによる可視化をすること。
「普段は言いにくいことも、この場なら、グラフィックという形で残るなら、言ってみようかな」と思ってもらうことができるのではないか、と考え、「誰もが「私」を主語に語り合うための機会と勇気を届ける」を私のパーパスver.0.1としました。(最初に考えたやつは、パーパスとは言えないな~ってことで、これをver.0.1にしました)
すごくしっくりきているわけではないけれど、小針さんのnoteにもある通り、パーパスは決して「一度言葉にしたらそれで終わり」というものではなく、荒く削って表現し、日々の気づきをえて、また削って表現していくもの。
活動を続けていきながら、自分のパーパスを引き続き磨いていくことにしました。
パーパスは自分ひとりで考えなくてもいい
これまで色々な人からヒントを得つつも、基本的には自分の力でパーパス言語化にチャレンジしていた私は、部のマネージャー向けPurpose Carvingで「他者との対話の中でパーパスを言語化すること」にすごく可能性を感じていました。
他者からの問いに答えながら自分の中にあるものを掘り起こしていくこと。
自分では思いつきもしないような言葉を他者からもらうこと。
自分ひとりで考えるよりも、深く自分の中に潜ることができ、しっくりくる言葉を遠くまで探しに行くことができそうだと感じた私は、他者との対話の中で自分のパーパスをアップデートしたいと思うようになりました。
そんな時、仕事をご一緒したせきこさんとお互いの可視化活動の話になりました。
その時せきこさんと一緒にやっていたお仕事
お互いの活動に対する姿勢、話の聞き方や書き方、グラフィックの特徴など、様々なことをフィードバックしあう中で、せきこさんが実践されている可視カフェについてこんなことをおっしゃっていて。
「これまで本当に色々な人のお話を聴いてきたけれど、最後にはみんな『あ、今日のゴールはこれだったんだな』って、整うんですよ」
そんなお話を聴いてしまったら、「3年かけてもまだモヤモヤしてるんで、私も整いたいです!」とお願いし、自分のパーパスのアップデートをテーマに、可視カフェをやっていただくことにしました。
でも同時に、組織に所属する人間として、可視カフェの「1対1」というやり方にもったいなさを感じました。せきこさんの聴く力、描く力を間近で見れたらめちゃくちゃ勉強になるはず。それに、パーパスの言語化でモヤモヤしている人はきっとたくさんいる。私が他者の力を借りてパーパスをアップデートするプロセスを公開することで、同じような想いを持っている人の勇気になったり、これを機に自分のパーパスを言語化してみよう、と思えるきっかけになるのではないか?
そんな思いから、他者との対話の中で自身のパーパスをアップデートするプロセスを公開する「可視カフェ × Purpose Carving」の企画がスタートしました。
やってみたこと⑤可視カフェ × Purpose Carving
せきこさんと話してからおよそ1か月後の11月中旬、可視カフェ × Purpose Carvingをオンラインで開催しました。
会の招待メールは、私が所属する富士通デザインセンターの全社員に送付(興味がありそうな人に自由に転送可)と、公開型のイベントとして実施しました。また、2時間の枠の中で入退室自由、作業BGMとして耳だけ参加も大歓迎、後ほど録画データ公開など、できるだけ気軽に参加してもらえるようにしました。
正直どれくらいの方が参加してくれるかわかりませんでした。私は社交的な方ではないし、招待メールを送った人数(約200人)の1/5くらいしか面識がありません。
当日ドキドキしながら時間を迎えると…
60名弱の方が参加してくれました!
想像よりもたくさんの方が参加してくれました!とはいえこれは可視カフェ × Purpose Carving。私と関子さんの対話を中心に会を進めていきます。
改めて私はこれまでどんなことを経験し、どんなことを大切にしたいと思っているのか。色々な方向に話が飛んだり、うまくことばにならなくて止まったりしながらも、せきこさんのグラフィックや問いかけでゆっくりじっくりと自分の中に潜っていきました。
めちゃくちゃ楽しそうに話してるw
参加者の方には気になったことや気づいたことなど、どんなことでもいのでチャットに書き込んでもらえると嬉しいです、とお伝えしたところ…
参加者の方が書いてくれたチャットコメント
めちゃくちゃ沢山コメントをいただきました。このコメントが本当にありがたかった!新たな問いをリアルタイムにどんどんもらえたし、自分の中でそれほど大事に思っていなかったものが、他者の言葉ですごく大事なものだったことに気づかされたりして、私とせきこさんの対話をさらに深めてもらいました。
せきこさんは私との対話をまわしながらも、語られた言葉たちをどんどん描き残してくれます。(すごいなマジで…)
せきこさんが描いてくれたグラフィック
せきこさんの「聴きながら・場をまわしながら・描く」というスキルもめちゃくちゃすごいんだけど、私が最も「ありがたいな」と思ったのは、「うまく言葉にできない」「なんかわかんないけどちょっと気になる」といった、「自分の中で答えが出ていない状態」を常に歓迎し続けてくれたこと。
「折角聴いてくれているのにちゃんと伝えられなくて申し訳ないな」という想いから、何度も私は「すみません」という言葉を口にしたけれど、その度にせきこさんが「いいんですよ、そこに重要なことが隠れてそうですね!」「可視カフェはモヤモヤしていることをそのまま伝えるところですよ!」と言ってくれて、めちゃくちゃ心がラクになりました。
ついつい仕事では答えを急ぎたくなってしまうけれど、今自分の中で引っかかっていることを、そのまま表出化させることで、後から見てもっと大きな気付きにつながったりすることがあると、その後パーパスをしっくりくる言葉にできた今はわかります。
あっという間2時間が経ち、可視カフェ × Purpose Carvingは終了。当初目指していた「整った状態」は「具体的な言葉でパーパスをアップデートできた状態」でしたが、この時間の中ではそこまでは至りませんでした。
しかし、「ここをもう少しコネコネしたら整いそう」というところまでたどり着くことができました。チャットでもらった沢山の言葉のギフトと、せきこさんに書いてもらったグラフィック、そしてこの場の録画データを振り返りながら、改めて自分のパーパスの言語化に挑んでいきました。
やってみたこと⑥パーパスを言語化する ver1.0
元々文字よりも絵で物事を考える方が自分に合っていることを想いだした私は、チャットやせきこさんのグラフィックの中から自分に引っかかる要素を絵で抽出し、しっくりくる言葉を探していきました。
要素を抽出しながらグラフィック
絵で描くのと言葉で書くのを行ったり来たりしながら、ついにしっくりくる言葉にたどり着くことができました。私のパーパスver1.0はこちら!
