公開1on1で、マネージャーに個人のパーパスを聴いてみた -Purpose Carving-
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公開1on1で、マネージャーに個人のパーパスを聴いてみた -Purpose Carving-

「組織のありたい姿を描きたいんだよね。どうしたらいいと思う?」

公開1on1で、マネージャーに個人のパーパスを聞くことになったきっかけは、上司から言われたこんな一言でした。

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コロナ禍の中、私が勤めている会社は新しい働き方にシフトし、多くの社員がテレワークとなりました。

通勤がなくなったことで体の負担は軽くなったし、時間の使い方も変わり。
いい面も多くありますが、一方で
「誰が何をしているのか見えにくくなった」
「コーヒーメーカーの前で会話したことが次につながっていくような、セレンディピティが減った」
「組織がどの方向に向いていくのかわからない」
という声も聞こえていました。

そんな折、上司からきた「組織のありたい姿を描きたい」という相談。

何度か上司と話し合い、結果として自組織にいるマネージャー6名に、個人のパーパスを聴く「Purpose Carving(パーパスカーヴィング)」を実施しました。

この記事では、Purpose Carvingとは何なのか、実施することになった経緯の詳細、どんな風に実施したか、その気づきについて書いてみます。

Purpose Carving(パーパスカーヴィング)とは

Purpose Carving(パーパスカーヴィング)とは、「自分自身のパーパスを彫りだし、言葉にする対話のプログラム」。そんな風にお伝えしています。

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私は長年IT企業(今はDX企業へとシフト中)に勤めており、霞が関でシステムの設計と実装をしたり、若手の育成を担当したり、ペンと紙と問いを持って対話を描いたりしてきました。

その中で見つけたとても重要なことは、「一人一人のストーリーを聴き、私自身も何者であるか、何をしたいのかを伝え、共に新しい物語をつむいでいく」こと。

ITシステムの導入も、人材育成も、多くの人と関わりあいながらゴールに向かう仕事です。コンフリクトが起こることも、多々あります。そんな時、プロジェクトメンバーの話を丁寧に聴き、私自身の想いも伝えると「個人の立脚点を理解でき、対立を超えて進んでいくことができる」といった経験をしてきました。

そんな地道な活動をしていた中、自社が「パーパスの定義」をすることになり。

いろいろな解釈があるかもしれませんが、私は「Purpose(パーパス)」を「存在意義、存在目的」と捉えています。最近は「パーパスドリブン経営」といった言葉もでてきており、個人だけでなく組織マネジメントやブランディングの分野でも活用されています。

自社がパーパスを定義したことをきっかけに、同僚のタムカイさんと会話して、自分たちが実践してきたことを「Purpose Carving(パーパスカーヴィング)」と名付けることにしました。

「Carving(カーヴィング)=彫刻」という言葉を選んだのは、お父さんが彫刻をされているタムカイさん。ミケランジェロの残した「彫刻家は大理石の中の天使を自由にする」というエピソードを元に、「パーパスは新しく創りだすというよりも、その人が既に持っているものを見出して彫りおこしていくもの」と解釈したからです。

個人のストーリーを傾聴し、可視化を交えて俯瞰することで、その人自身が自らのパーパスに気づくことを促していく。Purpose Carving(パーパスカーヴィング)は、そんなプログラムとなっています。

Purpose Carvingを実施することになった経緯

上司から「組織のありたい姿を描きたいんだよね。どうしたらいいと思う?」と言われたとき、私の脳内を巡ったのはこのような言葉でした。

組織のミッションを以前全員参加で定義したみたいだけれど、今その言葉がこの組織であがることってほとんどない。

その実績を考えると、組織のありたい姿を描いても、メンバーの納得度は低そう。

状況は常に変化しているし、組織のありたい姿もすぐに変わってしまうのでは…。

このころ、自社は親会社による吸収合併を控えており、会社全体は「不安と期待が入り混じる、カオスな空気」に包まれていました。そんな状況なので、「現場のみんなが判断するための指針」や「その指針をつくるための組織のありたい姿」がほしいと思う上司の気持ちは、よくわかりました。

けれど、今の状況で「組織のありたい姿」を描いても、絵に描いた餅になる可能性大。そうなると、余計にメンバーの気持ちは離れていきます。ならば、「組織として」ではなく、「マネージャー一人一人を主語にして」ありたい姿を聴き合い、描いていくのはどうだろうか。

