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かすみを食べて生きる52:しびれしびれ京に上れ

脳梗塞 発症1か月と19日目:リハビリ病院29日目
食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食(昼食のみ)と鼻からの経管栄養。食事以外の時間はスプーン半分の水分を一度に10口まで飲んでよい。
状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。階段は上り下りで少しめまいがする。

後遺症のしびれや感覚異常は日々変化する。
やるとしびれが強くなる事もある。

これまでの記録はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症1か月と18日目:リハビリ病院1か月目㉘
 
発症1か月と20日目:リハビリ病院1か月目㉚>


しびれしびれ京に上れ

空き時間にウクレレを弾きに中庭へ行った。
いつもは長くても30分程度だけど、めずらしく1時間くらい時間が取れそう。
しばらくジャカジャカやって、さあ病室に帰ろうと立ち上がった瞬間、右足に強いしびれが走った。
あかん、これでは歩けない。

どうして急に強いしびれが出たのか。
思い当たる節として、中庭のベンチの形状がある。
ベンチはよく公園にあるものと似ていて、座面が背中に行くほど下がっているタイプ。
背中を背もたれに預けるとリラックスできるけど、まっすぐ座ると膝上の裏の当たりが圧迫されてしまう。
そうなるとしびれが強くなる。
練習の途中に気づいたので、深く座るのをやめて浅く座ってみた。

そしてもう一つの思い当たる節は、ベンチに浅く座った時、右足を組んでその膝の上にウクレレを置いていた事。
これがよくなかった。
正座をした後のような強いしびれ。
このままこのしびれが一生続いたらどうしようと不安になったが、しばらく揺らしたりさすったりしていると、歩ける程度には落ち着いてきた。
長時間座る時には、椅子の形状と座り方には気をつけた方がよさそう。

感覚異常について調べよう

夕方、私は右顔面に微妙な感覚異常を感じていた。
メンソールを塗って扇風機で風を当てているようなスースーする感じ。
手足のしびれも強く出ている。
念のためリハビリ医の先生の所に行く。
頭痛はなかったので、様子見となった。

不思議だったのは感覚異常が右顔面に出たこと。
ワレンベルグ症候群で感覚障害は、顔面では血管性病変と同側、首から下は体幹や反対側に出ると聞いている。
私の脳梗塞は左。瞼の垂れる眼瞼下垂も左。
感覚異常も左顔面に起きそうなのに、なぜだろう。
気になったので、スマホからwebで調べた。
「ワレンベルグ症候群 感覚障害」
すると一つの論文にあたった。

『Wallenberg症候群における嚥下障害と付随する症候』
藤島一郎(浜松市リハビリテーション病院)
2009 年 55 巻 Suppl.2 号 p. S129-S141

J-STAGE

2009年2月に行われた、第32回日本嚥下医学会にて教育講演で口演したものだと書かれている。
藤島先生、調べると嚥下に関する本や教科書もたくさん書かれてる。
いくつか見た中で、嚥下障害を中心に私が知りたかったワレンベルグ症候群に関連する症状について、まとめて書いてくれているものだった。

ワレンベルグ症候群の歴史の部分の書き出し。

Adolf Wallenberg(1862-1949)は森鴎外と同じ年に生まれている。

『Wallenberg症候群における嚥下障害と付随する症候』藤島一郎

森鴎外、ということは明治。
人はむなしく(1867年)大政奉還。生まれはまだ江戸時代か。
講演用として書かれているからか、入りだしからわりと読みやすい。

そして気になっていた、なんで右顔面しびれるのか問題。

Wallenberg症候群では顔面と四肢の温痛覚障害部位が左右異なる、いわゆる顔面交代性の感覚解離が教科書的に記載されるが、臨床場面では必ずしも典型的な例ばかりではない。

『Wallenberg症候群における嚥下障害と付随する症候』藤島一郎

教科書通りのケースばかりでもなさそう。
その後に、温痛覚が障害されている部分に着目した分類の研究について紹介があった。

延髄では顔面の温痛覚を司る三叉神経脊髄路・脊髄路核とその上行路である三叉神経視床路、また四肢体幹の温痛覚を伝える脊髄視床路が存在し、病巣がどの部位で神経核や神経路を損傷するかによって症状の出方が異なる。