みんなのあたまとこころをやわらかくする。
なんと可視カフェ × Purpose Carvingの翌日にできました…!整った…!
この言葉ができてから改めて「やってみたこと①②」で描いたグラフィックを見返してみました。
①②の時にはこの言葉は出てこなかったけど、この言葉につながる要素はちゃんと残っていて、「やっぱり私はこれを大事にしたかったんだな」と改めて納得することができました。
過去にやったことも、今やっていることも、全部この言葉でつながっている。
そんな風に思うことができました。
可視カフェ × Purpose Carvingのチャットで報告
やってみた振り返り
可視カフェ × Purpose Carvingのアンケート結果を踏まえつつ振り返ります。
参加者のほとんどが私と同じ部署の方かと思いきや、かなりいろいろな部署から参加いただいたことがわかりました。部のマネージャー向けPurpose Carvingも、私のことも全然知らない方もいらっしゃったと思います。
よく知らない相手であっても、勉強会のような直接スキルアップにつながるようなものでなくても、興味を持って参加してくれる人がいる(60人弱も!)、ということに、ものすごくインサイトを感じました。(フリーコメント欄でも続編やシリーズ化を望む声が多くありました)
また、「あなたはどのように自身のパーパスを見つけたい(さらに磨きたい)と思いますか?」(複数回答可)という問いに対しても、他者の力を借りたいという意見が多く見られました。
私は一人で熟考→複数人との対話→一人で熟考のプロセスを取りましたが、どれか一つの方法ではなく、色々な方法を往復したり、色々な人と話すことでどんどん言葉が磨かれていく実感がありました。
一度考えたらそれで終わりではなく、他の人にそれを伝える場を設けたり、モヤモヤしていることを相談する場を不定期にでも設けることが重要だと感じました。
また大前提として、私が心地よく感じたせきこさんの在り方のように、『自分の中で答えが出ていない状態』を歓迎してくれる相手や場があることがさらに重要だと感じました。ここは相手の信頼度もあると思うので一朝一夕で解決できる問題ではないのですが、私がこれから関わっていく場では、きちんと意識したいポイントとして肝に銘じます。
おまけ:せきこさんのお話をえほんやくしてみた
可視カフェ × Purpose Carving終了後、せきこさんから「私の話を1時間とか聞いて描いてもらうことって可能ですか?」とお声かけいただき、「喜んで―!」とお受けしました。
せきこさんのお話をききつつ、可視カフェをしてもらった経験も踏まえて、私が感じたことを絵で描いていきました。
こんなのを描いたよ
書いたグラフィックを見てせきこさんが「やっぱりかすみさんのはえほんやくですね!」って言ってくれたの、すごい嬉しかったなあ。
えほんやく【絵本のような翻訳】:「文字で書けるコトは、すべて絵で描ける」をモットーに、議論や対話、ものごとやサービスの仕組みを絵本のように翻訳しています。
「えほんやく」は2011年ごろ「グラフィックレコーディング」という言葉を知らなかった私が作った造語ですが、なんだかんだ「自分がやってること」としてこれ以上にしっくりくるものはないなって、いつもここに戻ってくる言葉です。
2021年に向けて
パーパスver1.0ができたので、来年はこれを積極的に自己紹介に使っていくこと、これを判断基準にものごとを考えていくことを実践していきます。そしてもっともっとしっくりくる言葉がないか、アンテナを張り続けていきたいと思います。(あと痩せたい…)
2020年もありがとうございました!来年もよろしくお願いいたします!
グラフィックレコーディングアドベントカレンダーの記事でした!今年もお世話になりました!
\Purpose Carvingの活動がWorkStoryAwardを受賞しました/