よく考えると、私は上司がどんなことを軸に仕事や人生に向かっていて、今後どうなっていきたいのかを知りません。

「組織が」ではなく、「あなたはどう思うのか、考えるのか、やりたいのか」聴いてみたい。

そしてそれを聴くことは、今のこの状況で「組織のありたい姿」を描くよりも、より必要でかつ重要なことだと思う。

そんなことを上司に提案してみたところ、「なんだか1on1の逆バージョンみたいな感じだね。とりあえずやってみよう」とあっさりOK(笑)。

オンライン(Microsoft Teams)で実施することとなり、「だったら聴講という形で部員全員誘っていいですか?私以外の人も上司の話聞きたいと思うし」と言ったらこちらもあっさりOK。

さらには上司一人だけでなく、部のマネージャー全員(6名)の公開1on1 Purpose Carvingを実施することなりました。

Purpose Carvingの進め方

「公開1on1 Purpose Carving」を「部のマネージャー6名」に実施するにあたり、事前セッション、個人セッション、事後セッションの3部構成とすることにしました。

1.Pre-Dialogue Session(事前セッション)
2.Personal Purpose Carving(個人セッション)
3.Post Dialogue Session(事後セッション)

ここからは、実際のやり方をダイジェストで記載していきます。

1.Pre-Dialogue Session(事前セッション)

自社がパーパスドリブン企業と謳ったとしても、会社のパーパスがいきなり身近になるわけではありません。また、そもそも「パーパス」という言葉が身近になるわけでもありません。 

「パーパスとは何なのか、何かしら共通認識を持てるようにしたいな」とは思いつつ、「パーパスの定義を説明することに、多くの時間を割きたくない」という気持ちもありました。

どうしたら、定義を冗長に説明するでもなく、けれどパーパスというものが身近に感じられるだろうか。

今までの自分のパーパスを書きだしてみたところ、タムカイさんから「小針さんと僕の個人のパーパス履歴を公開しつつ、どんな風につくってきたか話題提供し、そのあとマネージャー6名と話してみようよ!それがパーパスを身近に感じられる近道になると思うよ!」と言われ、やってみることにしました。

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毎年年末に振り返りをしており、
そこで自分のパーパスを見直すようにしています

その後マネージャー6名と対話。一番話題に上がったのが、「合力(ごうりょく)」という言葉。セッション全ての対話は、同僚の松本さんがグラフィックレコーディングをしてくれました。

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「合力(ごうりょく)」とは、「同時に働く二つ以上の力と効果が全く等しい、一つの力」のこと。

「会社のパーパスと個人のパーパスの位置づけを、どうしていったらいいんだろう?」という問いからこの言葉がでてきました。
ちなみに私たちの会社のパーパスはこちら。

わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にしていくことです。 

大きな会社であるがゆえ、パーパスの抽象度が高く「具体的にどういうことなの?」と思う人もいるかもしれません。一方で私は、「どういった個人のパーパスをも受け入れる余地のある言葉」だと感じています。

会社のパーパスに無理に合わせるのではなく、会社のパーパスと個人のパーパスの両方があるからこそ、「あっちの方向にいけばいい」と進んでいける。そんな力を引き出すには、会社のパーパスだけでなく、個人のパーパスが必要だと私は考えています。

20200618_PurposeCarvingプレダイアログGR

プレセッション全体の、グラフィックレコーディング

2.Personal Purpose Carving(個人セッション)

事前セッションの後は、マネージャー一人一人の個人セッション。インタビューをしながら、それぞれのパーパスについて会話の中で触れていきます。

けれどいきなり「あなたの個人のパーパスは何ですか?」と聞いても答えにくいので、事前にライフラインチャートを書いてきてもらいました。

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ライフラインチャートの記入イメージ

ライフラインチャートを元に、過去と現在、そして大切にしている価値観を聴きました。また、自社のパーパスのどこに共感するか、未来の兆しや可能性についても聴いていきました。

オンラインかつ部のメンバーも参加してくれるため、適宜チャットからのコメントや質問もインタビューの中に含んでいきます。こういった双方向のやりとりがぐっとしやすくなるのは、オンラインならでは。

最後にグラフィックレコーディングを描いてくれていた松本さんから振り返りをしてもらいつつ、参加者の皆さんは「ここまでで感じたこと、キーワード、パーパスにつながりそうな言葉」などを共有のエクセルファイルに記載してもらいました。私はこれを「言葉のギフト」とよんでいます。

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読んだら泣けてきちゃうマネージャーも…

個人セッションでは、最後にマネージャーから一言をもらいます。
印象に残った言葉を、記載してみます。

いつも1on1では自分が聴くばかりで、「話を聴いてもらう」ってことがなかった。話を聴いてもらえて、満たされた気持ちになった

マネージャーだし、かっこつけて話さないといけないんだって思い込んでた。でもかっこつけなくていいんだって気づいたら、いろいろ話せるようになった

今まで部下の1on1やる中で、「何やりたい?」って聞いていた。それで返答はもらうんだけど、どこかで「それって本当なのかなぁ…」って思ってた。今回ライフラインチャートで聴いてもらったように、過去の経験やストーリーを聴けていたら、もっと部下のことがわかったのかもしれない自分もそういうところから1on1を始めてみたい