『Wallenberg症候群における嚥下障害と付随する症候』藤島一郎

うーん、神経たちの名前難しい。
単語ごとに区切ってなんとなくでイメージ。
顔面の温痛覚を司る神経路にはいくつかありそう。
病巣の場所とそれにより損傷した神経路によっては、顔面も病巣側と反対に感覚障害が出ケースもあるらしい。
温痛覚に障害が起きた部位と病巣についての分類表も載っている。

感覚障害は発症から経時的にもかなり変化するので、さらに臨床家の頭は混乱する。診察した時点で所見を正確に記載し、経時的変化があることを念頭に置いて整理するとよい。

『Wallenberg症候群における嚥下障害と付随する症候』藤島一郎

そう!そうなの!
患者本人もそれで混乱してるの!!
でもそれがいまいち伝わらなくて困っている。
感覚障害は、外から見て評価がしにくい。
もしかすると私がそう思っているだけなのかもしれないとも思えてくる。
でも歩くのに支障が出るほどのしびれが来ると動けなくなる。

ここまで読んでひとまず納得した。
ありがとう、藤島先生。
もう少し読みたいけど、スマホで論文を読むのはちょっとしんどい。
退院したらプリントアウトして読もう。

お昼ごはん#8

今日もランチはミキサー食。
ミキサー食でも、お食事は楽しみ。

おかゆアート:まるっこい子

昨日の「すし」は主張が強かったので、今日は絵的なもので。
他のお皿に円状におかずがのっていたので、おかゆにもまるっこい子を書いてみた。

今日の献立はこちら。

  • しいらの照り蒸し、にんじんの甘露煮添え

  • 大根とじゃがいもの旨煮

  • おかゆ

今日もお魚。
じゃがいも、意外と発症後初めてかな。
いただきます。
まずしいら
昨日の鯛とはまたちがったお味でおいしい。
けど少しザラザラして、鯛の方が喉どおりはいいかな。
同じ魚でも結構違う。
今のところのど通りの良さは、鯛>しいら>鮭。
もしくは昨日は煮つけで今日は照り蒸しだから、水分量がちがうのかな。
付け合わせのにんじんは食べやすい。
大根は安定の喉通り。
しかしじゃがいも、これは気をつけないとのどに引っ掛かる。
喉どおりで言うと里芋、南瓜と同じ感じ。
でもでんぷんだから、しっかり咀嚼である程度は対応できる。
おかゆは今日も頑張って咀嚼。
しいらとじゃがいもにてこずり、1時間20分かかるもなんとか完食。
ごちそうさまでした。

ーー振り返って

自分の記録を見て驚きました。
この人、しびれがひどい時にスマホで論文を読んでる。
そんな事せずに寝た方がいいのに、と今なら思います。
今回もう一度読んで、森鴎外の下りで「あ、これ読んだわ」となって、これを読んで得た納得感も思い出しました。
そしてもう一度読んでも教育講演だからか、どこか愛を感じる論文でした。
調べた際にいくつかサイトも見たのですが、運営元がわかりにくいサイトより、書いた人や手続き、引用がはっきりしている論文を見た方が、結果的に知りたいことをちゃんと知れる感じがしました。

しびれは今も日々変化をしています。
天候、気温、気圧、寝不足、月経周期あたりがわかりやすいトリガーです。
先日もゲリラ豪雨が来た際、少し前に体が重くなり強いしびれが来て、雨の間動けず、雨が去るとふっと体が軽くなって動けるようになったことがありました。
その時は家にいたので寝て過ごしましたが、外でこれが来たら厄介だなと思います。

「しびれしびれ京(みやこ)に上れ」は足がしびれた時のおまじないだそうです。
家で私がしびれを訴えると夫が言ってくれます。
残念ながらあまり効果はありません。



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