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かすみを食べて生きる53:居残り給食でも褒められる

脳梗塞 発症1か月と20日目:リハビリ病院30日目
・食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食(昼食のみ)と鼻からの経管栄養。食事以外の時間はスプーン半分の水分を一度に10口まで飲んでよい。
・状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。階段は上り下りで少しめまいがする。

子どもの頃は食べるのが遅くて、給食はよく居残り組だった。
30年以上を経て、私はまた居残りで給食を食べている。

これまでの記録はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症1か月と19日目:リハビリ病院1か月目㉙
 
発症1か月と21日目:リハビリ病院2か月目①>


お昼ごはん#9

今日もランチはミキサー食。
たまにはお肉が食べたいな。

おかゆアート:おにくたべたい

梅ペーストで書いた文字、やや失敗。
願いは届かず。
今日の献立はこちら。

  • 卵煮込みうどん

  • 白菜とはんぺんの煮びたし

  • おかゆ

卵煮込みうどん、先週はじめて食べたミキサー食が「卵とじ煮込みうどん」でその時は具をミキサーにかけたものとのことだったので、今日も恐らく具の部分。
白いのがはんぺんかな?
いただきます。
はんぺんと思わしき大皿の白い一角。
確かにうっすら魚風味、はんぺんの味がする。
これは食べやすい。喉どおりもいい。
小皿の茶色いのが白菜の煮びたし
これは定番副菜。食べやすい。
煮込みうどんの緑は多分ほうれん草。
そしてこのうすいピンクの部分、わからない。
久しぶりに謎食材。もしかしたら卵と何かが混ざったものかな。
あとで管理栄養士の竹中さん(仮)に聞いてみよう。
おかゆはひたすら咀嚼。
今日も1時間20分で完食。
ごちそうさまでした。

居残り給食で褒められる世界

この病院の昼食時間は12~13時。
今、私はデイルームと言われる大広間で他の患者さんと一緒にご飯を食べている。
皆さん12時30分を過ぎるとだいたい食べ終わり、自力で歩ける方は食べ終わり次第病室に戻る。
車いすや歩行器等で見守りが必要な方は、看護師さんが順番に病室に連れて帰る。
12時50分頃にはほとんどの患者さんが帰り、デイルームには13時からリハビリをする作業療法士さん達が準備にやってくる。
他の患者さんがいなくなっても、私は壁際の席で一人でひたすらもぐもぐやっている。

脳梗塞の後遺症で左ののどに麻痺がある。
左に向くことで左ののどをつぶして右ののどに飲食物を通している。
少量を口に入れよくよく咀嚼して、口の中で食べ物をできるだけサラサラにして、首を左に向け少しうつむいて注意深く嚥下する。
一回では飲み込めないので何度かゴクリゴクリ。
その後少量のお茶を同じように首を左に向けゴクリ。
そうするとやっとのどがすっきりして次のものを食べれる。
一口にとても時間がかかる。
気を抜くとうまくのどを通らずむせる。

今いちばんしんどいリハビリが、食事。
でも嚥下訓練中の私にとって、これが一番重要なリハビリ。
そして口から少しでもカロリーを摂れるようになりたい。
全く食べることができなかった41日間を思うとミキサー食もおいしい。
口から食べることは楽しい。
目の前の食事、残してなるものか。

13時。デイルームで他の患者さんのリハビリが始まっても、私は壁際でもぐもぐ。
これ…なんか懐かしい。
小学校の頃給食が食べきれずに、昼休みになってもまだ食べてたな。
まさかまた同じ境遇になるとは。

そして13時20分頃、なんとか食べきり両手で小さくガッツポーズ。
席を立って病室に帰ろうとすると、他の患者さんとリハビリをしている作業療法士さんが「お!食べきりましたね!」とほめてくれた。
デイルーム見守りの看護師さんにも食べ終わったことを伝えると「頑張りましたね」とほめてもらえる。
ごはんを食べただけでこんなにほめてもらえるなんて、幼児期以来じゃなかろうか。
でも食べてる最中は孤独な戦いなので、この喜びを知ってもらえただけでも心強い。

こうして私はデイルームでいつも居残り給食をしている患者になった。

右肩が叫んでる

飲みこむ時、毎度首を左に向けないといけない。
そうすると何が起こるか。
右の首筋から肩にかけて、パンパンに張ってしまっている。
私の右肩は完全に悲鳴を上げている。
食事中に何度か首のストレッチを入れているが追いついていない。
痛みが強くなると頭痛につながる。

言語聴覚士の下浦さん(仮)に相談して、リハビリ医の四谷先生(仮)にも右肩の痛みを訴えたところ、作業療法のリハビリの時間に首周りをほぐすケアを入れてもらえることになった。
ありがたい。
湿布も処方してもらい、毎晩右肩に貼って寝ることになった。

今私の嚥下は、多くの作業療法士さんの手技とシップにより支えられている。

ーー振り返って

この日の食事の謎のピンクが何だったのか、管理栄養士の竹中さん(仮)に聞き忘れていました。
もう数年たっていますが、今回久しぶりに写真を見て食べた当時のもやもやを思い出してもやもや。
何だったんだろう…。

居残り給食はしんどかったのですが、ここは踏ん張りどころと思っていました。
食べ終わってほめてもらえたのは新鮮でした。

右肩爆発寸前のところを、作業療法士さんたちの力をお借りして、なんとか防衛している感じでした。


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