全員GR_ぼかし

個人セッションのグラフィックレコーディング

3.Post Dialogue Session(事後セッション)

そして最後のセッション。
1.の事前セッション、2.の個人セッションをふまえ、個人のパーパスを言葉にしたものをもちより、どのような思いを込めたかヒアリングしました。

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インタビュアーのタムカイさん(左)と、マネージャーのみなさん

一人一人のパーパスに、これから向かいたい姿とこだわり、そしてこれまでのストーリーが感じられ、「なんとなく知ってる6人のマネージャーたち」から「こういったパーパスを持った、●●さん」に変わり、それぞれのマネージャーたちと出会いなおした感触を持ちました。

20200630_PurposeCarvingポストダイアログGR

それぞれのパーパスに「その人らしさ」を感じられたのは、
個人ごとのPurpose Carvingのセッションがあったからこそ

やってみて、どうだった?

事前・個人・事後セッション、全8回の平均参加率は67%。約7割の部員が参加してくれ、関心の高さがうかがえます。

アンケートを取ったところ、マネージャーのみなさんは
「Purpose Carvingをやってみてよかったと思うか」
「社内外問わず他の組織でも実施することを進めようと思うか」
という質問に対し、「とてもそう思う」が100%という高評価でした。

また、参加者のみなさんのアンケートでは95.5%の人が、「自組織でPurpose Carvingが開催されてよかった」と回答しています。

記入欄を見ると、マネージャーは「想いを掘り起こし、整理されることや、他幹部の話が聞けたこと」に価値を感じており、マネージャーと参加者の皆さんともに、「他メンバーやトップ、顧客向けにPurpose Carving実施を望む声」が多く出ていました。

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このセッションから2か月後。
松本さんが、「あの時言葉にした皆さんのパーパスを、今振り返ってどのように感じていますか?」と、上司に聴いてくれました。

「今はあの時とはちょっと違うことを考えてる。デザインの力でよくする、っていうこと、デザインってすごいんだよ、っていうことをもっと言っていきたい。・・・それが今の想いに近い」

パーパスは決して「一度言葉にしたらそれで終わり」というものではなく、荒く削って表現し、日々の気づきをえて、また削って表現していくもの。

それを繰り返す中で、個人の中にある源泉に触れ、言葉として昇華していく。

上司とのやり取りを経て、あらためてそんなことを思いました。

Purpose Carvingをやってみたくなった人へ

マネージャー6名のPurpose Carvingを実施したあと、今年の新入社員の方が「公開型の2 on 1」(新人さんとそのトレーナー 対 職場の1名で対話するカジュアルなオンラインセッション)という企画が始まったり、私は自身が参画しているプロジェクトの皆さん向けに、大人数でもできるPeer Purpose Carvingの開発をして提供したりしました。

もしここまで読まれて、「うちの会社、組織、チームでもやってみたい!」と思った方がいたらぜひこの記事を参考にしつつ、あらたなやり方の模索も含めて実践してもらえたらと思っています!

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2020/12/9 追記
これからの働き方に関するストーリーを集め表彰する「Work Story Award」にて審査員特別賞を受賞しました。評価いただいた内容のサマリはこちら。

・その企業規模にも関わらずマネジメントの姿勢として双方向性のコミュニケーションを重視していることが、非常に魅力的
・大企業での実績だが、小規模の企業でも、オンラインでもでき、「実現可能性」「展開性・汎用性」が高い

記事にもしていただきました^^

2021/03/10 追記
最初は部門ではじめた小さな取り組みだったのですが、私がジョインしている全社DXプロジェクトもPurpose Carvingからスタートすることにしました。そのストーリーについて語られている動画がこちら◎

2021/04/23 追記
どんどん話が大きくなりまして、自社の社外メディア、FUJITSU JOURNAL(日本語)とFUJITSU BLOG(英語)に掲載されました。現場で小さく始めたとしても、こんな風に全社の動きになっていけることを、お伝えできればと思っています。 

2021/6/28 追記
日経デザイン、日経クロステック、日経新聞、COMEMOさんに掲載されました



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経営と現場の”わかりあえなさ”を解消し、次なる物語を共にデザインするTransformation Designer。 SE、人事人材開発を経て現職。 「日本企業を、しなやかに強くする」というパーパスを胸に、「Always with humor」をモットーとして活動しています。